ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月15日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。政府が酒類提供を続ける飲食店との取引停止要請を撤回した問題について解説した。
政府、飲食店との取引停止要請撤回~協力金4週間分先渡しの方針
政府は緊急事態宣言下で酒を販売する事業者に対し、自粛要請を守っていない飲食店との取引を行わないよう要請していたが、これを7月14日、撤回した。そのうえで協力金を4週間分、28日分を上限に先行支給する方針だ。
飯田)14日の自民党経済成長戦略本部の会合のなかで、下村博文本部長が説明したということです。取引の銀行から圧力をかけることや、酒の卸業を中心にして圧力をかける。あるいは広告の話なども出て来ています。
鈴木)ここ何日か菅さんも含めて、担当の閣僚がカメラの前で謝罪をしていますよね。「申し訳なかった」と。「混乱させて本当に迷惑をかけた」「お酒に関する業者に対して申し訳ない」、それから「国民にも申し訳ない」と言っていますが、私はそういう謝り方ではないような気がするのです。
なぜこのようなことが起きたのか~組織的な風通しの問題
鈴木)今回の問題は、「なぜこのようなことが起きたのか」という組織的な風通しの問題なのです。菅さんの意志や都合がきちんと共有されているのか。逆に菅さんに対して、「違うのではないですか、総理」と言うような側近がいるのか……この辺りの風通しが政策決定の過程でうまく流れていないように思うのです。詰まっているというか。
飯田)風通しがよくない。
鈴木)今回も何が詰まっていて、何が止まっていたのか。もしくは誰が連絡をしていなかったのか。意思の疎通がどうなっていたのか。こういうことが起きると、他のことでも起きるわけです。だから、「今回はどこが詰まっていて、どうだったか」ということをはっきりさせて欲しい。謝るよりも、まずそれをはっきりさせるべきです。
「騒がせてすみません」ではなく、やるべき政策は何か
鈴木)2つ目は、こういうことの決定を出して、要請をした。それを「騒がせてすみません」と要請したことをただ謝るのではなく、「お酒をめぐる業界に何をすべきか」、「やるべき政策は何か」ということを議論して欲しいです。パイプはどこが詰まっていたか。これを繰り返さないようにする。そして、いまやるべき政策は何なのかということを議論するべきなのです。
いまさらの「協力金を4週間分先渡し」
鈴木)そういうなかで、協力金を4週間分先渡しするということが出て来ましたが、こんなことはいつから言われていましたか。飲食店の固定費が大変なのだと。それから、お酒の卸業者もそうだけれど、飲食業にまつわる関連業者にも広がって影響を受けている。飲食店だけではない。そこに対する支援はどうなのだと。「一律いくら」ではないでしょう。コロナになる前の売り上げと比較しなければいけない。最近よく、「去年(2020年)に比べて今年は」というデータが出ていますが、去年はすでにコロナ禍だから、低いところで比較しても仕方がない。コロナ禍になる前の売り上げと比べるべきです。
飯田)2019年度との売り上げを比較しなければいけないですよね。
鈴木)それと比べて減っている。その分の、例えば「80%は何とかしましょう」ということだと思います。協力金の先渡しというのが、いまごろやる政策なのかなと思うわけです。今度のことで騒がせてすみません、撤回しますではなくて、何をやるかということです。
飯田)政策としては正しかったけれども、世の中が騒ぎ出したから、私たちはいったん撤回しますよ、というような。
鈴木)そのように聞こえませんか。
飯田)負け惜しみのように聞こえるという。
今回の緊急事態宣言は何のために出したのか~デルタ株対策のためではないのか
鈴木)毎回、緊急事態宣言というのは、意味が違うと思います。今回の緊急事態宣言は何のために出すのか。それは、毎回違っていていいのです。「何のために出すのか」ということを明確にすること。そのために何かお願いをしたり、「セットでこういう政策を補償も含めてやります」と。でも、今回の緊急事態宣言は、「何のために出されたのか、よくわからない」と言う人が多いと思います。
飯田)何のための緊急事態宣言なのか。
鈴木)私が取材していて思うのは、デルタ株です。デルタ株が怖いのではなく、デルタ株がよくわからない。だから警戒しなければいけない。そのために人の流れを止めなければいけない。本当は、デルタ株はそんなに怖いものではないのかも知れないけれども、よくわからないから、人の流れを止めなければいけないのです。お酒は直接関係ないかも知れないけれども、そういうことを考えれば、止めなければいけない。「その代わりに、2年前の売り上げの80%は補償します」と。そういうきっちりしたものがないでしょう。
飯田)ありませんね。
鈴木)そういうものがあって、初めて国民は協力できるのではないでしょうか。
菅総理と事務方との意思の疎通はできているのか
飯田)一方で資金繰りから締め付けるとか、仕入れから締め付けるとか、広告も出させないなど、すべて北風政策のようになってしまっている。でも、選挙を前にしたら、こんなことをやれば負けてしまいます。政治家が政治センスで判断できなかったものでしょうか。本当に総理にやることを説明していたのか。西村さんは「説明した」とおっしゃっていましたけれども。
鈴木)大きなテーマとして取り上げて議論をしてはいないと思います。
飯田)麻生さんも「こんなものよくわからないから放っておけ」と出張先から言っていたとか、梶山経産大臣も「これはもう1回検討しなければダメだ」と返したと聞くと、政治決断のようなものが果たしてあったのかなと思ってしまいます。
鈴木)私はないと思います。唯一あるとすれば、菅さんが厳しく「とにかく酒なのだ、今回は。酒をしっかり止めろ」というようなことをあの調子で言った。それを聞いて、事務方が「では」ということで、意思の疎通が図られないまま進めた、というところではないでしょうか。麻生さんの例の「放っておけ」に関しては、ある官僚が、「放っておけと言うのは、“そのまま通していい”と私たちは受け取りましたよ」と言っていました。
飯田)なるほど。そういう受け止め方もできるのですね。
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