ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月14日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。安倍前総理が7月10日に新潟県三条市で行った講演の内容について解説した。
安倍前総理~新型コロナ対策で大規模経済対策の必要性を指摘
安倍前総理は7月10日、新潟県三条市で講演し、新型コロナウイルスによる経済への影響が長期化していることで飲食業を中心に厳しい状況が続いているとして、雇用を守るためにも大規模な経済対策が必要だと指摘した。
飯田)大規模な経済対策が必要だということですが。
政府・日銀の連合軍
高橋)「政府・日銀の連合軍」の話は、小泉政権の官房長官時代から言っていたことです。
飯田)そのくらい前からですか。
高橋)「政府・日銀の連合軍」というのは安倍さんの表現ですが、「財政政策・金融政策一体発動」ということを私が本に書いていました。そこに安倍さんが関心を持たれたのです。それで第1次安倍政権のときに私が内閣府参事官として入ったわけです。
飯田)第1次政権のとき。
高橋)東日本大震災のときは野党だったのですが、あのときに復興増税をしました。そこで安倍さんが「この増税は高橋さんから見て正しいの?」と聞かれたので、「いや、間違いです」と言いました。安倍さんはそういうところを、理論的に勉強したのですよ。
飯田)あのデフレ脱却のときに。
2020年のコロナ対策の1・2次補正予算~政府・日銀の連合軍
高橋)デフレ脱却のときにはもう理解していて、そのあと総理になったでしょう。総理になったら、いちばん最初にそこからスタートしたわけです。そのあとはあまりやりませんでしたが、最近では去年(2020年)、1次、2次補正予算があったでしょう。そのときにまた連絡があって、コロナ対策について聞かれたので、「これは国債を出して日銀が買うというやつです」と言ったのです。そうしたら安倍さんが、「それは、政府・日銀の連合軍ということですね」と言うので、「まったくそうです」と言いました。そのときから言っていることです。
飯田)例の10兆円の予備費のあの補正。その前ですか。
高橋)そう、前も同じやり方をしました。「麻生さんを説得しなくてはいけない」と言っていてね。最後に5月くらいだったか、麻生大臣と黒田総裁2人のツーショット会見となった。そういう経緯があったのです。安倍さんはそのときに「政府と日銀の連合軍」という話をしているはずです。そこをマスコミはほとんど取り上げていませんでしたが。
飯田)あの当時は。
2つの副作用を抑えるための財政出動100兆円
高橋)「予算が大きい」という否定ばかりしてね。私も批判を受けました。安倍さんの講演では、「事業費が200兆円で財政出動の真水のところは100兆円」と、きちんと説明しています。安倍さんは理解していますし、連結ベースの話もしています。「連結の決算で考えたら、国債はないのですよね」ということも言っています。すごく専門的な話をわかりやすく言っていますよ。「2つありまして」と副作用のことも言っています。これはすごくインフレになってしまうか、円が暴落するかのどちらかなのですが、「皆さんどうですか? どちらも起きていませんね」と言っているわけです。副作用の話があって、それを抑えるレベルの財政出動という数字を言っている。100兆円というのはそういうことなのです。
飯田)だから副作用が起こらないように、手前で止めるというのがインフレターゲット本来の目的。
主流の経済学者の「インフレになる」という予想は外れた
高橋)予測してやるのですけれどね。コロナの場合はいろいろな予測があったのです。「これでインフレになってしまうのではないか」という予測がありました。そこで私は「逆です」と。「どちらかといえばデフレです」と言ったのです。
飯田)一時期ありましたね。
高橋)ありましたね。ただ、この読みは外れています。主流の経済学者はみんな外れました。「インフレにはなっていないでしょう」というのが、私の意見です。
飯田)あの当時はどちらかと言うと、「供給が吹っ飛んでしまう」という可能性があると言って、「だからインフレが起こるのだ」という話でした。
高橋)両方あるのは間違いないのだけれども、数量的にどちらが大きいか計算するだけなのです。そういう計算ができない人が多いのですよ。
コロナは戦争と違って供給の生産が棄損されるものではない~インフレにはならない
飯田)日本においては、消費の吹っ飛びの方が大きかった。それはひっくり返すと、日本は国内需要でGDPができているということですよね。
高橋)それと関係はあります。それが「どうしてインフレにならないのだ」ということの裏腹にもなるのだけれど。日本は生産能力があるから、需要よりそちらが大きくなる可能性がある。
飯田)高橋さんは前にも指摘されていましたが、「コロナは戦争と違って、供給の生産部分が棄損されるものではないから」と。
高橋)一部サプライチェーンで棄損する部分はあるのだけれど、それより需要の方が大きいという、比較の問題です。比較は実体経済に応じてやるので、国によって少し違うのだけれど、それで予測するだけなのです。でも日本は結果的にはインフレにならず、こういうことをしても実は大丈夫なのですよ。みんなすぐ「ハイパーインフレ」と言うでしょう。「ならないのだ」と言っているのです。東日本大震災のときと同じように、主流派の経済学者の人は間違えたのです。
飯田)あのときも、むしろ深刻なデフレに陥った、ということですよね。
高橋)そうです。だから東日本大震災のときに、今回のような対策をしていれば、復興増税もいらずに、もう少し早く回復できたのですけれどね。
安倍前総理「孫の代までツケを回すというのは間違いです」
飯田)今回もその轍を踏まないようにやらないといけないのですが、一方ではコロナ禍であり、ない袖は振れないので、「これはもう増税だ」という話も出ています。
高橋)この講演では「孫の代までツケを回すというのは間違いです」と、安倍前総理はハッキリと言っています。
飯田)「孫の代までツケを回す」と言うけれど、その孫の代が生まれるかどうかは、いまの経済状態にかかっているわけですからね。
高橋)それ以前にも、「政府・日銀の連合軍だから財政負担はないです」と話しています。
緊急事態宣言でGDPは1兆円以上が飛ぶ~補正予算を組まなければ経済が持たない
飯田)政局に絡めてこのニュースを報じるところも多くありましたが、補正予算についてはどうですか?
高橋)組まざるを得ないですよ。予備費も足りなくなって来るし、年後半には息切れして来ますから。秋の補正予算は毎年やっていますが、それを大型にしないと経済が持たないと思います。特に緊急事態宣言が出てしまっていますから。あんなことをしたら、もっと出さないといけなくなります。緊急事態宣言でGDPは1兆円以上飛びますからね。
飯田)そういう試算が出ていますよね。
高橋)1日250億円くらいかな。約40日だから、1兆円になってしまうのです。そのくらいは出てしまいます。逆に言うと、補正予算は大きいものになるので、「返してくれるのでしょうね」と思いますけれどね。
飯田)あとはそれを選挙前にやるのか。
高橋)選挙前にやらないと、意味がないでしょう。9月でパラリンピックも終わるのだから、そのあとに補正を組むしかないではないですか。
飯田)おのずと日程も固まって来ると。
高橋)それはそうでしょう。補正を組まないとどうしようもありません。
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