景気の“数字“と真逆に反応するアメリカの相場

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月26日放送)にエコノミストで複眼経済塾塾頭のエミン・ユルマズが出演。米FRBが金融政策を決める連邦公開市場委員会を開催するというニュースについて解説した。

景気の“数字“と真逆に反応するアメリカの相場

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

アメリカFRB~27日から金融政策を決める会合を開催

アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は7月27日~28日の2日間、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。金融政策は事実上のゼロ金利政策と量的緩和策を維持する見通しである。

強い数字が出るとネガティブに反応し、弱い数字が出るとポジティブに反応するアメリカの相場

飯田)アメリカは景気が回復して来ているということが報じられていますが、どうでしょうか?

ユルマズ)回復しているものがある一方で、小売売上高が強く、逆に雇用統計は悪くなり、通常より弱くなっています。つまり相場がどのように反応しているのかと言うと、強い数字が出るとネガティブに反応して、弱い数字が出るとポジティブに反応するのです。

飯田)弱い数字が出るとポジティブに。

ユルマズ)強い数字が出ると、「景気が回復したからFRBが緩和を続けない」という見方が強くなるし、弱い数字が出ると「今度は緩和継続だ」という、真逆のことが起きていて、相場としては、完全に緩和に依存した状態になっているのです。

GAFAなどの大企業の決算が今週に集中~デット・シーリングの問題も

ユルマズ)今週はFOMCだけではありません。アメリカはGAFAなどの大きい企業の決算があるのです。26日にはテスラの決算があるし、27日にはアップルとマイクロソフトとアルファベットとAMDの決算がある。28日にはボーイングとマクドナルドとフェイスブックとフォードの決算があるし、29日はアマゾンの決算があります。アメリカはいま債務上限、デット・シーリングの問題もあって、それも今週中にやらなければいけない。今週は相場にとっていろいろなイベントが盛りだくさんなのです。

米国債のランクが下がる可能性も

飯田)債務上限は、「これ以上になると、国債を発行して政府からお金を出しづらくなる」という、「財政の崖」などと言われますよね。

ユルマズ)そうですね。可能性は低いのですが、アメリカ国債がデフォルトするというような事態にも発展しかねません。

飯田)かつてオバマ政権のときにも、政府閉鎖などがありましたよね。

ユルマズ)ありましたね。他には、アメリカ国債のランクが下がるという可能性もあるので、今週はいろいろなイベントが盛りだくさんなのです。

飯田)なるほど。そのニュースが出て来れば、それに相場がまた反応するという。

半分以上の指数のなかの銘柄が2月から調整して、下げトレンドに入っている~「FATMANG」のおかげで指数が下がらない

ユルマズ)そうです。特にいまのアメリカ株は、いわゆるビッグ・テック、GAFAで持っているのです。他の株は2月以降下がっているのです。

飯田)そうなのですね。ダウ平均などを見ると、「史上最高値圏」というようなことをずっとやっていますが。

ユルマズ)指数は上がっているのですが、S&P500もナスダックも、指数は最高値を更新しているのに、実は50日移動平均線を越えている株の割合は半分以下なのです。

飯田)そうなのですか。

ユルマズ)つまり、半分以上の指数のなかの銘柄が2月から調整して、下げトレンドに入っているのです。なぜ指数が下がらないのかと言うと、まさにGAFAなのです。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン。そして、いまは「FATMANG」と言っているのですが、フェイスブック、アップル、テスラ、マイクロソフト、アマゾン、ネットフリックス、グーグルです。「FATMANG」、でぶっちょおじさん。

飯田)確かに聞いたことのある会社ばかりですね。

景気の“数字“と真逆に反応するアメリカの相場

就任式で宣誓後、手を振るバイデン米新大統領=2021年1月20日、ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

時期的には何らかのテーパリングを示唆しなければならない

ユルマズ)これで持っているようなものなのです。それもFRB頼み。結局、日本は今年(2021年)の高値から、日経平均株価は10%以上調整したのです。

飯田)そうですね。

ユルマズ)その最大の理由は、日銀が買わなくなったからだと思います。

飯田)なるほど。

ユルマズ)日銀が上値を買わないと、値嵩株が下がるのです。日本も乖離があって、相場を引っ張っていたのはソフトバンクやファーストリテイリング、ファナックなどの値嵩株があったのですが、日銀が買わなくなると、値嵩株はぐっと下がるのです。FRBが何らかのテーパリング、つまり購入する資産の規模を縮小することを示唆すれば、あるいはいますぐではなくてもスケジュールを見せるようなことがあれば、これは売りにつながるかも知れません。そのようにドラスティックに引き締めをやるとは思えないのですが、時期的には、何らかのテーパリングを示唆しなければいけないのです。インフレの数字が強く出て来ているので。

「インフレ率5%」がどのくらい続くのか~永遠に緩和はできない

飯田)月次だとインフレ率が5%など、そのぐらい出て来ていますよね。

ユルマズ)そうなのです。これはFRBが一時的だと言っています。一時的なのかも知れませんが、世の中すべてが一時的です。私たちの存在もこの宇宙も一時的です。「その一時的がどのくらい続くのか」ということがポイントなのです。1年続くのか半年続くのか、3ヵ月続くのか1ヵ月続くのか。最初はすぐ終わるというようなことを言っていたのですが、最近になって、「もしかしたら長く続くかも知れない」と言い出しています。パウエルさんの任期もすぐに終わるので。

飯田)再選があるかどうかという。

ユルマズ)そうなのです。相場のクラッシュを起こしたくない気持ちはわかるのですが、永遠に緩和はできません。日本もある意味テーパリングですよ。日銀が買わなくなっているということは、引き締めなのです。日本に限らず、いろいろなところがやっています。特に新興国はインフレを懸念して、メキシコもチェコもロシアもブラジルもトルコもオーストラリアも利上げしました。世界的には、引き締めに向かっているような気がします。

これ以上緩和はできないが、引き締めに舵を切ることもできないFRB~今週が1つの山場に

飯田)かつてはステルス・テーパリングという言葉もあったりして、隠れて実は引き締めをやっているというような。これが徐々に表に出て来ると、表の相場にも影響が出るのでしょうか?

ユルマズ)そうですね。いまはリバースレポをやっているのです。リバースレポというのは、銀行が持っている資金を短期的にFRBに預けて、FRBから担保の国債を貰おうということをやっています。つまり銀行システムそのものにキャッシュが有り余っていて、置くところがなくてどうしようもなくなっています。それはステルス・テーパリングではないのですが、緩和でもないのです。

飯田)短期的にせよ資金を吸い上げるという意味では。

ユルマズ)ですので、FRBはにっちもさっちもいかなくなっているような気はします。これ以上緩和はできませんし、かと言ってここで引き締めに舵を切れば、ここまで緩和に依存した相場なので、「悪いマクロ指標が出ると株が上がる」というあり得ないことが起きているのです。どこで彼らが見切りをつけるのかはわかりませんが、今回は注目ですね。決算もあるので。

飯田)今週は少し山になるかも知れない。

ユルマズ)そうですね。1つの山になる可能性があります。

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