ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月26日放送)に政策研究大学院大学教授で政治学者の竹中治堅が出演。デジタル庁の事務方トップに当たる「デジタル監」に一橋大学名誉教授の石倉洋子氏が起用されることについて解説した。
デジタル監に一橋大学名誉教授の石倉洋子氏
9月1日に発足するデジタル庁の事務方トップに当たる「デジタル監」に、一橋大学名誉教授の石倉洋子氏を起用することが8月25日にわかった。石倉氏は経営戦略などが専門で、日清食品ホールディングスなど複数の民間企業で社外取締役の経験があり、現在は資生堂などの社外取締役を務めている。
飯田)菅総理の肝煎りの政策の1つでもあるデジタル庁。そのトップは紆余曲折ありましたが、この方で落ち着くということになりますね。
竹中)9月1日設置ですから、これで行くしかないということですよね。人事は最初に候補に上がった方に少し問題があるということで、大変だったのではないかと思います。石倉さんは、他の専門的な方の話を聞いて、それをまとめる能力が高い方なので、彼女自身がデジタルの専門家というわけではありませんが、頑張っていただきたいと思います。
「おかしいな」と思うときに、「おかしい」ということを指摘し、役所と闘えることが大事
飯田)組織を束ねるということを考えると、ITの専門家のような人でなくても、それとは別のスキルが求められる部分があるということですか?
竹中)大事なのは、「おかしいな」と思うときに、「おかしい」ということを指摘して、それを首相に言うなり、世の中に発信して役所と闘うということです。専門的な知識があるのに越したことはないと思いますが、そのようなことをやれるかどうかが、改革をする上では大事なのです。
民間でのPCR検査~陽性者の報告義務しかなく、何人が受けたかを行政府が把握していない
竹中)コロナ禍でも散々言われていることですが、定額給付金をなぜ紙で申し込まなくてはいけないのか。いまの最大の問題は、日々何千人もの感染者数を把握しているわけですが、「実際に何人の人が検査を受けているのか」を行政府が把握していないことです。保健所が行っている検査を行政検査と言うのですが、それ以外に、街なかでもPCRセンターやクリニックという形で、民間でもいろいろとやっていますよね。
飯田)ありますよね。
竹中)そこでは、「陽性者が何人だったのか」ということは報告しなければいけないのですが、「何人が受けたか」については報告されていないのです。厚生労働省が報告させればよかったのですが、システムを国がきちんとつくって、PCRの民間検査をやる条件として、データを国に登録してくださいという形にする必要があるのだけれど、しなかった。東京都の陽性率はいま20%など、非常に高い数字になっていますが、実際にどれだけの人が検査しているのかを把握していないので、本当にこの陽性率なのかはわからないという問題があるのです。これはデジタルと関係しているところなので、このようなことを何とかしていただけるようにして欲しいと思います。
飯田)その場で言っておいて、データ提出の方法だけ揃えておけば、あとは集まって来るわけですよね。
竹中)いまはそれを吸い上げる方法がないのです。面倒くさかったからやらなかったのではないかと、私は疑っているのですが。ただ入力すれば、すぐにリアルタイムで把握できるようになるわけですよ。
飯田)実際に海外では、PCRセンターを利用すると、基本的に紙でのやりとりは一切なく、Webで予約から何までやって決済はクレジットカードで、というように、すべてデータの世界で完結しています。
「デジタル敗戦」から脱却しなければならない
竹中)それ以外にも、飲食店に協力金の支払いが遅れているという問題があります。これもデジタル処理すればもう少し早くすることができると思います。今回、コロナ禍で「デジタル敗戦」ということが出ていますが、これを工夫することは必要です。
飯田)各省庁に助言などを行うことができるという建て付けになっていると記憶していますが、あとは「本当にそれで省庁が動くことができるか」ということにかかって来ますか?
竹中)究極的には、デジタル庁で基本的なシステムやサービスぐらいは、自前でつくれる程度のところまで行って欲しいですね。そうすると、500人では足りないという話があって、もう少し増やさなければいけないだろうということです。日本という国の効率性に関わって来ますので、期待しています。
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