老舗駅弁屋さんが「大井川鐵道」のオリジナル駅弁を守る理由
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「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
静岡駅弁として130年以上の歴史を誇る「株式会社東海軒」。県庁所在地の静岡市を拠点とする東海軒には、もう1つ、同じ静岡県の島田市に金谷工場があります。ここでは、SL復活運転のパイオニア・大井川鐵道の主要駅で販売される駅弁を製造しています。今回は、「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第29弾・東海軒編のスピンオフ企画、大井川鐵道のオリジナル駅弁に注目してまいります。
令和のいまも全国各地で愛されるSL。45年前の昭和51(1976)年、全国に先駆けて、蒸気機関車の動態保存を始めたのが、静岡県の大井川沿いを走る「大井川鐵道」です。現在も4両の蒸気機関車が現役で、コロナ禍でも、大井川本線の新金谷~千頭間で運行されるSL急行「かわね路」号をはじめ、積極的な保存活動を行っています。近年では「きかんしゃトーマス号」の運行でも有名ですね。
大井川鐵道のSLの旅で欠かせないのが、列車が発着する新金谷駅(プラザロコ)や千頭駅などで販売されているオリジナルの駅弁です。もともと、大鉄フードが製造していましたが、いまでは、静岡駅弁でおなじみの「東海軒」金谷事業部となっています。
東海軒によると、「大鉄フードには、大井川流域の皆さんや観光のお客様に親しまれている弁当がたくさんあった。この大井川鐵道の駅弁文化をなくしてはいけないと思い、買収の話をお受けした」と言います。
SLの車窓から、大井川を眺めながらいただきたい駅弁と言えば、「大井川ふるさと弁当」(1150円)。C11形蒸気機関車190号機が描かれた掛け紙を外すと、茶畑に沿ってC11形227号機が旧客を牽引して走る列車の写真が使われたポストカードが入っています。また折箱の紙蓋には、静岡の方言が載っていて旅情を誘いますね。さすがに「そうずら」は高齢の方が多いと思いますが、私の世代でも「~だら」という方言はよく使ったものです。
【おしながき】
・おむすび(梅干し、菜飯、海苔)
・いわなの甘露煮
・鶏肉のから揚げ
・出汁巻き玉子
・里芋の味噌焼き串
・煮物(椎茸、筍、ごぼう)
・海老の佃煮
・うぐいす豆
・オレンジ
梅干しと菜っ葉のおむすびが2つに、メインがいわなの甘露煮と、旧形客車によく似合う渋い組み合わせです。いまや全国的には希少ないわな駅弁。いわなは甘く煮付けられて頭からガブリと行くことができます。里芋の味噌焼きも、大井川鐵道の長閑な風景によくマッチして懐かしさ倍増。海老の佃煮を含め、東海地方らしく甘めのおかず多めですが、〆にオレンジを味わえば口のなかサッパリ、心地よい完食となります。
黒く光る車体から、煙や蒸気が吐き出されながら、汽笛の音とともに駆け抜けて行く汽車。ヘッドマークのない蒸気機関車が古めかしい客車を引いて、ただ走って行く風景は、昭和のころは全国各地の日常だったのかも知れません。そんな何気ないローカル線の風景を守って下さっている鉄道会社と地元の皆さんにただただ感謝。これから程なく迎える、奥大井の紅葉シーズン、懐かしいSLと駅弁と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/