自民党総裁選 いよいよ投開票 候補者4人の政策をチェック

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月20日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。自民党総裁選の各候補の政策について解説した。

インターネット動画中継サイト「ニコニコ動画」主催の自民党総裁選候補者による討論会を終え、ポーズをとる(左から)河野行革相、岸田前政調会長、高市前総務相、野田幹事長代行=2021年9月18日午後、東京・銀座 写真提供:共同通信社

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岸田氏の政策は霞が関の守旧派官僚が練り上げている

自民党総裁選が本日9月29日、投開票となる。立候補したのは河野太郎規制改革担当大臣、岸田文雄前政務調査会長、高市早苗前総務大臣、野田聖子幹事長代行の4人。各候補は様々なメディアで自身の政策を訴えてきた。

飯田)テレビ番組に4人揃って出演、というようなことが相次いでいましたし、いろいろなところで記者会見のようなことも行われています。

須田)個別の政策を見ていくと、木を見て森を見ずという状況になるので全体から見ていくと、非常にその違いというのは鮮明なのです。どのようなことかというと、岸田陣営には、霞が関の守旧派の官僚が続々と集結していまして、政策面に関してはそのような官僚の方々がほとんど練り上げてつくっているということが実態です。そのような視点で岸田候補の個別の政策を見ていくべきだろうなと思います。そのような意味で言うと、財政出動があるとか、減税、勿論それぞれの候補は減税とは言っていませんが、そのような財務省が嫌がるような政策、あるいはどちらかというと経産省が喜ぶような政策というのがてんこ盛りになっている状況なのだろうなと思います。

河野氏は改革路線一本調子 高市氏は財務省に対して非常に批判的なスタンス

これに対して河野候補は、改革路線というのを一本調子で言っている。高市候補は財務省に対して非常に批判的なスタンスをとっています。特にプライマリーバランスの黒字化凍結というのは、やはりここを言われると財務省としては反発をするのだろうなと、いちばん触れられたくないところを触れてきたのだと思います。そうは言っても、プライマリーバランスを黒字化することよりも、コロナショックで大きく落ち込んだ景気回復、経済回復をさせることが最優先でしょう、と。それが回復してこないことには日本の財政自体保たないのだからと、普通そう考えるべきなのですが、この段に及んでも財務省というのは……

飯田)いままで通りのロジックを。

須田)そうなのです。財政再建路線。なので、岸田さんはなんだかんだ言っても、財政再建路線ですよ。そのひとつの試金石になってくるのが、定額給付金や一律給付金などに対して財務省は非常に否定的なのです。彼らがよく使うロジックとしては、経済波及効果、乗数効果が見込めないと言うことで、減税や一律給付金に対しては全面否定なのです。

飯田)安倍政権下で1回やったときも、結局あれはほとんど貯金に回ってしまって、使わなかったではないですか、無駄だったのですよ、というようなロジックで来ますからね。

須田)そのような点でいうと、そのような路線にしっかりと乗っているのが岸田さんではないかと思います。

飯田)なるほど。高市さんもプライマリーバランスの黒字化目標を一時的に凍結するのだと。物価上昇2%まで行ったらそこからはまた考えなければいけない、というような話もしていて、完全に野放図に何か目標をかなぐり捨てるというような話でもないのですよね。

須田)そうですね。では、凍結して何があるのかというと、財政出動をどんどんとやっていきますよと。財政支出を拡大していくというところです。ここが嫌なのです、黒字を凍結するということは、赤字を容認するということです。では、なぜ赤字を容認するのか。財政出動をどんどんとやりますよ、そして赤字国債をどんどんと出しますよ、というところが財務省が嫌がるところなのだろうなと思います。

画像を見る(全4枚) 自民党玄関に掲げられた候補者の写真 勝敗は29日に決まる 自民党総裁選は9月29日の投開票日

自民党玄関に掲げられた候補者の写真 勝敗は29日に決まる自民党総裁選は9月29日の投開票日

岸田氏のウィークポイントは「カーボンニュートラル」への消極性

飯田)安全保障面なども含めていろいろなことが言われていますが、注目のポイントというとどのようなところがありますか?

須田)もうひとつは、意外にまだきちんと論戦が行われていないのですが、エネルギー政策についてです。エネルギー政策といっても、原発や再生可能エネルギーをどうするのかということではなく、2050年のカーボンニュートラルをどのように捕まえるのかというところです。岸田さんが意外と再生可能エネルギー云々を言っているのですが、カーボンニュートラルの実現は私も共有をする、と。これは何か消極的で弱いのです。実はこれには背景があって、私はもっとこれを突いていくべきだと思うのですが、岸田陣営にはかつて安倍さんの右腕と呼ばれた今井元補佐官兼秘書がついている、経産省のエネルギー畑の方です。今井さんは新日鉄の会長、経団連の会長をやられていましたが、岸田さんは経団連の会長といち早く会っていますよね。経団連はカーボンニュートラルに大反対なのです。なので、そこのブレーキをかけようとしている。ただそこをかけると国際社会からの反発が出てくるので、そこはなかなか言質は与えないようにして、スーッと総裁選を乗り切ろうとしているのです。そこをどうするのですか、ということをしっかりと聞いていくべきだと私は思います。

飯田)なるほど。だから共有するというような表現になってくる。

須田)共有はするけれどできませんという。

飯田)確かに、賛成とも反対ともほとんど言っていないわけですね。

須田)そうなのです。ここが実は岸田候補のウィークポイントなのです。

飯田)高市さんが指摘しているように、デジタル化によって消費電力の急増が予想されるというのは確かにその通りで、そこの部分で、太陽光や再生可能エネルギーをあまり多用すると周波数が合わなくなって不具合が出るのではないかというような話も言われていますよね。その辺もどのようにバランスを取るかというような話になってくるのですね。

須田)そうですね。その辺を考えていくと、一定程度の原発の稼働について、河野さんについては最終的にどこかのタイミングでゼロを目指すけれど、再生可能エネルギーの提供体制が整うまでは原発を再稼働していきましょうというスタンスです。それに対して、高市さんは原発というのは安定的で安価なエネルギーで将来に渡っても必要なのだから、それについては小型原子炉で対応していきましょう、というように明確に差が出てきているのです。

菅首相の退陣意向表明を受け、取材に応じる自民党の岸田前政調会長(左)と河野行革相=2021年9月3日、東京都内 写真提供:共同通信社

菅首相の退陣意向表明を受け、取材に応じる自民党の岸田前政調会長(左)と河野行革相=2021年9月3日、東京都内 写真提供:共同通信社

エネルギー政策と環境政策は表裏一体 ~政策面が生煮えな野田氏

飯田)野田さんは地熱発電などもしていったらいいのではないか、というような話もしていたり、いろいろな具体的な策が出てきていますね。

須田)野田さんの場合は少しまだ生煮えかなと思います。

飯田)やはり立候補ギリギリだったということもあるのでしょうか?

須田)はい。やはり再生可能エネルギーの現実性でいうと、太陽光と陸上風力なのです。でもそれはそんなに大きく依存ができるのですか、という議論をするべきなのに、地熱発電はそもそも2050年までに間に合うのですか、という話なのです。

飯田)どこを掘ればいいのかというところからけっこう調査も必要だし、お金もかかるという話もありますね。

須田)地元の理解を得られるのかということもありますからね。

飯田)大体地熱ができそうなところは温泉地のことが多い。そうすると、地元としては観光資源をどうしてくれる、ということに当然なってくるわけですね。

須田)そのような点でいうと、出馬はしてみたけれども政策面が生煮えかなと私は思います。エネルギー政策というのは、カーボンニュートラルの環境政策と表裏一体で、分けて考えることよりも、きちんと整合性を持たせて、カーボンユートラルをどの程度力を入れてやるのか、やらないのか。それに合わせてエネルギー政策はどのようになってくるのか。エネルギー政策で議論してもナンセンスなのです。

飯田)全体を一体としてやらなければいけない。

須田)そこを突かれるといちばん嫌なのが岸田さんなのだろうと思います。

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