東京都医師会会長の尾﨑治夫氏が11月11日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。高齢者に心配される「フレイル」について解説した。
コロナ禍で家に閉じこもる高齢者 ~増加する「フレイル」
飯田浩司アナウンサー)新型コロナウイルスの感染が収まっては来ました。そうすると、感染者数が増加していたときには隠れていた諸問題が心配されるようになると思います。例えばどういうことが考えられますか?
尾﨑)コロナが収束したあと、2025~2040年までに、団塊の世代の方がすべて75歳以上の後期高齢者になり、超高齢社会が到来します。そのなかで、高齢者の方がコロナの感染を恐れるあまり、人との接触を断って家に閉じこもってしまうことが多くなっています。そういう状態の方を「フレイル」と言います。心も身体もすべての意味でフレイル、虚弱な状態になっている方が増えています。
飯田)外出もせず、閉じこもっていて。
尾﨑)介護施設やデイサービスに行っていた方も行けなくなってしまいましたので、交流や会話がなくなり、認知症なども悪化します。そういう方がいま増えていて、私はそれが2025年以降の問題につながるのではないかと危惧しているところです。
健康診断での問診用紙はフレイル関連に
飯田)どのような対策があるのでしょうか?
尾﨑)区や市で健康診断を実施していますが、そのときに75歳以上の方の問診の項目には、これまでもあった「あなたはどんな病気をしていますか」ということではなく、「普段の生活で人と話していますか」とか、「ある程度身体を動かしていますか」など、フレイル関連の問診用紙に2~3年前から変わっています。
飯田)フレイル関係の問診に。
尾﨑)各自治体はその結果をデータとして持っているのですが、それをもとに「この人はフレイルだな」とわかるのです。ですから、進行を予防するためにも、診断結果を説明するドクターにフレイルだということを十分理解してもらうことが必要です。
飯田)お医者さんに。
尾﨑)それに対してどう取り組むかということを理解していらっしゃらない方もいるので、私どもは、フレイルや認知症に対応するための講習会や勉強会を開いています。
飯田)フレイル認定医のようなものをつくろうとしているということですね。
75歳からは健康に対する考え方を変えなければならない
飯田)検診の概念のようなものが、いままでであれば病気を発見するということだったのが、病気の手前からピックアップして行くというように、コンセプトから変わらなければいけないということですか?
尾﨑)そうですね。65歳までは生活習慣病予防のために、太り過ぎはいけないという話になるのですが、75歳を過ぎると、逆に痩せている人の方が死亡率が高いというデータもあるのです。
飯田)そうなのですか。
尾﨑)75歳くらいになったら、あまり痩せてはいけないのです。お肉やタンパク質をきちんと摂って、骨や筋肉を丈夫にしつつ身体を積極的に動かさないと、寝たきりになって寿命を縮めてしまう。65歳までと75歳以降では、考え方を変えて行かなければいけないのです。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます