安全保障上もう「温室」ではない日本に必要な「厚手のコート」 ~経済安全保障の強化に向けて基金を設立

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月19日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。政府が11月19日に閣議決定した新たな経済対策について解説した。

政治 マクロ経済(成長と分配)に関する意見を出席者から聞く岸田文雄首相=2021年11月18日午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社

新たな経済対策、政府が11月19日に決定へ

政府は新型コロナの影響を受けた人たちへの支援策などを盛り込んだ、新たな経済対策を11月19日に決定。国と地方の負担を含む財政支出は55.7兆円、民間などの支出を含めた事業規模は78.9兆円。経済対策には18歳以下を対象とする10万円相当の給付や、中小企業に対する最大250万円の給付、原油高対策などが盛り込まれる。また経済安全保障の強化に向けては、先端的な重要技術の研究開発や実用化支援のため、将来的に5000億円規模となる基金をつくる。

飯田)全体の規模もそうですが、経済安全保障の規模もかなり盛り込まれているようです。

宮家)昔の東西冷戦のときは「対共産圏輸出統制委員会(ココム)」というものがありました。ソ連圏に技術やものを出すときには大変な問題があって、日本も潜水艦のプロペラの技術などについて、日本企業がアメリカにやられたこともありました。

飯田)そうですよね、大手企業が。

民生でも軍事でも使える先端技術がたくさん出て来ている

宮家)それが旧西側国家の輸出管理の国際枠組み(ワッセナー・アレンジメント)に変わって行きましたが、今も基本的には同じ発想です。ただ、冷戦のころは日本も組織的にある程度やれていた部分はあるのだけれども、今は昔以上に軍事利用できるような汎用技術、デュアルユースと言われますが、先端技術のなかには民生でも軍事でも使えるようなものがたくさん出て来ていますからね。

飯田)どちらでも使えるものが。

宮家)中国を念頭に置いた対策だとは思いますが、彼らも相当な開発をしています。そして、一部の分野については独占的な力を持ち始めているような状況です。されば日本でも、本当にすべての経済活動が自由で、私権がすべて尊重されるという状態でいいのかという議論は、本来もっと前からやるべきだったのです。

ようやく経済安全保障の施策を強化する日本

宮家)国家安全保障については、いろいろな国でいろいろなやり方があるのでしょうけれども、普通の国であれば、多くの重要な法律の最後には国家安全保障条項というものがあります。国家安全保障上の所要があり、ある程度私権を制限しなければいけないものについては、一定の制限ができるようなシステムができあがっているケースが多いのです。

飯田)制限できるシステムが。

宮家)ところが日本の場合は、そういうものが非常に少ないわけです。その意味では、いろいろと穴が開いていた。しかもスパイ防止法はないし、日本はどちらかと言うと、外国からすれば軍事技術も含めて先端技術を盗み易かったと思います。以上のように状況が変わったということもあり、ようやく日本でも経済安全保障のいろいろな施策を強化するという方向がでてきたことは、大変結構なことだと思います。

経済安全保障の強化 ~基金をつくるだけでなく、それをフォローアップする体制が必要

飯田)報道ベースですけれども、基金をつくって技術開発するという話です。既存の技術で守るべきところも別途あるということですか?

宮家)報道によると、将来的に5000億円規模ということですが、最初は小さく始めるということでしょう。やらなければいけないのはわかるのだけれども、この額ではもちろん足りません。アメリカの技術研究開発、DARPAも含めていろいろな軍事関係の組織がありますけれども、あちらは桁が違います。

飯田)アメリカとは桁が違う。

宮家)同じようにやれと言うつもりはないけれども、中途半端な数字より、学会も含めて民間の意識も、「軍事は危ないし嫌だ、平和主義の国だから軍事の研究などしてはいけない」という現状をそろそろ変えて行かないといけません。ただお金を積んで基金をつくっても、フォローアップする体制がなければうまくいけません。民間の企業なり大学なり研究機関なりが、それに呼応する形で動けるようなシステムをつくらないと、絵に描いた餅になってしまいます。そうならないように、真面目にやらなければいけない問題だと思います。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

軍事は戦争を防ぐこともできる

飯田)科学技術予算で考えると、兆円規模として入っているわけだけれども、軍事危機が強くあるということです。「お金がどこまで有効に使えているのか」というところは菅政権がメスを入れようとしていましたが、その辺も日本国としてどうするのかを全体として考えなければいけない。

宮家)戦争反対はわかります。私も反対です。しかし、私は軍事に反対ではないのです。軍事というのは、それで戦争をやるかも知れないけれども、戦争を防ぐこともできるのです。要は、使い方の違いです。「戦争反対」という側面だけですべての軍事を拒否するというのは、私はいかがなものかと思います。いい機会ですから、今回はその部分までメスを入れていただけたらありがたいと思います。

昔のように温室のなかで過ごす時代ではない ~日本もそろそろ厚手のコートを着る時期

飯田)他方、日本にはスパイ防止法に関してなど、法律面での課題もあります。

宮家)一朝一夕にはできないと思うけれども、問題点はとっくの昔に指摘されていて、あとはやる気だけです。その意味では、憲法改正ももちろん大事ですが、憲法改正をやる前にできることはたくさんあると思います。

飯田)情報面で、アメリカ・イギリス・オーストラリアの枠組みとしてAUKUSがあります。日本が入れるかどうかについて、日本にはスパイ防止法がないことを指摘されているという話もあります。

宮家)情報の保護に関して、ある程度は整備されていると思うのですけれども、日本には本格的な対外諜報機関、情報機関がない。もちろん、国内的にも十分なシステムができていないので、どこから手を付けていいかわからないけれども、一気にやれたらいいなと思います。昔のように温室のなかで、外は寒いのにぬくぬくと、という時代は終わってしまったのです。隣に大きな人たちが出て来て、ビニールハウスのビニールが破れつつある。寒気が入って来るわけですから、そろそろ我々も厚着をしないといけないのではないでしょうか。

国家安全保障戦略の改定は10年先を見据えて進める

飯田)そのコートの1つかも知れない国家安全保障戦略について、この政権で改定を、ということは岸田さんも打ち出しています。

宮家)いろいろな要素があるので、「明日できます」という話ではないでしょうけれども、おそらく改定の作業はもう始まっていると思います。慎重に考えつつ、10年先を見据えるような改定になると思うので、時間をかけてやってもいいだろうと思います。

飯田)2021年に、2031年ごろを展望しながら考えて行くということですか?

宮家)そんな感じだと思います。そうでないと国家安全保障戦略にならないでしょう。今後10年、20年先を見据えた戦略をつくるということだと思います。

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