「野党連携」に“宿題”……立憲民主党代表選の現場から

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「報道部畑中デスクの独り言」(第272回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、立憲民主党の代表選について---

【政治 立憲民主党代表選】立憲民主党臨時党大会の決選投票で代表に選ばれた泉健太氏(中央)=2021年11月30日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社

画像を見る(全5枚) 【政治 立憲民主党代表選】立憲民主党臨時党大会の決選投票で代表に選ばれた泉健太氏(中央)=2021年11月30日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社

11月30日、立憲民主党の臨時党大会が東京都内のホテルで行われ、泉健太氏が新しい代表に選出されました。

今回の代表選は、国会議員に次期参議院選挙公認候補予定者、地方議員、党員・サポーターが参加するいわゆる「フルスペック」。合計572ポイントで争われましたが、1回目の投票で得たポイントは泉氏189、逢坂誠二氏148、小川淳也氏133、西村智奈美氏102……過半数に達した候補は出ず、上位2人の決選投票にもつれ込みました。

決選投票では泉氏と逢坂氏の一騎打ちになるという見方が過半で、事実その通りになりましたが、1回目の投票では小川氏が国会議員票で逢坂氏を上回り、合計で15ポイント差に肉薄。場内からは「おーっ」という「うすいざわめき」がありました。

新代表に泉健太氏を選出 候補者と枝野前代表が登壇

新代表に泉健太氏を選出 候補者と枝野前代表が登壇

決選投票では「リベラル派」とみられる逢坂氏と西村氏が連合を組み、1位にどこまで迫れるかが大方の注目でしたが、結果は逢坂氏128ポイント、泉氏205ポイント。「泉候補205!」とコールされた瞬間、場内から「よしっ」という声が挙がり、泉新代表が誕生しました。

決定の瞬間、喜びを抑えながらも、両手でガッツポーズをする泉氏の姿が見えました。逢坂氏は決選投票の議員票は56票で、1回目の投票の逢坂・西村両氏を合わせた57票を下回り、拡がりを欠いた形です。

終了後、安住淳国会対策委員長は泉氏について「次世代のリーダーとしてふさわしい。“昔の名前で出ています”ではなくて、野党第一党として存在感を発揮して欲しい」と期待を表明。一方、若手議員からは「“批判調”から“提案調”になって欲しい。怖い顔でずっと批判している人からは、いずれ心が離れてしまうのではないか」と指摘する声もありました。

奇しくも、10月の衆議院選挙では「論客」と言われる議員が何人も落選しましたが、そうした「批判路線」からの脱却も、新代表に込められた党内の思いかも知れません。

泉健太新代表が記者会見

泉健太新代表が記者会見

泉氏は投票前の演説で「党のなかの垣根をなくして行きたい」と述べ、党内融和を訴えました。まずは「挙党一致」による党勢の立て直しが急務になります。そして、やはり共産党などとの野党連携のあり方が注目されます。記者会見でもこれに関する質問が集中しました。

泉氏は共産党との連携について、「単に継続というのではなく、党として総括をせねばならない。そのなかで考えて行かなければならない」と述べた上で、これまでの合意については「前回の総選挙で交わしたもの。何かが存在しているわけではない」と、「仕切り直し」の考えを示しました。

一方、支持団体である連合との関係については、「政策などの取り組みは引き続き密にして行きたい」と述べました。連合の芳野友子会長は「立憲民主党と共産党との連携はあり得ない」と話しています。

以前の小欄では、立憲民主党の選挙の敗因は比例区の不振であり、比例区伸び悩みの原因は共産党との連携にあったとお伝えしました。しかし、小選挙区では善戦したところも多く、共産党との連携と「連合離れ」が「トレードオフ」の関係にあるのかどうか、難しいところです。泉氏の言う「総括」とは、その辺りを見極めることなのでしょう。

政策面で言えば、共産党との連携は矛盾だらけですが、純粋に「票を集める」というマーケティング的見地で言うと、どちらが有利なのか……衆議院選挙という「一次関数」だけでは見極めきれないのが、正直なところかと思います。次の参議院選挙でも同様の形で戦えば、その関連性が“解”として現れる可能性がありますが、これは一種の賭けでもあり、新代表にとっては悩みどころです。

代表選、戦い済んで……

代表選、戦い済んで……

一方で、泉氏を含めた各候補は、各選挙区をできるだけ野党で一本化するという考えでは一致しており、この辺りが政党としての「最大公約数」かと思います。その範囲で何ができるのか……ちなみに連合が推奨している国民民主党との連携について、泉氏は「基本“自然体”、離れるも近づくもない」と述べています。野党との連携の形は、新代表に課せられた“宿題”と言えます。

先の自民党総裁選挙に比べますと、ドメスティックと言いますか、政策の厚み、国家観の面では次元が違うという印象でした。一方、自民党総裁選はやはり「権力闘争」。「総裁にしたい人」という力の一方で、「あいつだけは総裁にするな」という力も働き、魑魅魍魎の世界がありました。

これに対して、立憲民主党は見方によっては「なあなあ」に見えますが、お互いを尊重しながらという配慮が4人の候補に感じられました。まずは「挙党一致」ということなのだろうと思います。逆に言えば、140人のなかで仲間割れしているようでは、政権奪還など夢のまた夢。やっとスタートラインに立ったということが言えるでしょう。

決選投票を含めて2回の投票があり、そのたびに会場は「議場閉鎖」されました。閉鎖が解かれると、議員らがぞろぞろと会場から出て行きます。行き着く先は……トイレに長蛇の列ができていました。一定の“緊張感”があったことを付け加えておきます。(了)

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