ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月3日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。12月9日~10日にアメリカが開催する「民主主義サミット」について解説した。
民主主義サミット
アメリカのバイデン大統領は、12月9日~10日の2日間の予定で民主主義国の首脳などが参加する「民主主義サミット」をオンライン形式で初めて開催する。日本やヨーロッパ各国など、およそ110の国と地域が招待されているが、アメリカが「専制主義国家」と位置付ける中国やロシアは含まれていない。民主主義サミット開催について、ロシア外務省は1日に声明を発表し、「民主主義の道しるべにはなれないし、なるべきではない」と批判している。
飯田)シンガポールなども入っていないということです。
宮家)シンガポールはちょっと違いますからね。トルコも入っていません。
飯田)トルコも入っていない。
宮家)でも、ロシアに「民主主義の道しるべにはなれない」とは言われたくないですよね。
飯田)ちょっと待てよと。
「民主主義陣営」対「そうでない陣営」の対立構図を考えているアメリカ ~それに合わせた政治ショー
宮家)中国が入らないのは仕方ないにしてもね。全部が全部そうだとは言わないけれど、アメリカ人には単純な人が多いから、彼らにとって世の中は「グッドガイズ」と「バッドガイズ」しかいないわけです。
飯田)なるほど。
宮家)グッドガイズは民主主義の110ヵ国・地域です。ちなみに110ヵ国・地域の「地域」には台湾が入っていますからね。誰がグッドで誰がバッドか、これほどわかりやすい人たちはいません。でも、世の中はそんなに単純ではないですからね。
飯田)そうですね。
宮家)ロシアが民主主義かどうかはわかりませんが、出来レースとは言え、選挙はやっています。シンガポールにも自由はありますよ。政権を批判する以外のことは。
飯田)政権を批判する以外のことは。
宮家)その意味では、なかなか線は引きにくいけれども、このように分けるのはアメリカらしいなと思います。バイデンさんの心情、それからバイデンさんの周りにいるリベラルな人たちも含めて、いまは「民主主義陣営」対「そうでない陣営」の対立構図を考えているわけです。それに合わせた政治のショーになるのだろうと思います。
飯田)政治のショー。
宮家)しかし全部集めるわけには行かないから、オンラインでやるわけでしょう。
飯田)そのようですね。
宮家)周りの国からすれば、「またやっているな」という感じでしょうね。
日本は参加して粛々とその一員であればいい ~日本の利益を守るために民主主義をうまく使うべき
飯田)対中国を考えると、ASEAN各国も重要です。そういう意味では、いろいろな集まり、枠組みを重ね合わせるということになるのですね。
宮家)濃淡がありますからね。しかし中国からすれば、痛くも痒くもないと思います。
飯田)痛くも痒くもない。
宮家)「アメリカなんて大した民主主義ではないだろう、たくさん問題があるではないか」と。「俺たちの方がきちんと国家運営をやっているではないか」、「中国のやり方の方がいいぞ」、「しかも途上国の多くは中国と同じことをやっているではないか」、「アメリカだけが民主主義などと偉そうなことを言うな」と主張するのだろうと思います。
飯田)中国が外れた国々を巻き込んで、「俺たちは俺たちでやろうぜ」ということになりませんか?
宮家)どうでしょう、それだとプロレスの悪役だけが集まっているようなものです。でも、「上海協力機構」などはそれに似ていますね。
飯田)なるほど。
宮家)世の中には変わった人たちが集まるリーグがありますね。どっちもどっちだなと思います。
飯田)どっちもどっち。
宮家)日本は当然、民主主義の国ですし、それに参加して粛々とその一員でいればいいわけです。当然こういうプロパガンダには参加するけれども、それとは別の、日本の利益を守るために民主主義をうまく使うことも大事、ということだと思います。
飯田)日本には独自の国益も当然ありますし。
宮家)人権外交も含めて、そういう民主主義がある。一昔前は民主主義について、日本がいろいろな普遍的価値を守ると言いながらも、なかなか民主主義を前面に出した外交はして来なかったわけです。ある意味では、日本の外交にも幅ができていいのではないかなと思います。ただ、それでもこの種の外交はそんなに簡単ではありません。
飯田)簡単ではない。その辺はテクニックや使いようの部分もあると。
宮家)すべてが綺麗に割り切れるわけではありませんからね。
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