自動車業界にのしかかる変革と逆風、さて来年は? (1)半導体部品不足と原材料価格の高騰

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「報道部畑中デスクの独り言」(第273回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、自動車業界にのしかかる変革と逆風について---

画像を見る(全6枚) ハイシリコンの半導体チップ(ロイター=共同)=2019年5月17日 写真提供:共同通信社

2021年もあと半月あまり、今年も新型コロナウイルスに明け暮れた1年でした。いまはやや落ち着いているものの、「オミクロン株」なる新たな変異株の出現で、いわゆる「第6波」の懸念は残ったままです。

私が取材を担当している自動車業界も、コロナだけでなく、さまざまな課題が浮き彫りになりました。先月(11月)行われた各社の決算会見などでも、その課題に対する懸念が相次ぎました。現状と今後の展望をお伝えして行きます。

「いちばん大きなリスクとして捉えているのは半導体の供給問題」(マツダ・丸本明社長)

「サプライチェーン(供給網)も混乱が続いており、不透明感が払しょくされるにはもうしばらく時間がかかりそうだ」(三菱自動車・加藤隆雄社長)

トヨタ自動車・近健太取締役(決算会見 オンライン画面から)

まずは、長引く半導体部品不足と原材料価格の値上がりです。各社は生産・販売の減少を強いられており、日産自動車は年度の世界販売を440万台から380万台に下方修正しました。その他、マツダがおよそ10万台、スバルがおよそ13万台の引き下げとなっています。今後についても各社厳しい見通しを示しています。

「なかなか確実なことは言えない。車載の半導体によっても違いがあるという情報もあり、慎重に見極める必要がある」(トヨタ・近健太取締役)

「年末まではまず厳しい。かと言って年明けに急に入って来るのか、それほど好転はしないのではないか」(三菱自動車・加藤社長)

「当面は不安定だろう。いつ解消するのか見通しにくい」(マツダ・丸本社長)

「生産について光は見えているが、突然、(供給が)キャンセルされることも起きている。そんなに甘くはない」(スズキ・鈴木俊宏社長)

半導体については、日本政府が経済対策として、工場の国内立地推進のための支援を打ち出しました。一方、儲かりそうなものがあると、フラッシュメモリーや液晶パネルのごとく中国が飛びつき、莫大な投資をして世界中に製品をばらまくのではないかという見方もあります。経済安全保障という視点でも注意深く見守る必要があります。

三菱自動車決算会見(左が加藤隆雄社長 オンライン画面から)

原材料価格の高騰も気になるところです。電池開発の関係者が指摘するのは、レアアースと言われる分野です。

EV=電気自動車の重要なパーツに、バッテリーとモーターがあります。バッテリーには正極・負極があり、このうち、正極材料は主にニッケル、コバルト、マンガンで構成されています。最近はニッケルの比率の高い材料が「ハイニッケル系」と呼ばれ、安全性に課題があるものの、高い性能が期待されています。

こうしたレアアースに関して、生産量が多いのは中国ですが、この他にも東南アジアやアフリカに豊富に眠っていると言われています。中国がアフリカの各国と交流を深めるのは、こうした背景もあるわけです。

モーターのキモである永久磁石もまたしかり。ネオジム、イットリウムといった材料も、これまた中国が多く権益を握っていると言われています。いかに原材料を有利に調達するか……技術とともに問われて来る課題です。

ちなみに、企業のシェアで見ると日本勢のなかで、正極材料は日亜化学や住友金属鉱山、負極材料は昭和電工マテリアルズ、正極と負極を絶縁するセパレータは旭化成や東レが健闘していますが、中国の企業が優勢です。これは日本でEVがなかなか普及していないことも無縁ではありません。

日産自動車アシュワニ・グプタCOO(決算会見 日産公式YouTubeから)

一方、自動車業界全体でみると、暗い話題だけではないようです。決算そのものは各社コロナ禍からの回復を見せつつあります。国内7社のうち、トヨタ自動車、ホンダ、スズキ、SUBARUが増益。日産、マツダ、三菱自動車は赤字から黒字に転換しました。

特にトヨタの2021年9月の中間連結決算では、最終利益が1兆5244億円、中間期として過去最高となりました。ただ、それは円安という為替市場などに助けられた部分が大きいようです。

「実力以上の部分もあった。通期見通しは上方修正としたが、円安の影響を除けば実質は下方修正となる」

トヨタの近健太取締役はこのように話し、厳しい見通しを示しました。いかにもトヨタらしい表現です。

一方、クルマの需要という面ではどうでしょうか。リクルートが企画制作する中古車情報メディア「カーセンサー」の調査によりますと、今年(2021年)1年間の中古車市場の規模は4兆1699億円と、調査開始以来最大になる見込みです。中古車の購入台数はこれまでのところ延べ269万台、去年より15万台あまり増加。1台当たりの中古車の値段も平均で155万円、20万円近くもアップしています。

スズキ・鈴木俊宏社長(決算会見 オンライン画面から)

「イメージでは“ダムの壁”が徐々に開いて行く感じ。コロナや半導体不足で(新車から中古車への)門が開いて、スピードが速まっている」

カーセンサー編集長の西村泰宏さんはこのように話し、今後も中古車人気の傾向は続くとみています。

確かに新車生産は厳しい状況が続いていますが、クルマの需要自体は旺盛のようです。これによる金融関連の利益も順調です。自動車各社のトップが厳しい表情ながら、リーマン・ショックのときほどの危機感は正直感じないのも、こうしたことが反映しているのかも知れません。

ただ、自動車メーカーはやっぱり「つくってナンボ」の世界、魅力ある新型車への探求は怠りなくお願いしたいものです。ちなみに、中古車市場で人気のある車種はSUV、スポーツカーだそうです。

さて、もう1つの課題は電動化とEV(電気自動車)化の流れ。これについては次回に譲ることといたします。(了)

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