2022年の景気は? 経済は? 企業トップに聞く

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「報道部畑中デスクの独り言」(第278回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、2022年の景気について---

左から順に、岸田総理、経済同友会・桜田代表幹事、日商・三村会頭、経団連・十倉会長(代表撮影)

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新年となってから10日あまり、お正月気分も抜けたことと思います。

経済界では先週、相次いで新年祝賀会、賀詞交歓会が開かれ、本格始動しました。経済担当の記者も株式市場の大発会とともに、「仕事始め」となるわけです。

なかでも1月5日に行われた経済3団体主催の新年祝賀会。経団連、日商=日本商工会議所、経済同友会、会員企業が一堂に会するこの会合は、経済界では最も大きなものと言っていいでしょう。私どもメディアにとりましては、企業のトップにさまざまなお話をうかがう貴重な機会でもあります。

ただ、この新年祝賀会、新型コロナウイルスの影響で去年(2021年)は中止となりました。そして、今年は参加人数を大幅に絞り込んで執り行われました。出席者は例年のおよそ1800人から、7分の1以下の240人ほど。会食や立食は見送られ、その分、時間も半分近くになりました。

普段は人でごった返す会場周辺も、今回はがらんとした状況に様変わりしました。もちろん十分な感染対策を施しての対応です。そうしたなか、企業トップへのインタビューも粛々と行われたという感じです。そのインタビューは、ニッポン放送のニュースでもお伝えしましたが、ここではより掘り下げて行きます。

経済3団体主催の新年祝賀会(代表撮影)

経済3団体主催の新年祝賀会(代表撮影)

まずは今年(2022年)の景気の見通し。お天気に喩えたところ、しり上がりの予想が目立ちました。

「薄曇りまで回復して来たとみていいのでは。もう少しで明るい日差しが回復して来ると期待している」(JR東日本(以下JR)・冨田哲郎会長)

「曇りもようから晴れ間がようやく見えて来た」(ローソン・竹増貞信社長)

「航空業界は曇りのち晴れ、夜明けが近い。間違いなくよくなって来る」(ANAホールディングス(以下ANA)・片野坂真哉社長)

ただ、新型コロナはここへ来て、新たな変異株「オミクロン株」による感染拡大が目立っています。沖縄・山口・広島の3県にはまん延防止等重点措置も発令され、事態は刻一刻と変わっています。観光支援事業「Go To トラベル」再開時期の見通しも立たないなか、企業トップは政府の対応に注目しています。

「オミクロン株も大きな問題だが、いろいろな学びがあって、その対策を政府はしっかりやっている。経済活動のこれ以上の封鎖に、お客様が我慢できない状況にある。経済活動は復興して行く」(サントリーホールディングス(以下サントリー)・新浪剛史社長)

「Go To トラベルの再開をお願いしたいが、オミクロン株の問題でなかなか判断が難しい部分があることは理解している。医療体制、経口薬を整備して、両立していただけるようお願いしたい」(JR・冨田会長)

会場周辺に設けられたインタビュー用のスペース 密を防ぐ対策が施される(藤原記者、洗川アナと手分けして取材)

会場周辺に設けられたインタビュー用のスペース 密を防ぐ対策が施される(藤原記者、洗川アナと手分けして取材)

こうしたなかで各業界では今年、どんな取り組みをして行くのか……なるほど、そこには「時代の流れ」が見えて来ます。

「国内が戻って来た。国際貨物も救世主のように、半導体や医薬品を運んで好調。改善の力が備わっている」

コロナの影響を最も受けた業界の1つが、航空業界です。ANAの片野坂社長は黒字化へ決意を新たにしました。半導体不足は自動車業界をはじめとするモノづくりに深刻な影響を与えていますが、運送業界にとっては、逆に需要の増加が「追い風」となっているのが興味深いところです。

また、飲料業界は健康ブーム、エネルギー業界はカーボンニュートラル、この辺りがトレンドのようです。

「健康意識が高まっている。これに対応した商品をどんどん出す。業界は非常に明るく、去年に比べていい状況になると期待している」(サントリー・新浪社長)

「2021年はカーボンニュートラルに明け暮れた。2022年はさらに一層加速して行くのではないか。石油連盟としては今後、再生可能エネルギー、水素、アンモニア、合成燃料というものに果敢にチャレンジして行きたい」(ENEOSホールディングス・杉森務会長)

そして、コロナまん延のなかで政府の取り組みの遅れがあらわになったのが、デジタル化への対応です。去年、デジタル庁が創設されましたが、民間でもその対応は急務のようです。

JR東日本・冨田哲郎会長(藤原記者撮影)

JR東日本・冨田哲郎会長(藤原記者撮影)

JR東日本はSuicaという決済手段を持ち、予約システムをデジタル化しています。冨田会長は「運輸業、観光業、旅行業の変革の柱になるのは観光型のデジタルプラットフォーム。大きなカギではないか」と語ります。

ローソンはOTC医薬品(カウンター越しに売買される一般用医薬品)の販売を目指します。「例えば本部で登録販売者とオンライン相談を一括管理することで、24時間365日、体調に応じて薬が販売できるようになる。全国で展開できれば規制改革、デジタル化、生産性が上がる。便利になることを実感できると思う」と意欲を示しました。

最後に、今年のキーワードをトップに聞きました。まず、JR東日本は「変革」です。

「コロナを克服して、打ち勝って行く。災い転じて福となさなくてはいけない」(冨田会長)

ローソンは「規制大改革」……。

「いまの規制はノンデジタル時代の規制がほとんど。今年こそデジタルをベースにした改革を」(竹増社長)

サントリーは「人材の流動化」を挙げます。

「投資はいろいろなところで起こって来る。デジタル化、サステナブル化(関連の)雇用が増える。社会のための(人材が)移動して行くことになる」(新浪社長)

そしてANAは「安心移動」をキーワードとしました。

「安心して移動する、経済活動する状況をつくり出すことがカギになる」(片野坂社長)

ENEOSホールディングス・杉森務会長(洗川アナ撮影)

ENEOSホールディングス・杉森務会長(洗川アナ撮影)

お正月ですので、ご祝儀と申しましょうか、前向きのコメントが多いのは当然ですが、今回は新型コロナに悩まされた2年間から這い上がるのだという、そんな決意も見えました。

また、変革、改革という言葉は毎年のように出て来ますが、今年の祝賀会は、去年の中止のあと、再開されました。収束の見通しはいまだ見えていないものの、コロナで知恵を絞った先に何があるのか……それを見据えた発言も目立ちました。

一方、祝賀会では岸田文雄総理大臣があいさつしました。ここで注目されたのは足元の話、賃上げでした。

「賃上げは今後の経済成長の観点から極めて重要。日本経済の局面転換に弾みをつけるためにも、今回の賃上げに攻めの姿勢で協力をお願いする」

これに対し、経団連の十倉雅和会長は祝賀会後の記者会見で「従業員に成果の分配をするのは当然で、企業の責務」とした上で、「一律にどうこうではなく、各企業が個別に決定して行くべき」と述べています。

今月(1月)中旬に経団連が発表する経営側の指針には、賃上げ目標の数字は盛り込まれていないということです。経済界は、祝賀気分のあとは春闘=春の労使交渉のシーズン。これまた例年の行事で、3月まで続きます。

業界によってその明暗がはっきり分かれているなかで、「ウィズコロナ」の賃上げ交渉、新たな時代を指し示すものになるのか注目です。(了)

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