裁判員事件では18・19歳の名前公表に ~少年法改正で何が変わるのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月31日放送)に中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が出演。改正少年法について解説した。

裁判所企画「あなたが裁く~迫る裁判員制度」 裁判員制度の対象となる東京地裁の事件の法廷=2007年9月27日午後、東京・霞が関の東京地裁 写真提供:産経新聞社

改正少年法 ~4月1日から施行

罪を犯した18歳、19歳を「特定少年」として厳罰化する「改正少年法」が4月1日から施行される。家庭裁判所から検察官へ送致する事件を、殺人などの重大犯罪以外にも拡大。正式起訴されれば実名報道も可能となる。

飯田)同じく4月1日に改正民法が施行されて、成人年齢が18歳に引き下げられるということで、少年法もそれに合わせるということです。

親の同意なしに契約可能に ~契約トラブルの場合、親が出て行くことができない

野村)2つの改正ですね。1つは少年法の改正と施行で、もう1つは、4月1日から民法の方も成人年齢が18歳に引き下げられるということです。まず民法の方だけをお話しすると、これまで18歳、19歳は、親権に服している形になっていたので、親の同意なしに契約を結んでしまった場合は、あとから契約解除することができました。

飯田)親の同意なしに契約した場合。

野村)今後、それができなくなりますので、自分の責任で結んだ契約に拘束されるということになります。他方、どこに住むか、どんな仕事を選ぶのかなどについて、これまでは親がある程度影響を与えることができたのですが、今後は(本人が)自由に選べるようになります。自由と責任が18歳、19歳に伴って来るということが民法改正の重要なところです。

飯田)そうですね。

野村)そこに悪徳業者が入り込むようなことは、社会的に防がなければなりません。いままでは悪徳業者と契約トラブルになった場合、親が出て行って解決することができましたが、それができなくなります。そこはしっかりと教育して行かなければならないと思います。

飯田)ローンも組めるようになりますし。

野村)そうなのです。

飯田)確かにいままでは、パスポートを取るにも親の同意書が必要でした。私は学生のとき、親の会社に駆け込んで書いて貰ったことがあります。

野村)パスポートの期間も10年になりますからね。そういう意味では、大人扱いということになります。

強制性交や放火についても原則刑事罰に服す方向に ~「逆送」しなければ家庭裁判所での処分に

野村)選挙権を与えるということから議論が始まり、民法で先に成人年齢が下げられたわけですが、この議論の流れのなかで「少年法をどう扱うのか」ということが大きな問題になっています。「当然もう大人なのだから、大人と同じ刑事罰に服すべきだろう」という意見が強かったのに対して、一方では「判断力の劣っている18歳、19歳が行った犯罪は保護の対象だ」という意見が先鋭的に対立してしまって、やや玉虫色の解決になってしまっているところが今回のポイントです。

飯田)民法上では大人だけれども、18歳、19歳は少年法上では特定少年ということになる。

野村)そうなのです。特定少年にあたるものについて、これまでは殺人罪や傷害致死罪など、故意に人を死亡させた罪だけが「検察官送致(逆送)」として、家庭裁判所から検察に「刑事罰を科してください」と送致される原則がありました。この罪の範囲をもう少し広げて、強制性交や放火などについても原則は刑事罰に服す方向になります。そういう点では、やはり大人扱いになって来るわけです。ただ完全に大人と同じではないので、逆送しなければ家庭裁判所のなかの処分として終わってしまいます。

大学入学共通テストの問題が漏えいしていたとされる事件で、「スカイプ」のダイレクトメールでの高校2年生を名乗る人物と大学生のやりとり[大学生提供] 写真提供:時事通信社

共通テスト外部流出 ~刑事罰を科されることはない

野村)まだ改正されていませんので尚更ですが、いま問題になっている、受験時に外部に問題を漏洩してしまった大学生も19歳です。現在はまさに完全な保護対象ですので、おそらく逆送されませんから、家庭裁判所のなかで処分が決められるだけに留まると思います。報道では偽計業務妨害罪で捜査しているという話が出ていますが、実際には刑事罰は科されないでしょう。

飯田)偽計業務妨害だと、現行の運用上では間違いなく逆送の対象にならない。

野村)ならないですね。

飯田)仮にこれが4月1日以降、改正民法、改正少年法が施行された場合はどうですか?

野村)施行されたとしても、今回のようなケースは人を怪我させたものではないので、通常は逆送しないだろうと思います。その点ではあまり変わりありません。だから完全に大人と同じように、逆送に関する問題もなく、家庭裁判所を通さず、検察が起訴するかどうかを決めるという普通の大人扱いにはなっていないということです。

裁判員裁判の事件については特定少年でも検察から名前を公表 ~逆送して起訴された事件は報道機関の判断に委ねられる

飯田)メディアとの関係で1点、変わって来るところがあって、実名を公表するかどうかというところですよね。

野村)まず検察側から実名公表の範囲をどうするかという議論があるのです。これについては1月20日に報道されています。

飯田)そうですね。

野村)裁判員裁判の事件については公共性が高いので、特定少年でも検察から名前を公表するという形にするようです。しかし、逆送して起訴された事件については、検察側からではなく、報道機関側の判断で実名を報道してもいいという形に留まるということです。この辺りはまた難しい問題になると思います。

飯田)成人の事件の場合は、容疑者の段階から名前が出て来ると。いまはいろいろな議論があった結果として、警察から公表される写真がないので、本人の顔写真などをどう手に入れるかが求められる。それは写真の取り違えなど、別の問題につながる可能性もあります。

野村)そうですよね。

飯田)特定少年に関しては、そのハードルがさらにいくつもある状態になっていることが、犯罪報道全体として本当はメディア論的にも考えなくてはいけないところですよね。

野村)いまは実際にオープンになっていなくても、ネットの世界のなかで犯人を捜したり公表しようという圧力がかかります。それで間違った人がネットに晒されているという現状があるわけです。それを防止するためにも、正確な情報を出すことで被害を最小化することもできると思います。特定少年はやはり「大人を原則にして、そこから削る」という判断で、「子ども原則でそこに足す」という考え方はしない方がいいと思います。

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