ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月2日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。『どこの国でも「宗教離れ」が進み、自己啓発に乗っ取られていく』というメディアプラットフォーム「note」に寄稿した論考について解説した。
宗教離れとその役割
ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、メディアプラットフォーム「note」に『どこの国でも「宗教離れ」が進み、自己啓発に乗っ取られていく』という文章を寄稿。これを受け、我々は「救い」や「癒やし」をどこで得ているのかということについて語った。
飯田)メディアプラットフォーム「note」でさまざまなことを発表されていますけれども、どの国でも宗教離れが進み、代わりにあるものが台頭しているという論考を出されています。
佐々木)「日本人は無宗教だが、欧米はキリスト教の原理が染みわたっているからロジックがある」と、欧米の人は昔から日本のことを批判するのですが、実はヨーロッパでもすごい勢いで宗教離れが進んでいるのです。
飯田)ヨーロッパでも。
ヨーロッパでも進む宗教離れ
佐々木)フランスでは、カトリック信者だと答えている人は23%しかいません。6割以上が無宗教です。イギリスは7割が無宗教です。最も信仰心が薄いのはチェコで、9割以上が無宗教なのです。
飯田)そうなのですか!
佐々木)いつの間にか、みんなキリスト教徒ではなくなっているのです。
飯田)教会がたくさんあるというイメージですが。
アメリカを中心に増えている自己啓発セミナー
佐々木)その代わりに増えているのが、自己啓発セミナーです。
飯田)自己啓発セミナーですか。
佐々木)アメリカは有名ですね。みんなで盛り上がって、涙を流しながら自分の間違いを悔いるような。メガチャーチ(巨大教会)で、カリスマ的な説教者が讃美歌を歌いながら、大袈裟に説教をするではないですか。あれと雰囲気が似ていると言われていて、代わりになっているのではないでしょうか。
「推やし」との関係性に「癒やし」を求める
佐々木)日本だと自己啓発セミナーはそこまで流行っていません。では何が流行っているのだろうと考えて思いついたのが、「そうだ、『推し』だ!」と。
飯田)推し。
佐々木)10年くらい前に、社会学者の濱野智史さんが書いた『前田敦子はキリストを超えた 〈宗教〉としてのAKB48』という本があります。
飯田)ありました。
佐々木)ある意味でAKBは、宗教的な感覚に近いのではないかと。偶然ファンとアイドルの目が合うことによって天啓を受けるとか、握手して近付けるとか、そういうところが宗教的な感覚に近いと指摘している本です。
飯田)はい。
佐々木)「何に対して癒やしを求めるのか」というと、我々はいまや神も仏も信じていないけれど、「推し」と言われるアイドルとの関係性や、アイドルに限らずアニメのキャラクターでもいいのですが、そこに癒やしを抱く人が増えていると思うのです。
飯田)隣で新行アナウンサーがものすごく頷いていますけれど。
新行市佳アナウンサー)確かにそうだと思います。
飯田)アイコンのようなものになるのでしょうか?
新行)私の場合は特撮作品が大好きで、それを観て癒やされていますが。
宗教の役割 ~自己啓発でも推しでも解決できない問題を考えるのが宗教
佐々木)それで十分ではないかと思うのです。あとはオンラインセミナーなどが流行っていますが、どうなのだろうと。それで宗教が要らなくなるのかと思い、以前、藤田一照さんという曹洞宗の僧侶の方に聞いてみたことがあるのです。
飯田)僧侶の方に。
佐々木)「救いや癒やしは自己啓発などでカバーされるのですか?」と。そうすると、「普通の人生の悩みはそういうものでカバーされるかも知れませんが、そういうものでカバーしきれない、最終的な悩みがあるでしょう。“何で人間は生きているのだろう”とか、“何で人は死んでしまうのだろう”というような。自己啓発でも推しでも解決できない、そういった問題を最終的に考えるのが宗教なのです」とおっしゃっていました。そういう意味で、宗教の役割は残っているのだなと思います。
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