ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月11日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。緊張が高まるウクライナ情勢の背景と歴史を解説した。
ロシア軍は2月10日、ベラルーシでベラルーシ軍と合同の大規模演習を始めた。一方、対峙するウクライナもNATO北大西洋条約機構の諸国から供与されたドローンや対戦車ミサイルを使った演習をスタート。軍事的緊張が一段と高まっている。
宮家)ベラルーシは、地図をご覧いただけるとよく分かるのですけど、この国に海はないですよね。北はバルト三国で、西にポーランドがある。ロシアが東で、南にウクライナがある。東西南北が陸上国境で挟まれているのです。ここで30年も独裁者がいるというのも驚きですが、それは置いておきましょう。
では、ロシアから見た場合、ベラルーシとはどういう国か、ウクライナとはどういう国なのでしょう。簡単に言うと、ロシアに対する脅威は基本的に3つあります。1つはアジアからの脅威、これは中国ですよね。もう1つはイスラムの脅威、南から来る、チェチェンなどがそうですよね。そしてもっともプーチンさんが気にしているのが、西からの脅威。すなわち西ヨーロッパからの脅威、いまならNATOですよね。ヒトラーの場合もそうだし、ナポレオンの場合もそうだし、ドイツやフランスがロシアに攻めて来るときは、必ずポーランドやベラルーシ、ウクライナを通ってくるわけですよ。ですからその意味ではここは絶対に守らなきゃいけないところ。ここが落ちたらもうロシアは丸裸になっちゃう、みたいな気持ちでいるわけです。それでロシアは緩衝地帯を拡大したい、それでも心配だから、ベラルーシ、ウクライナはもちろんソ連の一部だったけれど、ポーランドなども影響下に置き、一時は東ドイツまで行ったわけですよね。そこでやっと安心していたら、1990年ごろからソ連がこけてしまいました。
こけたらどうするかというと、西側にこう言ったのです。「NATO東方拡大はしないのだよね」と。「拡大しないと1990年に約束したではないか」と。アメリカが約束したという説もあるのだけど、口頭で何か言ったことはあったかもしれないが、文書に残っているわけじゃない。しかもロシアに隣接する国々からすれば、ポーランドもハンガリーもそうですけれども、ロシアの報復が怖くてしょうがないですから、早くNATOに入りたいわけですよ。あんまり急激にNATOを拡大するのはいかがなものかという議論が90年代にあったかもしれないけれども、東欧諸国からすれば出来るだけ早くNATOに入りたいという気持ちがある。しかしロシアから見れば、特にプーチンさんからすれば「話が違うじゃないか」ということなのです。
そういう経緯の中で、最近(ロシアが)ウクライナ周辺に軍隊を集結させているという報道があった。ベラルーシはウクライナから見れば北ですが、そこで合同演習をやるという名目であればロシアは自由に軍隊を動かせるでしょう。それが陽動作戦なのか、本気なのかはわからないけども、どうやら軍事進攻の準備はしているように見える。そこがベラルーシという国でございます。ロシアはベラルーシを自国の勢力圏の一部だと思っています。ウクライナもその一部だと思っているから、何とかウクライナのNATO加盟だけは阻止したい。それがプーチンさんのいちばんの望みじゃないでしょうか。
飯田)まあ、ここから先、ウクライナをそのために武力で侵攻するのではというようなことが、しきりに言われていますが。
宮家)するかしないか、私は、「わからない」と言っているのですけどね。プーチンさん自身もわからないのではないですか。
飯田)プーチンさんもわからないと。
宮家)そう思いますね。彼は1990年代に母なるロシアが蹂躙されたと考え、今それをようやく巻き返そうとしている。アメリカが中国とこれから覇権争いする、そうしたらちょうど欧州に空白ができるではないですか。そこをうまく突いてロシアの権益をもう一回拡大しようと思っているに違いないわけです。その意味ではバイデンさんにはかわいそうだけど、バイデンさんはテストされているのですよ。プーチンさんからすると、どっちでもいいけども、軍事的にどうするかはこれから決めると思う。もしバイデンさんが譲歩すれば「ありがとうございます、いただきます」となる。アメリカが譲歩しないでガチンコで来たら、「それなら、こっちも力を見せてくれるわ」と強硬策に出る。どう転んでもプーチンさんは諦めないだろうなというのが私の見方です。
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