日本に「防衛外交」が必要な理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月10日放送)にキヤノングローバル戦略研究所・主任研究員の伊藤弘太郎が出演。政府がNSCを開催し、「防衛装備移転三原則」の運用指針を変更したというニュースについて解説した。
防衛外交
防衛外交とは、日本では安全保障協力、防衛交流、防衛協力と称される諸活動のこと。政府は3月8日、国家安全保障会議(NSC)で「防衛装備移転三原則」の運用指針を変更し、ウクライナへの防弾チョッキやヘルメットなどの提供を正式に決めた。その後、航空自衛隊小牧基地で航空自衛隊機に積み込まれ、ポーランドに向け出発している。
飯田)防衛装備移転三原則は、日本と安保上の協力関係があるなど、一定の条件を満たす国が対象だったということです。ウクライナは今回当てはまらなかったので、新たな規定を加えたようです。
伊藤)運用指針を早速確認したのですが、指針が改定され、取って付けたように「ウクライナに対して」という文言が入っていました。
飯田)なるほど。ウクライナという国の名前も出して。
伊藤)今回は特別だというような、見てすぐにわかる形でしたね。
飯田)例外だぞと。
伊藤)この事態に対応するための例外なのでしょうね。
いろいろな国と防衛交流や防衛協力をするのが世界の常識 ~防衛外交
飯田)各国ウクライナに対しての支援を行っていますが、伊藤さんは勁草書房から『防衛外交とは何か 平時における軍事力の役割』を、さまざまな専門家の方たちと共著で出されています。今回のような協力は、日本のプレゼンスという意味でも大事になりますか?
伊藤)日本ではなかなか世界の常識が見えて来ないのですが、世界ではいろいろな国と防衛交流や防衛協力をするのが当たり前になっています。それが深まると、通常の外交では得られない国益が得られるということで、各国が判断してやっています。
飯田)よく聞く合同演習だけではない、という意味ですか?
伊藤)これは笹川平和財団の研究プロジェクトで行われたものですが、これまで安全保障協力や防衛交流協力とバラバラになっていた概念を「防衛外交」という1つの言葉にしました。その定義は軍のアセットと呼ばれる装備品や人的能力を活用して、国益を実現することとしています。
他の国が常識的にやっている、「より軍事的な色彩の濃いもの」を日本ができるのかどうか
飯田)今回のような装備品の協力や提供もありますし、あるいは一緒に開発するというようなことも入るのですか?
伊藤)共同開発や装備品の海外移転もあります。装備品の移転によって相手の軍事戦略などにも間接的に関わることになるので、より関係が深まります。相手側も自分の国益を最大限にしなければならないので、生半端な気持ちで装備品を買うわけではありません。そうすると、信頼関係も広がって行くのです。
飯田)そのなかで協定を結んだり、物品や役務の相互提供協定などもあります。部品をお互いに融通できるようにすることも、かなり踏み込んだ協力になると思いますが、それらを駆使しながら、オーストラリアなどの周辺国とやって行くことが大事になりますか?
伊藤)そうですね。2022年の円滑化協定の締結によって、事実上、オーストラリアは準同盟化したと言われています。他にもイギリスやフランス、インド太平洋の国々にも拡大しているので、そこを起点にどう深められるのか。次のステージに上がっているのではないかと思います。より日本のできることを進化させて行く。他の国が常識的にやっている、「より軍事的な色彩の濃いもの」を我が国ができるのかどうかというところです。そこが議論になると思います。
きちんと議論し、あらゆる事態に対応できるような法律をつくることが重要 ~武器や弾薬などの提供
飯田)さらに踏み込んで行くと、どのようなことが考えられますか?
伊藤)今回のウクライナ情勢にしても、武器や弾薬などの攻撃的なものは提供できません。しかし、本当に日本の国益のために必要だというときには、その手段を完全に排除するのか。それとも、必要なのか。ご記憶にあると思いますが、この原則ができる前の武器輸出三原則の時代に、南スーダンで韓国に弾薬を提供しましたよね。あれは完全に法律外のところで、政治的な判断でやりました。韓国を支援することが国連を通じての要請でしたし、国益に資すると判断して行われましたが、例外的なことを何回もやっていると、根本的には前に進めません。そこはきちんと議論して、あらゆる事態に対応できるような法律をつくることが重要ではないかと思います。
飯田)そこで条件をどうするのか。国連による要請というのは、確かに少し納得感がありますよね。
伊藤)国連も日本だけ「専守防衛なのです」とか「原則があるのです」などとなりますが、「このような状況下でそんなことを言わないでくださいよ」となるわけです。
飯田)「あなたは何を言っているのだ」となってしまう。
世界の常識を見た上で議論し、法規制をつくり国益を実現する
伊藤)我々は民主主義国家ですので、世界の常識をきちんと見て、しっかりと議論した上で堂々と法規制をつくり、そのなかで国益を実現して行くというやり方が求められているのではないでしょうか。
飯田)いままでのように「議論をするのもダメだ」ということではいけませんね。
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