ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月30日放送)に慶應義塾大学総合政策学部准教授の鶴岡路人が出演。フランス大統領選挙について解説した。
フランス大統領選 ~イギリス離脱後、EUのなかで大きい存在のフランス
4月10日に第1回投票が行われるフランス大統領選挙は3月28日、公式選挙運動の期間に入り、再選を狙うマクロン大統領が世論調査で優位を維持している。ただ、1回目の投票で過半数を得る候補はいない見通しで、焦点は上位2候補による4月24日の決選投票に移っている。
飯田)鶴岡さんは国際安全保障ならびにヨーロッパ政治がご専門です。フランス大統領選の意味合いとしては、ヨーロッパの大国のトップを決めるということで、影響が大きいわけですか?
鶴岡)そうですね。特にイギリスがEUから離脱したあと、フランスの役割はEUのなかでは大きくなっているということです。
飯田)マクロンさんはプーチンさんとの間で、相当の長電話を毎日行っているということも報道されています。
鶴岡)モスクワに行ったときも6時間ほど話していましたし、電話でも何時間も話しています。マクロンさんも腰が据わっているというか、胆力があるということだと思います。
マクロン大統領への評価
飯田)その辺りが国内での評価につながっているわけですか?
鶴岡)「あれはパフォーマンスだ」と言う人もいますし、実際に大統領選挙を前にしてのパフォーマンス的な要素は、もちろんあるのだと思います。しかし、こういう言い方は語弊があるかも知れませんが、フランスが国際社会において目立つ役割を果たしているのは、フランス人にとっては心地いいことなのだと思います。
飯田)前回のフランス大統領選は、かつては極右とまで言われていた「国民連合」のマリーヌ・ルペン氏が大統領になるのではないかとも言われていました。その辺りのヨーロッパの政治的な風景が変わって来たということですか?
鶴岡)いろいろな国のいろいろな政党がありますけれども、全体として、右派のポピュリスト勢力が勢いを持っているという状況では、いまのところなくなって来ています。ただ、国や選挙によって別の要素がありますから、結果として、右派のポピュリストが上に出て来るという心配は今後もあるのだと思います。
フランスがウクライナ難民を受け入れるのはヨーロッパの同胞として
飯田)あの当時、いわゆるポピュリスト政党が各地で出て来た際に、引き金となった要因の1つとして、シリアから多くの難民がヨーロッパに入って来たということがありました。今回のウクライナ侵攻でも、やはり難民がたくさん入っていますが、まだその影響は出て来ていないのですか?
鶴岡)今後、どうなるかはわかりません。これもなかなかセンシティブな話ですけれども、シリア難民とウクライナからの難民というのは、おそらくヨーロッパ人にとって、全然位置付けが違うのだと思います。やはりウクライナ人はヨーロッパの同胞なのです。
飯田)ヨーロッパとしての。
鶴岡)フランスは直接国境を接しているわけではありませんが、EUに入っているポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア等々は国境を接しているのです。ウクライナは隣国であり、見た目も非常に似ています。
飯田)そうですね。
鶴岡)ポーランドがいい例です。2015年に起きたシリアの難民危機のときには、受け入れに強硬に反対していました。ポーランドは右派のポピュリスト的な政権なわけです。しかし今回、既に200万人以上のウクライナ難民を受け入れています。その差が何なのかと言えば、シリア人とウクライナ人の差が現実なのだと思います。「いい、悪い」の問題は別として。
自分の地域の近いところにある問題ほど、強く感じてコミットする
飯田)アジアで何か起こったときに、西欧が本気になるのかどうかなど、日本としてはそういうところまで考えてしまいますね。
鶴岡)ただ、これはお互いさまなのだと思います。自分の地域の近いところにある問題ほど、強く感じてコミットするわけです。
飯田)人間の生理的なものになってしまうと。
鶴岡)「グローバルだ」と口で言うのは簡単ですが、実際に気持ちが追い付かないのも、仕方がない部分ではあるのかなと思います。
マクロン氏が勝つ可能性が極めて高い
飯田)4月24日に決選投票ですけれども、マクロンさんともう1人、「誰が来るのだろう」というところですか?
鶴岡)ルペンさんだとは思うのですけれども、マクロンさんが勝つ可能性が極めて高いということだと思います。
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