ロシア産エネルギーの禁輸に関する「日本の難しい立場」

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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が4月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。G7によるロシアへの経済制裁が進むなか、ロシアに液化天然ガス(LNG)などの権益を持つ日本の難しい立場について解説した。

ロシア産エネルギーの禁輸に関する「日本の難しい立場」

モスクワで、取材に応じるロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ) AFP=時事 写真提供:時事通信

ロシアに対して、さらに「もう一歩」の経済制裁が必要

先進7ヵ国(G7)がウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁を強めるなか、エネルギー安全保障が一層重要になってきた。ロシアに液化天然ガス(LNG)などの権益を持つ日本は、米国などがロシア産資源の禁輸に踏み切るなか、権益維持の方向性を崩さないが、今後の戦況次第では、対応変更を求められる場面も考えられる。

飯田)国際社会として、どうロシアに対する圧力を掛けていくのか。法律面はもちろんありますが、いまのところ経済制裁が中心になっていますね。

野村)経済制裁がどのくらい効くのか、さらにその効果を高めるために何ができるのかというところが、いま最大の争点です。

飯田)そうですね。

野村)ここまでいろいろな行為をやってきたわけです。SWIFTという国際決済の機構、ドルに換えて世界の流通のときに決済するという仕組みから、ロシアを排除しました。これは輸出入がしにくくなりますから、かなり経済的なダメージがあると言われています。では、SWIFTから排除して、ロシアに大きなダメージを与えられているかというと、必ずしもそうではない部分もあります。

飯田)実際のダメージは。

野村)さらに中央銀行のルーブル決済を認めない、つまり資産を凍結すると、ルーブルの買い支えができなくなるために、ルーブルが暴落して、ものの値段が上がります。そうするとインフレになって、国民からの反発が出るのではないかということですけれども、これもジワジワと効いてきているようですが、どこかで抜け道があるのではないかということです。

ロシアからエネルギーを輸入しない ~ロシアへの依存度の高い日本にとっては都合が悪い

野村)そこで今回、日本も含めてもう一歩進めるとなると、ロシアの経済を支えているエネルギーの輸出です。エネルギーをもう買わないということになれば、外貨も稼げなくなり、大変な状況になるのではないかということです。しかし、日本としては、痛し痒しの部分があるわけです。

飯田)G7の声明のなかで、とりあえず石炭についての話が出ましたけれども、本丸はやはり石油や天然ガスになるわけですよね。

野村)そうです。何が日本にとって痛し痒しなのかと言えば、日本自体のエネルギーの現状は、原発がほとんど止まっていますから、天然ガスへの依存度が高いのです。それをロシアからの輸入によって賄ってきたという現状があります。

飯田)日本は。

野村)それをさらに太い幹にしようと考えて、天然ガスのパイプラインなど、かなりの先行投資をして開発してきたのです。それを止めるには、1つ大きな問題があります。

先行投資してきた「サハリン1・2」、「アークティックLNG2」の利権と技術が中国に獲られてしまう

野村)開発をやめて日本のエネルギーが賄えるのかという問題と、先行投資してきた利権を手放すことによって、誰が持っていくかと言うと、想像されるのは中国なのです。中国がその利権を全部自分のものにしてしまうというような状況を視野に入れたときに、この制裁に次の一手があるのかというところが、大きなポイントになっていると思います。

飯田)すでに稼働している「サハリン1」、「サハリン2」というもの、それから先行投資をして開発が進んでいる最中だった「アークティックLNG2」プロジェクトです。先進的な技術も入れているというところで、それも獲られてしまうという話があります。

野村)経済安全保障との関係でも、技術が持っていかれてしまうことに対して、警戒しなければいけないという部分もあると思います。

エネルギーの確保が難しい日本

飯田)他方、プロジェクトを続けていたら、「日本だけ何をやっているのか」ということになる。

野村)その通りです。エネルギーについて自信のある国はそこを塞いでいくのに対し、日本はどうするのかということだと思います。

飯田)確かにイギリス、アメリカは考えてみれば、北海油田なりシェールガスやシェールオイルなり、有力なものを持っていますものね。

野村)ロシアとの関係が深いドイツや日本などが、厳しい状況に置かれるということだと思います。

飯田)ドイツはノルドストリーム2をいったん棚上げにしましたものね。

野村)ドイツはフランスで原発が動いてさえいれば、そこからエネルギーは賄えます。EUのなかで融通できるのです。しかし、日本は島国なので、難しい面があるということです。

飯田)もともと天然ガスはカタールなどの中東から入れていたけれど、一本足ではダメだろうということで、ロシアを入れたのですよね。

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