辛坊治郎が5月26日(木)、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送『辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!』に出演。25日の沖縄県の玉城デニー知事の「ゼレンスキーです」発言について考察した。
沖縄県の玉城デニー知事が25日午前、沖縄県庁で開かれた米軍基地問題に関する有識者会議に出席する際、「ゼレンスキーです。よろしくお願いします」と発言した。その直後に「冗談です」と述べたが、発言がインターネット上で報じられると批判が相次いだ。玉城知事は昨日の午後、「不用意な発言で誤解を招き、おわび申し上げる」と謝罪している。
辛坊)これね私、驚いたんですよ、かなり。というのがですね、昨今のプーチンのウクライナ侵攻に際して、いろいろなこの世の中の論調みたいなものを見ていると、一部の極端なデマとか陰謀論の人たちは別にして、そうではない比較的論理的にまともなことを言うレベルの人たちの中にも、「やっぱりゼレンスキーは即降参すべきだ」みたいなことを言う人、いるじゃないですか。そういう人たちの思想傾向は……ごく一部違う人もいますが……おおむねですね、いわゆる「反戦平和」、もっと言うなら「左派系」の人たち、旧ソ連を「夢の国」、旧東ヨーロッパを「理想郷」だと認識していたような世代の……比較的そういう人たち。
「ゼレンスキーは覚えて突っ張ってばかりいてもどんどん人が死んでいくんだから、国内の人の死を避けるために降伏すべきだ」とか「ゼレンスキーみたいなああいう突っ張り方をすると、若い人がどんどん死んでいくから、白い旗を掲げて戦争はやめるべきだ」という、そういう人たちがどちらかというと、伝統的に左派のいわゆる「反戦平和」「反基地」みたいな人たちに多いわけですよね。この1カ月ぐらいの論調を分析してると。
飯田浩司アナウンサー)ええ。
辛坊)その系譜でいうと、沖縄の玉城デニー知事というのは、日頃の発言はどちらかというと、そちらに近いわけですよね。だから、こういうようなひとこと言うときに「プーチンです」って言うのならまだわかるんですけど、「ゼレンスキーです」と言うと、つまり、玉城デニーさんの支持者の層を敵に回すわけですよ。その感性は、私は政治家としては当然あって当たり前のレベルだと思いますんで、私がもし玉城さんのような支持母体を抱える政治家で、玉城さんのような立場にいたときに。ここでギャグでゼレンスキーという名前はまず絶対出さないと思うんですよ。つまり、その人たち、目の前にいる自分の支持者の人たちが蛇蝎のごとく嫌うのがゼレンスキーですから。だからゼレンスキーを名乗っても政治的にはプラスではないという判断が普通働くはずなのに、ここで冗談にしろ、玉城さんが「ゼレンスキーです」って言っちゃったことに対して、ものすごく意外な感じがするんです。
で、私の結論としては、「あれ? 玉城さんって存外、普通の人なんじゃないの?」っていう印象ですね。
飯田)ほお。
辛坊)だから、もうちょっと左派色が強くて「ゼレンスキーは降伏すべきだ」と「ゼレンスキーがこうやって突っ張ってるからどんどん若い人が死ぬんだ」っていうことを言う人、そっちの系譜に属す人なら、たとえこういう瞬発的な冗談でも「ゼレンスキーです」という言い方はしなかったはずだと思うんだよね。
だから、「あれ? 玉城さんって意外と普通の人なんだな」というのが正直なところですね。
飯田)そこが確かにちょっとずれがあるなと思ったのは、私もこの間、それこそ沖縄に取材に行った時に感じたことがありました。5月15日の式典がありまして、その後に出席した要人たちがインタビュー、ぶら下がり取材に答えるんですが、玉城デニー知事も出てきたわけですよ。
そうすると、沖縄のメディアを中心に玉城さんのスピーチに関しての質問が相次いで。というのが、「あのスピーチの中で辺野古新基地の話がなかったじゃないか」「あそこでどうして批判しないんだ」と、半ば糾弾のような形で記者から質問が飛びまして。それに対して玉城さんは「いやいやいや、これは次の50年に向けてというスピーチなんだから、ここでしなくても。私は建議書を出してるんだから、その中にきちんと書いてあります」と。でも食い下がる記者たちと結構バチバチになってるようなところがあって
辛坊)ほお。
飯田)今年、選挙が……沖縄県知事選があります。というようなところもあるので……
辛坊)ということはつまり、「反米」「反基地」だけでは戦えないという認識がどこかにあるってことかな。沖縄県知事選で。
飯田)こう、やっぱり「風向きの変化」というものが、このウクライナ情勢によって起こってきたということが明らかになってるのかもしれないですね。
辛坊)まともにものを考えられる人なら、「沖縄は、基地があるから平和が保たれてる保たれてるんだろう」という見方も当然あるわけで。
飯田)もちろんそこの負担が重いよ、というのは沖縄の人たちには……
辛坊)沖縄県民に対しても「『反米』『反基地』だけだと政治的に戦えない」みたいな認識が、もしかすると玉城知事にはあるのかもしれないと、沖縄まで取材に行った飯田くんは見てとったということだね。
飯田)50年を前にして現地でも結構いろいろ世論調査なども行われていたんですけれども、やはり世代によってその辺の認識というのがやや違うところがあって。基地の負担が重いんだというのを前面に出す世代と、現役世代なんかは基地もちろん課題だけれども、抑止力というものへの理解であるとか、あるいは経済も大事だよねというようなことで、結構重層的に考えてらっしゃることもいるなという印象はあったので。
辛坊)今回の、玉城知事の言い訳をすると、自分がその会合に入ってきた時に目の前の人たちが、ロシアのウクライナ侵攻について何か会話を交わしていたので、まあ、ウケを狙って「ゼレンスキーです」って言ったっていう言い言い訳なんだけど、その時にとっさに「ゼレンスキーです」と言えてしまうっていうことは、いわゆる「反米」「反基地」で、いや「反ゼレンスキー」みたいなので凝り固まってる精神状態の人なら絶対に口にしないはずなので、かなり「あ、玉城さんって、普通の人じゃん」という素朴な印象ですね。私の印象は。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)