プーチンと習近平 2人を結び付ける「源泉」はどこにあるのか

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青山学院大学客員教授でジャーナリストの峯村健司が6月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後連載される週刊誌の企画を通して「ポストウクライナ戦争」について解説した。

北京で、記念撮影に応じる中国の習近平国家主席(右)とロシアのプーチン大統領(中国・北京) AFP=時事 写真提供:時事通信

ポストウクライナ戦争 プーチンと習近平

ロシア軍はウクライナ東部ルハンシク州の完全掌握に向けて激しい攻撃を続け、激戦地となっているセベロドネツクでは、街の中心部につながる橋が破壊され、包囲される恐れが出ている。こうしたなか、6月15日にはウクライナを支援する国々がベルギーで会合を開く予定で、ウクライナからは国防大臣が出席し、兵器が不足している窮状を訴えるものと見られる。

飯田)「ウクライナ情勢が世界を変えるのではないか」とも言われていますが、峯村さんは、これについてのレポートを執筆されています。来週、いよいよ発表されるということですが。

峯村)独立後、取材と執筆していたものが、6月20日から「週刊ポスト」で集中連載という形で掲載されます。タイトルは「プーチンと習近平」で、副題が「世界で最も危険なふたり」です。計5回の予定です。

飯田)世界で最も危険なふたり。

峯村)国際政治というと、国のシステムや国同士の関係を見てしまうのですが、今回は人にフォーカスをあててみました。これは重要なことですし、私自身も人の分析をすることは好きなのです。

飯田)人にフォーカスすることが。

峯村)いまのような習近平氏、プーチン氏というリーダーは、「一強体制」を築いており、独裁的です。つまり、2人はトップダウンで命令をして、そのまま政策に移されるわけです。2人が何を考えていて、何をしようとしているのか。それを分析することが極めて重要なのです。

飯田)彼らが何を考えているのか。

峯村)この手法は、アメリカの情報機関、CIAなどは「プロファイリング」をよくやっています。その人物の幼少期まで振り返ってどのような発言をしていたのか、どのような行動をとっていたのか。公開情報を集め、会ったことがある人からインタビューをして、人物像を分析するやり方です。「プロファイリング」と呼ばれています。

プロファイリングからプーチン氏と習近平氏の人物像を予測する

峯村)トランプ前政権のときに、北朝鮮と国交正常化するため、首脳会談を計画したときにも行われています。

飯田)トランプ前政権が。

峯村)当時、金正恩氏のプロファイリングをCIAがやったのです。この手法を真似てみようと思ったのが、今回の連載です。CIAは金氏がスイスに留学していたときの同級生や先生など、約200人からインタビューをしたそうです。当時、「金正恩氏は何を言ったのか、何を食べたのか」ということを聞いたのです。それらを集めた公開情報とともに分析して、人物像を予測して、米朝首脳会談をすることを決めたのです。今回は、その手法をプーチン大統領と習近平国家主席に当てはめてみようという、かなり壮大かつ無謀な試みになります。

飯田)食べるものも重要なのですね。

峯村)重要ですね。最も重要なのは、思想に直結する本だと思っています。。

飯田)それが思想を形づくると。

峯村)習近平氏の執務室の映像が出ることがありますが、その裏にある本を見て「どこにどの本があるか」ということを確認します。

飯田)本棚にある本を。

峯村)それを2~3年かけてやっているのですが、本の位置が微妙に変わるのです。そのなかでもまったく変わらない本があることを見つけました。そこから読み解いて、習近平氏が好きな本らしいと。

飯田)好きだからこそずっと残っている。

峯村)その本を実際に私も読んでみて、「なるほど。どうしてここが好きなのだろうか。この部分は習近平氏が真似ている部分だな」などということをプロファイリングする。なぜ、習氏が社会主義に回帰しているのか。反腐敗キャンペーンを展開しているのか。思想的な背景がみえてくるわけです。

中ロ首脳会談=2019(令和元)年6月5日、ロシア・モスクワ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

とても仲がいいプーチン氏と習近平氏 ~仲のよさが双方の命取りになる可能性も

飯田)東アジアに住んで生活している我々からすると、やはり中国の動向、習近平氏が気になります。しかし、いま世界的にはウクライナ戦争があり、プーチン氏の動向が注目されています。この2人は仲がいいのですか?

峯村)とても仲がいいですね。逆に言うと、仲のよさが私は、双方の命取りになるのではないかという仮説を立てています。

飯田)双方の命取り。

峯村)特に習近平氏の命取りになるのではないかと思うのです。

飯田)ウクライナとの戦いで追い詰められているのは、プーチン氏ではないかというイメージがあります。もう69歳ですし、健康状態についてもいろいろ言われていますが。

習近平氏とその下の政府の人たちの間に大きな溝があるのではないか

峯村)短期的な視点と、中長期的な視点に分けて考えます。短期的に見た場合、中国はロシアに寄っているわけです。いまでもロシアを支持する姿勢は変わっていない。

飯田)中国の。

峯村)ロシアを支持する態度を変えないまま戦争が長期化し、さらに残虐なことをロシア軍が行うとなると、国際的な批判がロシアに集まるだけではなく、それを支持している中国にも影響が出てきます。そうなればロシアの同盟国であるベラルーシが受けているような、二次的制裁を受ける可能性もあります。

飯田)二次的制裁を。

峯村)中国政府内でも「ロシアに寄り過ぎるのは、まずいのではないか」という議論は起きているのです。これ以上ロシアにのめり込みすぎるとまずいと。「ロシアが負けたらどうするのだ」という議論はあるのですが、なかなかその声が出ないのは、トップである習近平氏とプーチン氏の仲がいいことをみんなが知っているからです。

飯田)親分同士で仲がいいから、あまり水を差すことは言えない。

峯村)言いづらいですよね。本当は親分が好きだと知っているのに、「プーチンはやばいですよ」とはなかなか言えません。しかも、いまのような習近平「超一強体制」の状態下で「親分、やばいですよ」と言った瞬間に、「だったらお前を逮捕するよ」となりかねないわけです。

飯田)そうなりますね。

峯村)そこから、いま「習近平氏とその下の政府の人たちには、大きな溝があるのではないか」という仮説を立てています。

飯田)溝があるのかどうか。

プーチン氏と習近平氏はなぜ仲がいいのか

峯村)もっと言うと、なぜ、この2人はそんなに仲がいいのか。「ブロマンス」と言う人もいるのですが、このブロマンスはどこから来ているのかということを、十数年以上前から遡って紐解いていこうと思っています。

かつてないくらい関係のいい中露

飯田)国で考えても、ロシアと、あるいはかつてのソ連と中国は、くっついたり離れたりを繰り返しています。国境をめぐって紛争までやった国ですよね。

峯村)私が中国にいた2000年代は、「ロシアのことなど、どうでもいい。どうせ没落する国だ」という感じでした。ロシア専門家の影響力はなく、研究もあまりされていませんでした。

飯田)中国国内に。

峯村)ところが、習近平氏が国家主席になってから、ロシアが一気の表舞台に出るわけです。両国の首脳会談は38回行われており、貿易量も倍くらいに増えているのです。

飯田)そうなのですか。

峯村)中国のロシア製の武器購入量も飛躍的に増えており、合同の軍事演習も頻繁にやっています。中露関係はいま、かつてないくらい良好なのです。おそらく歴史上を見ても、ここまで中露が密接になったことはありません。

ウクライナ首都キーウ近郊ブチャに隣接するホストメリの路上に放置された焼け焦げた車=2022年4月12日(共同) 写真提供:共同通信社

中国にとってウクライナも大事だが、いまは完全にロシアに賭けている

飯田)他方、いまウクライナ侵攻が行われていますが、ウクライナと中国というのも、経済的な部分のつながりがありました。

峯村)経済だけではなく、軍事的にも関係があります。最初の空母である「遼寧」も、「ヴァリャーグ」というウクライナにあった空母を買って改造しているのです。ウクライナも本当は大事にしなければいけない。中国の伝統的な外交で言うと、「ウクライナも大事にする、ロシアも大事にする」というやり方でなければいけないのですが、いまは完全にロシアに偏っている異常な状況といえます。

冷戦期の同盟よりも強い中露の団結 ~これまでの基本的な外交原則を逸脱しても、ロシアに近付く中国の源泉は何なのか

飯田)伝統的な外交としては、少し引いたところで、あまりコミットしないというのが中国の外交だったわけですか?

峯村)鄧小平の時代以来、「同盟はつくらない」という外交方針があります。ところが、2月4日の中露共同声明を見ていると、「冷戦期の同盟より、俺たちはもっとすごいのだ」ということを言ってしまっているわけです。さらに「我々には禁じられた分野もないのだ」と言っている。

飯田)中露共同声明では。

峯村)「同盟よりすごいのだ」ということを言っているわけです。中国の基本的な外交原則から逸脱したことを、習近平氏とプーチン氏が行っている。「その源泉は何なのか」ということを少しずつ探っていこうと思っています。まだ長期化しますが、ウクライナ戦争後の世界を考える上でも、この2人の関係、両国の関係は重要なのです。

飯田)ウクライナ戦争後の世界を考える上でも。

ポストウクライナ戦争 ~米対中露を中心とした冷戦期のような二極化構造になる

峯村)ロシアが優勢で終わろうが劣勢で終わろうが、どちらにしても、欧米諸国や日本とはこれまでのような貿易はできなくなります。となると、ますます中国への依存が高まってくるわけです。

飯田)中国への依存度が。

峯村)そうなると中国、ロシアはさらに接近していきます。一方、他のNATO周辺国も「やはり頼れるのはアメリカだよね」となるわけで、アメリカに近付く陣営が生まれるわけです。かつての冷戦期のような二極化構造になる。私は、ポストウクライナ戦争はそのような構造になるのではないかという仮説を持っています。そうなることを想定して、中露関係を分析することとても重要なことになります。

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