日野自動車「データ改ざん」の背景にある「日本企業の弊害」

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ジャーナリストの佐々木俊尚が8月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日野自動車によるデータ改ざん問題について解説した。

日野自動車「データ改ざん」の背景にある「日本企業の弊害」

【日野自動車会見】会見冒頭、礼をする日野自動車の小木曽聡社長=2022年8月2日午後、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

日野自動車がデータ改ざん

日野自動車によるエンジンの排出ガスなどのデータ改ざん問題で、小木曽聡社長はこれまでに2016年からと公表していたが、少なくとも2003年からおよそ20年間にわたって不正が続けられていたことが新たにわかったと発表した。

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日野自動車・小木曽社長)お客さまをはじめとする多くのステークホルダーの方々に、多大なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます。

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飯田)会見では、小木曽社長も含む経営幹部について「経営の責任は大変重い」として、厳正に対処する考えを示したということです。

同時期に三菱自動車の不正があった最中にデータ改ざんしていた ~その背景にある内向きな企業体質

佐々木)2003年というのが驚きです。自動車業界のデータ隠しや不正では、三菱自動車が有名で、2000年と2004年にリコール隠しが発覚しました。あれだけ大騒ぎになって、社会的にも「なぜ」と言われていた時期から、実は日野自動車も並行して似たようなことをやっていたということになるわけです。

飯田)その後、『空飛ぶタイヤ』という本も出ました。

佐々木)なぜそんなことを、あの事件の最中に続けられていたのか。企業社会自体が内向きなのです。

社内と社外で法律や倫理に関する感覚が違う ~社内では褒められるゼネコンの談合など

佐々木)大きな会社に勤めている人なら誰しも経験があると思うのですが、会社内の空気感と会社外の社会の空気感がまったく違うのです。

飯田)社外との空気感が。

佐々木)一般社会では非常識なことが、なぜか社内では常識的であることがあります。昔はゼネコンなどがよく談合をやっていたではないですか。1990年代に取材したことがありますが、社会的には断罪されて警察に捕まるのだけれど、社内的には談合でうまくやった人は褒められるのです。

飯田)よくやったと。

佐々木)社内と社外で法律や倫理に対する感覚がまったく異なるというのは、大企業になると必ずあるのだなと思ったことがあります。

社内における正義こそが正義 ~それに最適化した人が出世する

佐々木)新聞記者時代もそうです。毎日新聞にいたのですが、全国紙で大きな会社なのだけれども、「そんなことをしたら法に触れるでしょう」ということでも、上司に「そこまでやらないと記者とは言えないだろう」と言われることがありました。

飯田)「狙ってこい」と。

佐々木)住居侵入罪のようなことをやらされそうになるとか。倫理観がどこかで抜け落ちてしまって、「社内における正義こそが正義」になってしまう状況が必ず起きるのです。

飯田)むしろそれに最適化した方が評価され、出世していくと。

佐々木)そうなのです。ゼネコンでも談合担当者の方が偉くなる。

飯田)実は担当者はエリートだったりする。

佐々木)昔は株主総会を乱す「総会屋」と呼ばれる人がいたではないですか。事前に総務がお金をその人に渡しておくというような。

飯田)株主総会を荒らし回ったりしないようにという。ありましたね。

佐々木)それでよく警察に捕まっていたのだけれども、あれも総務部の総会対策の人が出世するという。

飯田)見事に抑え込んだと。

佐々木)社会的な倫理に反している人の方が社内で褒められるという、不思議な構造が日本社会には昔からあるのです。

企業寿命の長い日本 ~その弊害が出ている

佐々木)これだけ社会がオープンになり、昭和の時代も遠い昔に過ぎ去ってしまったにも関わらず、未だに秘密的な企業体質が残っているというのが異常と言えば異常です。

飯田)2020年代に。

佐々木)長い目で見ると、日本の産業界はいい意味でも悪い意味でも、企業寿命が長い。よく例に挙げるのですが、例えばコンピューター業界。1950年代のアメリカのコンピューター企業で、未だに残っているのはIBMだけです。あとはすべて合併、買収、消滅でなくなって移り変わっています。

飯田)IBM以外は。

佐々木)日本の1950年代のコンピューター企業は、富士通、NEC、日立、あとは日本電信電話などがありましたが、未だに残っているのです。従業員にとっては、企業寿命が長いと辞めさせられる心配がないのでいいことなのだけれど、どんな企業でも寿命が長くなると、特殊な企業文化のようなものができてしまうし、新陳代謝も悪くなる。

飯田)企業寿命が長くなると。

佐々木)日本の電機メーカーが2000年代になって凋落したではないですか。あのときも平均年齢が高すぎると言われていました。企業は新陳代謝を高めて、変わっていった方がいいとは言われているのだけれど、そういう弊害の部分が表に出てしまったのではないでしょうか。

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