世界が「三極構造」になりつつあることを予兆するトルコの動き

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日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が8月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。8月18日に行われたウクライナ・ゼレンスキー大統領と国連・グテレス事務総長の会談について解説した。

2022年7月19日、イラン首都テヘランで会談し、握手するロシアのプーチン大統領(右)とトルコのエルドアン大統領(タス=共同) 写真提供:共同通信社

ウクライナのゼレンスキー大統領と国連事務総長が会談

国連のグテレス事務総長は8月18日、ウクライナ西部リビウでゼレンスキー大統領と会談した。ゼレンスキー氏によると、ウクライナからの穀物輸出をめぐる協力継続で合意。またゼレンスキー氏は、ロシアが占拠し軍事拠点化しているヨーロッパ最大級のザポロジエ原発について、国連による安全確保を求めた。

飯田)グテレス・ゼレンスキー両氏と、トルコのエルドアン大統領を交えた三者会談も行ったということです。ロシアによるウクライナ侵略が始まってから、まもなく半年になります。

クリミアにまで戦場が拡大しつつある ~「長期化する戦争の始まり」という新たなフェーズに

秋田)なぜ、ウクライナがここに来てクリミアにまで破壊工作を始めたかについては、いろいろな戦略的な解説があると思います。当初の停戦のめどとして、侵攻前の2月23日の状態に戻せば停戦できるのではないかとみんな思っていましたが、いまはクリミアにまで戦場が広がりつつある。つまり、2014年にロシアがクリミアを併合する前の状態まで戻さないと、ウクライナは停戦に応じない。そしてロシアはそれを認めないということで、長年の戦争の始まりという新たなフェーズに入ったと言えるのではないでしょうか。

飯田)長期化すると。

秋田)長期化するだろうと思います。

ロシアが追い込まれれば小型核を使用する可能性も

秋田)そうすると1つ心配なのは、ロシアが追い込まれたときに小型核を使うのではないかという推測が、現実味を帯びてきてしまうことです。

飯田)小型核をどう使うかに関して、ロシアは前々から研究していると言われています。まずは人のいないところや海上に撃つ。そして炸裂させるところを実際に見せ、脅すと言われていますね。

秋田)そういうことが軍事ドクトリンでも定められている国なので、注意しなければいけないと思います。

世界が三極構造になってきていることを予兆するトルコの動き

秋田)もう1つ、興味深いのはトルコの動きです。トルコは今回のニュースでもあったように、黒海の封鎖を解くため、国連と協力してロシアとウクライナを仲介するという、言わば地域の名手のような動きをしています。

飯田)トルコが。

秋田)ところが蓋を開けてみれば、トルコは北大西洋条約機構(NATO)で欧米の軍事メンバーの1人なのだけれど、プーチン大統領と7月下旬から2回も立て続けに会い、ロシアと経済協力しています。さらには一方で、ウクライナにロシアを攻撃するための軍事ドローンも売っているのですね。

飯田)ウクライナにドローンを入れています。

秋田)トルコは仲介役の名手として動くと同時に、ロシアとエネルギー協力をして、ウクライナにはロシアを攻撃するための軍事ドローンを売っている。なぜこのようなことが可能なのかと言うと、おそらくトルコのような西側と中国・ロシアを両天秤にかけて利益を引き出そうとする国が、これから増えてくるという予兆をトルコは示しているのだと思います。

飯田)トルコの動きが。

秋田)もっと言うと、ウクライナ戦争前、世界は日米欧と中国・ロシアの対立の二極化対立だと思われていました。しかし、ここに来て、対立の間隙を縫うようにトルコ・インド・サウジアラビア・ブラジル・南アフリカといった中立パワーが台頭してきています。つまり、「三極構造」になってきていることをトルコは示しているのだと思います。

米中の対立の間でトルコ・インド・サウジアラビア・ブラジル・南アフリカなどの「中立パワー」が自由に行動する

飯田)世界全体として、どちらの方向に行くのかという意思決定が難しくなってきますね。

秋田)アメリカと中国が圧倒的に強くて二極構造になれば、それは米ソ冷戦のような状況になり、中立パワーの影響は限られてしまう。どちらかに組み込まれてしまう形になりますが、アメリカの影響力が衰えてきて、中国もそこまで大きくないため、両者の対立の間に立っている中立パワーが両天秤を自由に行動できる。

飯田)中立パワーが。

秋田)例えばインドは日米豪印4ヵ国(クアッド)という枠組みで、日本・オーストラリア・アメリカと緊密に協力しています。ところが日米豪がいくら呼びかけても、対ロシア制裁には絶対に追随しません。なぜならロシアとは良好な関係を保ち、ロシアから兵器をたくさん買っているからです。

飯田)ロシア制裁には加わりません。

秋田)インドもロシアの問題では中立な立場に立ち、両方から利益を得ているのです。そのように世界は三極化していると言えると思います。

2022年6月16日、キーウ(キエフ)を訪問したドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領、イタリアのドラギ首相らと並ぶウクライナのゼレンスキー大統領(中央)(ウクライナ・キーウ) AFP=時事 写真提供:時事通信

利益中心の動きに振り回される危険のある中立パワーの国々

飯田)中立パワーの国々がその地域において覇権国的に振舞おうとすると、地域ごとに勝手な行動が増えるのではないかと思うのですが。

秋田)中立パワーは世界のシステムに対して、責任を持つほどの力もなければ、決意もまだありません。インドは対中戦略上、ロシアも大事だし日米豪も大事なのです。

飯田)インドは。

秋田)トルコは昔、オスマン帝国でした。1922年まで600年も続いた帝国だったのです。ですから、再びその時代の栄光を取り戻したいと思っているエルドアン大統領が、四方八方に影響力を行使しています。国益を考えてウクライナにドローンを売りながら、ロシアと仲よくしている。

飯田)自国の国益を考えて。

秋田)中南米は今後、ブラジルから新しい大統領が出てくるのか、ボルソナロ大統領なのかはわかりませんが、ブラジルもアメリカと仲よくするようでいて、実は独自路線を行くようです。世界中が米中の対立だけでなく、中立パワーのそれぞれの利益中心の動きに振り回される危険があるのが心配です。

かつての裁判・検察機能を欠いてしまった国連

飯田)より一層、国連は機能しなくなるのでしょうか?

秋田)2月24日のロシアによる侵略後に国連安全保障理事会が開かれて、ロシアの侵略問題を決議するとき、議長席にロシアが座っていました。

飯田)そうですね。

秋田)そこから見ても、もはや国連は機能しないですね。国連安全保障理事会の常任理事国5ヵ国のうち、中国・ロシアがいて、残りが英米仏ですから。この5ヵ国が一致しなければ何も決議できないので、残念ながら多くは期待できないと思います。

飯田)国連には。

秋田)もちろん、食糧支援や世界保健機構(WHO)などの国連機関はいい仕事をたくさんしていますので、機関としての働きはあるのですが、最も大事な安全保障理事会が唯一、国連で強制力を持つ機関です。ここがなかなか決められない。

飯田)安全保障理事会が。

秋田)国連に警察の役割はできないのですが、検事役はできたはずなのです。国連が決議すれば、検察の検事になります。もしくは裁判を行うように「これは問題だ」と言って執行する。その裁判・検察機能を欠いていると思います。

安倍元総理の目指した「アジア版NATO」の必要性

飯田)警察も検察もいないなかで、どう自分の身を守るかと言うと、自分が強くなるか、まわりの国々や志を同じくする仲のいい国々でまとまるしかない。まさに集団的自衛権の話になりますね。

秋田)「自分が助けて欲しければ、相手が困ったときもある程度助ける」というルールの世界になっていってしまう。

飯田)それをアジアでどう考えるか。ヨーロッパにはNATOという枠組みがあります。アジアではアメリカを中心として、各々が個別につながるところはあるけれど、全体的な枠組みはありません。

秋田)おそらく安倍元首相は自由で開かれたインド太平洋戦略を始めて、日米・米豪・米韓などの同盟国だけではなく、インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)、さらにイギリスやフランスを組み込んで、1つの共同体のようなものを目指したのではないでしょうか。それを中国は「アジア版NATO」と言っています。NATOとは違いますが、アメリカを中心にそれを補う仲間をつくらないとまずいと思って始めたのだと思います。

飯田)その先で憲法などの問題に突き当たるのですね。

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