シンガポールで細胞農業からつくられたチキンナゲットが販売 再注目される「食料安全保障」の現状

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東京大学先端科学技術研究センター特任講師の井形彬が9月7日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。食料安全保障の未来について解説した。

中国のスタートアップ企業、細胞培養肉の試食イベント開催  CellX社がイベント会場で展示した豚肉料理「小酥肉」。(資料写真)中国の細胞培養肉スタートアップ企業「CellX」がこのほど、上海市で細胞培養肉製品の技術実演と試食イベントを開催した。今回試食された豚ひき肉製品の原型は、黒豚の筋細胞と植物性タンパク質を組み合わせたもので、コストが安く、技術的にも比較的成熟している点が特徴で、商品化に最も近い製品形態でもある。イベントではこの他、豚肉のダイスカットやスキャフォールド(足場材)、3Dバイオプリントという3種類の構造化製品の原型も紹介された。(上海=新華社配信)= 配信日: 2021年9月11日 新華社/共同通信イメージズ

ウクライナ情勢により、再びクローズアップされる「食料安全保障」

自民党は8月、「細胞農業によるサステナブル社会推進議員連盟」を開催し、培養肉製造の展望について意見交換を行った。また韓国は政府の国家計画ガイドラインに培養肉を追加し、中国でも習近平政権が食の安全保障を急ぐなど、各国の国家的な食料安全保障にも動きがみられる。

新行)安全保障というと、経済安全保障に注目が集まることも多いと思うのですけれども、食料安全保障はどうなのでしょうか。

井形)昔から「食料安全保障は重要だ」と言われてきたのですが、ロシアによるウクライナ侵攻があり、我々が食べる普通の食料、穀物の価格が高騰してしまい、家畜が食べる飼料の価格も上がっています。さらには、飼料をつくるために必要となる肥料の価格も上がっており、食料安全保障がまたクローズアップされている状態です。

フードテックやアグリテック ~食料と先端技術を掛け合わせる新たな試み

新行)中国でも食料安全保障の強化を急いでいるところで、「黒土保護法」ができました。こういう動きは各国で加速化しているのですか?

井形)気候変動によって干ばつが酷く、食料生産が間に合わないのではないかという危機感が増えています。また世界全体の人口が増えているなかで、動物性たんぱく質と呼ばれている「牛、豚、鶏、魚が足りなくなるのではないか」とも言われています。

新行)動物性たんぱく質が。

井形)そのようななかで、いまなぜ「食料安保」という単語が各国で語られているかというと、食料生産を増やさねばならないという動きと同時に、いまフードテックやアグリテックという新しい技術があります。食料と先端技術を掛け合わせることによって、食料問題が解決できるのではないかという新たな試みが行われています。

細胞農業とは

新行)「細胞農業」という言葉が出てきていますが、どんなものなのでしょうか?

井形)新しい肉や魚やカカオ、場合によっては素材の生産方法です。簡単に言ってしまうと、生きている動物やカカオなどから細胞を取ってきて、その細胞を糖分やアミノ酸が入った水に浸し、バイオリアクターで回す。

新行)バイオリアクターで回すと。

井形)すると肉やカカオができたり、皮ができるというものです。まだ商品化はされていませんが、未来のフードテックとして、食料安全保障に貢献できるのではないかと言われている技術です。

日本での培養肉の現状

新行)いま、日本での培養肉はどうなっているのですか?

井形)日本でも最近になって、いろいろなベンチャー企業がチキンで培養肉をつくったりしています。まだ小さいピースなのですが、「試食してみました」というような話も出始めています。

新行)井形さんはもう食べましたか?

井形)日本ではまだ試食できないのです。培養肉は細胞を増やしているだけなので、同じなのですけれども、つくるプロセスが新しいということで、「本当に安全なのかどうか」を政府が認定しないと食べさせてはいけないことになっています。

新行)日本ではまだ試食できないのですね。

シンガポールでは細胞農業でつくられたチキンナゲットが販売されている

井形)ただし、シンガポールでは既に細胞農業でつくったチキンナゲットが認可されていて、普通に食べられるそうです。

新行)売っているのですか?

井形)売っています。またアメリカでは、近いうちに細胞農業でつくった魚の認可が下りるのではないかと言われています。中東では最近、カタールに大規模な細胞農業食品の工場ができ始めています。売れる見通しがなければ工場を建てないと思うので、中東でも、もしかしたら売られるのかも知れません。

新行)中東でも。

井形)日本では先ほど言われたように、「細胞農業によるサステナブル社会推進議員連盟」が設立されました。

シンガポール、イスラエルがフードテックを推進する必然的な理由

新行)細胞農業や培養肉の技術が進んでいる国は、どのような国なのでしょうか?

井形)シンガポールやイスラエルなど、国土が狭い国がフードテックを頑張って進めています。

新行)国土の狭い国が。

井形)シンガポールは国というより都市ぐらいの狭いところですので、食料自給をしようと思っても土地がないのです。フードテックを使うことによって効率的に食料を生産し、仮に何らかの理由で外国から食料が入らなくなっても、ある程度は自前で生産できるようにしようということです。

新行)自前で食料を生産できるように。

井形)イスラエルは周りが敵国ばかりなので、何かあって(物流を)止められると困るのです。そこで国内で食料を生産するために、細胞農業や昆虫食、植物性の代替肉など、タンパク源としてより効率的に自国内で生産する新たな方法を模索しています。

プラントベース食品(大豆を原材料とした代替肉)を使ったフードテック食品=2021年9月24日午前10時53分、東京都千代田区の中央合同庁舎第8号館 写真提供:産経新聞社

産業育成の点でもフードテックに投資するべき

新行)日本のこれからのフードテックはどうなりますか?

井形)これだけ経済安全保障の重要性が広がっているなかで、経済安保の面で見ても、食料がないと生きられないではないですか。

新行)そうですね。

井形)「半導体を支援します、バッテリーを支援します」というのもわかるのですが、「食料自給率を上げていきましょう」という方向性になって欲しいと思います。フードテックへの投資は食料安保だけでなく、他国でも技術競争になっている分野ですので、日本は産業育成という点でもフードテックに投資する、また人材育成を進めていくことが重要だと思います。

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