春風亭一之輔が語る噺家の“芸”「名人になると、おじいさんなのに花魁が色っぽく聞こえる」

By -  公開:  更新:

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(9月1日放送)に落語家の春風亭一之輔が出演。落語の奥深さについて語った。

春風亭一之輔が語る噺家の“芸”「名人になると、おじいさんなのに花魁が色っぽく聞こえる」

春風亭一之輔

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。8月29日(月)~9月2日(金)のゲストは落語家の春風亭一之輔。4日目は、落語との奥深さについて---

黒木)一之輔師匠。

一之輔)いいですよ、「さん」で。ルールみたいなところがあって、真打ちになると「師匠と呼ばなくては」とか思ってくださる方がいるのですが、ちょっと壁ができるような感じがするではないですか。

黒木)格好いいではないですか。

一之輔)黒木さんの師匠的な存在はどなたなのですか?

黒木)師匠とは言わないですよね、先輩ですかね。たくさんいらっしゃいます。姉のような母のような。かけがえのない先輩です。

一之輔)厳しいことはないですか? 理不尽なこととか。

黒木)宝塚時代は、いま思えば理不尽なこともあったと思います。でも当時は「がむしゃらに努力する!」というときでしたので、理不尽を理不尽だとわかってなかったと思います。

一之輔)落語家もそうですね。「好きな道入ったんだから、もうしょうがないよな」と。昔ながらの世界ですから、理不尽なことを理不尽だなと思っていたらやっていられないところがあります。それも変わっていかなくてはいけないと思いますが。

黒木)今年の「一之輔~三昼夜ファイナル~」。10月28日(金),29(土),30日(日)。昼夜あるわけですね?

一之輔)そうです。

黒木)6回公演ということですね。いつも読売大手町ホールでやられています。

一之輔)このホールができたころから、やらせていただいてまして。500人くらいのキャパシティーで、落語をやる上では、いちばんいいキャパシティーだと思います。

黒木)私もここで舞台の演出をさせていただいたのですけれども、音響がよくて、いい小屋ですよね。

一之輔)劇場や寄席小屋というのは、いろいろな方がそこに上がるたびにできあがっていくみたいなところありますよね。

黒木)なぜ「ファイナル」とつけられたのですか?

一之輔)三昼夜で毎年やらせていただいていますが、今年で一区切りにしようと思うのです。来年、また新たな企画を考えようではないかということで、今年で一区切りです。

黒木)初演ということですが、歩いているうちに、2~3日で話を覚えてしまうと聞きましたけれど。

一之輔)大体散歩しながら、ネタを頭に入れていきます。

黒木)本当に2~3日で覚えてしまうのですか?

一之輔)何となく覚えますね。相手がいない独り語りなんで、多少間違っても嫌な顔する人はないのですよ。

黒木)でも自分が焦るでしょ。

一之輔)何度も何度も繰り返し口に出して喋れば。「セリフが腹に入る」と言いますが、覚えるだけではなくて、その人間が入ってくると。その人が勝手に喋ったり、普段言ってないこと言ったり、つながればいい感じなのです。動き出すことがあるのですよね。落語はそこからだと思うのですよ。

黒木)なるほど。

一之輔)覚えると言っても厳密に……もちろん覚えますが。「あ、入ったな」ってなったときがいちばん楽しいですね。

黒木)セリフを覚えるときも、どのキャラクターのどの声で喋ろうかなとか、いろいろ考えるわけですよね。

一之輔)落語家は声音を変えないんですよ。声色を使わないのですよ。

黒木)でも、女将さんのときなどは変わったように聴こえますけれど。

一之輔)私がやるときは、男の人は「おう、おっかぁ」「なぁにお前さん」って。いま奥さんの方やりました。「おっかぁ、それ取ってくんないか」「あぁ、これかい? お前さん」と言う感じで。声のトーンは変わってないんですけど、言葉尻の柔らかみとか。間とか、表情見えれば目線とか、体の仕草で肩をトンと落とすとか。そういうことで演じ分けていくので、意外と声色は使わないのですよ。

黒木)そうなのですか。

一之輔)逆に声色を使うとね、怒られたりなんかしてね。

黒木)師匠に。

一之輔)「そんなに女、女した声出さなくていい」とか。子どもを演じるときも、「そんなにいやらしく子どもを演じなくていい、もうちょっと普通にやればいいよ」とか。

黒木)でも人物が見えてくるからすごいですね。

一之輔)名人になると、おじいさんがやる女性、花魁が色っぽく聞こえたりすると、喋る芸の奥深さを感じますね。

春風亭一之輔が語る噺家の“芸”「名人になると、おじいさんなのに花魁が色っぽく聞こえる」

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/  落語家

■1978年・千葉県生まれ。
■小学校時代の部活動・落語クラブで「弥次郎」を演じる。
■日本大学芸術学部放送学科入学し、すぐに落語研究会に所属。
■大学卒業後、春風亭一朝に入門。春風亭一朝に師事。
前座名は「朝佐久」。2004年、「一之輔」として二つ目昇進。
■NHK新人演芸大賞落語部門大賞、文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞受賞など、
数々の賞を受賞し、2012年、異例の21人抜きの抜擢で真打昇進。
■2012年、2013年に2年連続して国立演芸場花形演芸大賞の大賞を受賞。
■年間900席もの高座をこなしながら、ラジオ・テレビなど多方面に活躍。
■10月28~30日、落語会・独演会『2022落語一之輔~三昼夜ファイナル~』を開催。

番組情報

黒木瞳のあさナビ

毎週月曜〜金曜 6:41 - 6:47

番組HP

毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

Page top