東京都医師会会長の尾﨑治夫氏が9月8日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。新型コロナ第7波における医療現場の現状について解説した。
新型コロナ感染症の患者だけでなく、一般診療、救急診療のためのベッドも確保しなくてはならない
飯田浩司アナウンサー)新型コロナウイルスの第7波で、病院の状況はどう変わりましたか?
尾﨑)感染者数が増えるに従い、当然、入院される方も増えます。そのために病床が50%ぐらい埋まっている状況で、ひっ迫してしまったという現状があります。
飯田)半分が埋まっている状況で。
尾﨑)一般的な診療や救急など、いろいろな入院患者の方もいらっしゃいますが、これまでは延ばし延ばしに「コロナが収まったら」とお待ちいただいていたのです。しかし、そのような方のなかには、もう限界にきている人もいます。新型コロナ感染者だけでなく、一般診療、救急診療のために病床をある程度確保せざるを得ないという部分もあると思います。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで感染した患者には
尾﨑)もう1つは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設で集団感染が起きたということも、今回の特徴です。
飯田)老人ホームなどでの集団感染が。
尾﨑)40代~60代ぐらいの、少なくとも身の回りのことは入院前からご自分でできる方であれば、入院されても食事やトイレはご自分でできます。
飯田)通常の方であれば。
尾﨑)しかし、特別養護老人ホームや介護老人保健施設で感染した方に関しては、新型コロナ感染症の治療以外に、食事の介助や体位変換、またトイレについても補助が必要になります。感染症としての医療に介護が加わるのです。
飯田)介護が必要な方が入院した場合には。
尾﨑)新型コロナ対応で、通常の状態よりスタッフに2倍ぐらいの労力が掛かっていますが、さらに2倍ぐらいの労力が加わるのです。病床は空いていたとしても、そういう方が入ってくると、看護師の方などそちらに取られるスタッフが増えてしまうわけです。
飯田)新型コロナ病床での対応は、看護師さんが行うことになるわけですものね。
尾﨑)そうです。いわゆる介護施設や慢性期の療養型病院であれば、そのためのスタッフもいますが、新型コロナ患者を受け入れているような病院にはそういうスタッフはいません。
飯田)新型コロナ患者に対応しているような病院には。
尾﨑)そして1度入院していただくと、感染の恐れがなくなってからも、他の病院あるいは施設に移るための調整がスムーズにいかないのです。その影響で回転も悪くなってしまいます。
公立病院の本来のあり方が失われている ~その背景にある日本の医療事情
飯田)かつての医療全体の仕組みとして、通常医療は民間病院を中心に診る。そして公立病院は、そういうことにも対応できるように冗長性を残しながら、感染症など、専門性の高い病気を診るという成り立ちだと聞いたことがあります。ハンドルの遊びのようなものが削られてしまった側面が、ここ20年ぐらいでありましたか?
尾﨑)パンデミックについては、これから何年かごとにくるかも知れませんが、これまで感染症は100年に1度というような特殊なケースでした。
飯田)そうですね。
尾﨑)100年に1度のものに対して常に準備しておくということは、ある意味では無駄なわけです。そういう無駄を許さないようなキツキツの予算で、いまの日本の医療制度は動いているのです。そこを見直さない限り、こういう状況は繰り返し起きてしまいます。あとは、国の司令塔がないということが問題だと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます