ジャーナリストの有本香が9月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。安倍元総理の国葬について解説した。
安倍晋三元内閣総理大臣、9月27日午後「国葬儀」
安倍晋三元内閣総理大臣の国葬儀が、9月27日午後2時から日本武道館で執り行われる。およそ4300人が参列し、このうち海外からは218の国と地域・国際機関などからおよそ700人が参列する見通し。
飯田)生前の映像が流されるなど、さまざまなことが報じられていますけれども、事件から80日あまりが経つのですね。
「6割~7割が反対」という報道は実相を表しているのか
有本)なかには「反対の世論も根強く」というような報道もあります。確かにアンケート調査の結果などを見れば……これは限られている人を対象にしたアンケートなのですけれども、6割~7割が反対であり、疑問の声があるということなのです。しかし、まず1つとして「それが実相なのか」ということです。
飯田)国葬に反対だという意見が。
有本)反対デモに集まっている人数は、主催者発表の数字は別にして、東京でやっていても数百人という規模ですね。
「デジタル献花」は23万人を超える ~増上寺での葬儀には多くの人が見送りに集まる
有本)その一方で、リアルとデジタル上とでは違いますけれども、「デジタル献花」というものを有志で20代~30代の経営者の方々が立ち上げています。8月からきょうの時点までで、もう15万人を超えているのですか?
飯田)そうらしいですね。昨日(26日)の時点で15万人を超えていました(※編集部注:9月27日10時30分時点で23万人以上)。
有本)それから、安倍さんが亡くなった直後のことを思い出して欲しいのですけれども、増上寺で葬儀が行われたあと、棺が出ていくときに私は現場にいましたが、周りの歩道が埋め尽くされるほどの人でした。
飯田)私も取材していましたが、歩道に人が並んでいて、歩道の後ろには公園があるのですが、そこにも大勢の方々が集まっていました。
「安倍元総理を静かに送ろう」と言うことが憚られるような空気が漂う ~反対デモの主催元は特殊な政治性を帯びた人たち
有本)事件現場も1週間くらいは人の列が絶えませんでした。永田町の自民党本部での献花も、いちばん多かった日は6時間くらい並んだということです。
飯田)最終日は大雨が降っているなか、皆さんじっと待っていました。夏休みの最中でしたが、高校生がきちんと制服を着て並んでいました。
有本)それが偽らざる国民の思いだったと考えます。特に亡くなり方があまりにも衝撃的でしたので、みんな駆けつけたいという気持ちがあったのでしょう。
飯田)そうですね。
有本)これが2ヵ月あまりの時間を経て、ずいぶん変わってきた。「安倍元総理を静かに送ろう、悼もう」と言うことが憚られるような空気が漂っています。私はその空気をメディアがつくってしまったと思っています。
飯田)メディアが。
有本)国葬反対デモの主催元は、例えば中核派など、かなり特殊な政治性を帯びた人たちです。中核派は警察白書のなかでは「極左暴力集団」と書かれています。
飯田)そう表現されていますよね。
有本)これは私の思いの問題ではなく、公的文書にそう書いてあるのです。それから、のべ数十人の逮捕者を出した通称「関西生コン」と呼ばれているような組合組織。相当特殊であり、極左的と言っていいのでしょうけれども、そういう政治性を持ったグループが主催しているわけです。それをメディアがあたかも一般的な市民の、自然発生的な声であるかのように煽りすぎたのではないかと思います。
法律的にも問題のない国葬儀
有本)メディアを見ていると、法的根拠うんぬんという話があるではないですか。しかし、これは平成12年の法改正ですよね。
飯田)内閣府設置法。
有本)内閣府設置法によって明確に決められていて、さらにそれを逐条解説している。このポイントを読めば、国の儀式として行われるもの。そのうちの大喪の礼などとは別に、閣議決定によって国の儀式と位置付けられたもの。そのなかの例として、吉田茂元首相の国葬などが行われていると。
飯田)国の儀式として。
有本)今回の国葬儀も、閣議決定で国が行う儀式だと決めることに、法的には何も問題がないわけです。ですから、さまざまな団体が声明を出しているように見えますけれども、この種の法的解釈に関して、いつも政府に対して厳しい意見を突き付ける日弁連は今回、反対声明を出していないですよね。
飯田)声明は出していますが、反対声明ではありません。
有本)そうですね、反対声明ではないのです。
飯田)法律上の解釈をすると、権利の制限が伴うものについては立法措置が必要なのだけれども、ということです。
有本)ですから「国民の権利を制限しないものまで、何もかも法律で決めていないとやってはいけないことにはならない」ということなのです。
飯田)行政権の裁量でもできるし、もちろん法律でつくることもできるけれど。
有本)そうですよね。
違法にはあたらない
飯田)そこを解釈すると、今回は国民の理解を得る努力はしましょう、と。
有本)説明するというね。
飯田)そういうところを日弁連は書いていますけれども。
有本)小言を言っているという範囲ですよ。ただ、反対だと言っているわけではありません。
飯田)「法的根拠はまったくなく、違法なのだ、憲法違反なのだ」というところにはあたらない。
内閣府設置法に基づいて行う国葬儀に問題はない
有本)岸田総理がこの決断をした経緯なのですけれども、安倍元総理が亡くなったのは7月8日です。そして10日に参議院選挙がありました。私の取材の範囲だと、この時点で岸田さんの胸の内としては、国葬を行う方向になっていたと聞いています。ただ、正式な発表まではそれから4日間あるわけです。
飯田)7月14日が正式発表の日でした。
有本)週が明けて、内閣法制局、法の番人の方々に対し、法的に問題がないかきちんと聞いているのです。
飯田)法的に問題がないかどうかを。
有本)そこで、先ほど申し上げた平成12年作成の「内閣府設置法に基づいて行えば問題はない」という意見を受けて、発表するわけです。ですから、これに関して文句をつけても勝ち目はないですし、実際そのようなことを盛り込んだ訴訟も、すべて門前払いにあっているわけではないですか。
飯田)昨日(26日)報道がありましたが、22日に続けて最高裁もこれに関しては「国葬が個々の国民に弔意を表すことや喪に服すことを強制するとは認められない」と。東京地裁の指摘に対し、これを確定させるという形で、全員一致で特別抗告の棄却を結論付けたということです。
弔意を表す人たちに対しての妨害があってはいけない
有本)反対勢力の人たちが言っていることは、1つは弔意の強制だということです。しかし「弔意の強制だ」と大声を上げてデモをやれている時点で、弔意の強制はないということです。
飯田)そうですね。
有本)弔意を強制されるのであれば、デモもシュプレヒコールもできないはずです。ですから自己矛盾を露呈しているな、とも思います。きょう、安倍元総理が亡くなったこの死を静かに悼み、そして送ろうという国民がたくさん献花に訪れますよね。
飯田)そうとう来られるでしょう。
有本)弔意を妨害しようという勢力に関しては、警察は敢然とそれなりの対応をして欲しいと思います。
飯田)弔意を強制しない、内心の自由に踏み込まないという部分で、弔意を表す人たちに対しての。
有本)妨害があってはいけないのですよ。両方公平でないといけないわけです。路上で「反対だ!」と言ってシュプレヒコールをあげる、この自由を認める代わりに、弔意を表そうという人の行動や思いを妨害するようなことは、やはり取り締まらないといけません。
飯田)それこそがリベラルということですね。
有本)ルールのなかでの自由ですので、内心の自由には誰も基本的に踏み込めないわけです。
飯田)まさに憲法に掲げる基本的人権です。
有本)そして、こういうことは国会議員が声をあげて整理するべきです。
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