『アイ・アム まきもと』阿部サダヲ主演 “生と死”との向き合い方について考える

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1078回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、9月30日に公開された『アイ・アム まきもと』と『マイ・ブロークン・マリコ』をご紹介します。

『アイ・アム まきもと』

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映画館で観たい!『アイ・アム まきもと』 ~コミュニケーション下手な男の仕事は、おみおくり係!

独居老人が誰にも看取られることなく、たった1人で亡くなってしまう孤独死。その件数は過去15年間で2倍以上に増加していると言われ、身近な社会問題となっています。そんなシリアスなテーマと根底から向き合った映画が公開されました。

『アイ・アム まきもと』は、ちょっと迷惑な男・牧本が“まき”起こす奇跡の物語。

第70回ヴェネチア国際映画祭で4つの賞を受賞したウベルト・パゾリーニ監督による『おみおくりの作法』をベースにした、笑って泣けるエンターテインメント作品です。

『アイ・アム まきもと』

『アイ・アム まきもと』

『アイ・アム まきもと』のあらすじ

小さな市役所で、人知れず亡くなった人を埋葬する「おみおくり係」として働く牧本壮は、ちょっとばかり頑固で迷惑な存在。

全く空気が読めない、人の話を聞かない、そして、なかなか心を開かない。故人の思いを大切にするあまり、世間のルールよりも自分の考えを優先してしまい、周囲に迷惑ばかりかけていた。

ある日、新たに着任した市民福祉局局長・小野口は、業務の合理化を推し進めるため、「おみおくり係」の廃止を決定。身寄りもなく他界した老人・蕪木の埋葬が、牧本にとって“最後の仕事”となった。

牧本は蕪木の身寄りを探し出すため、彼の友人や知人を訪ね歩くうちに、娘の塔子の元へたどり着く。そして彼女と交流を重ねていくうちに、牧本自身に少しずつ変化が生まれ始め……。

『アイ・アム まきもと』

『アイ・アム まきもと』

『アイ・アム まきもと』のみどころ

主人公の牧本壮役は、出演作ごとにガラリと違った顔をみせる阿部サダヲ。

今作で演じたのは、風変わりな言動が鼻につくものの、“人の死”にかけては大切に思い弔う市役所職員。“愛すべき迷惑男”を、人情味豊かに体現しています。

そして牧本と出会う蕪木の娘・津森塔子役に満島ひかり。自身の感情を内に秘めた繊細な役どころを、確かな存在感で演じ切りました。

共演には宇崎竜童、松下洸平、松尾スズキ、宮沢りえ、國村隼といった豪華な面々が集結。阿部サダヲ演じる牧本と、それぞれがどのような化学反応を生み出しているか。実力派俳優たちとの競演は必見ですよ。

『アイ・アム まきもと』

『アイ・アム まきもと』

とてもシリアスなテーマを扱いながらも、コミカルでミステリアスな風合いを秘めた本作。主人公の奮闘ぶりを観ているうちに、「人はいかに生き、死んでいくか」という命題について考えさせられてしまう人も多いことでしょう。

クスッと笑えて、ホロリと涙する。この秋、日本中を温かな優しさで包み込んでくれる感動作です。

『マイ・ブロークン・マリコ』

『マイ・ブロークン・マリコ』

コチラも映画館で観たい!『マイ・ブロークン・マリコ』 ~旅をする、物言わぬ“遺骨”と共に……

平庫ワカの同名コミックを、タナダユキ監督のメガホンによって実写映画化した『マイ・ブロークン・マリコ』。親友のマリコを虐待し続けた父親から遺骨を強奪し、最初で最後の2人旅に出る。

主人公のシイノトモヨを演じた永野芽郁は清純派のイメージを封印し、泥臭く人間味溢れるキャラクターを熱演。親友を失った怒りや悲しみや喪失感といった、人間の内側にうごめく感情を見事に表現しています。

疾走感あふれるストーリーに魂を揺さぶられる、衝撃の1作。

『アイ・アム まきもと』

『アイ・アム まきもと』

『アイ・アム まきもと』

2022年9月30日(金)から全国ロードショー
出演:阿部サダヲ、満島ひかり、宇崎竜童、松下洸平、でんでん、松尾スズキ、坪倉由幸(我が家)、宮沢りえ、國村隼
監督:水田伸生
脚本:倉持裕
原作:Uberto Pasolini “STILL LIFE”
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(C)2022 映画『アイ・アム まきもと』製作委員会
公式サイト https://www.iammakimoto.jp/

『マイ・ブロークン・マリコ』

『マイ・ブロークン・マリコ』

『マイ・ブロークン・マリコ』

2022年9月30日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
出演:永野芽郁、奈緒、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊

監督:タナダユキ
脚本:向井康介、タナダユキ
原作:平庫ワカ「マイ・ブロークン・マリコ」(BRIDGE COMICS / KADOKAWA刊)
音楽:加藤久貴
エンディングテーマ:「生きのばし」Theピーズ (P) 2003 King Record Co., Ltd.
配給:ハピネットファントム・スタジオ/KADOKAWA
(C)2022 映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会
公式サイト https://happinet-phantom.com/mariko/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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