支持率低下の岸田総理が狙う「2023年5月以降に解散」の根拠

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ジャーナリストの鈴木哲夫が10月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民党が了承した衆院小選挙区を「10増10減」する公職選挙法改正案について解説した。

支持率低下の岸田総理が狙う「2023年5月以降に解散」の根拠

2022年10月12日、日経リスキリングサミット~出典:首相官邸HP(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202210/12reskillingsummit.html)

自由民主党、衆院小選挙区「10増10減」改正案を了承

自由民主党は10月12日の選挙制度調査会と総務部会の合同会議で、衆議院小選挙区を「10増10減」する公職選挙法改正案を了承した。14日の党総務会で党内の事前審査手続きを終える見通しで、今国会での成立を目指す。

飯田)逢沢選挙制度調査会長は、党内に新たな選挙制度のあり方を検討する協議の場を設けると表明しています。「10増10減」となると、地方が減るという辺りも話題になっていましたけれども。

鈴木)東京などの都市部は選挙区が増え、地方は少し減っていくということです。表向きの理屈というのも変ですが、地方の声が届きにくくなるのではないかという話だけれども、いま自民党議員は地方が特に強いでしょう。

自民党地盤の内輪喧嘩のような地区も

鈴木)そういうところで何人か当選しているのだけれど、それを1つ減らさなければいけないということになると、「どちらにするのか」というせめぎ合いになる。典型的なのが山口県で、ここは1つ減らします。山口県では亡くなった安倍さんと林外務大臣がライバル関係にありましたが、ここは安倍家、林家の安倍晋太郎さんと林義郎さんの時代から権力闘争を繰り広げてきたのです。お二方がいらっしゃったときに、私は選挙区を取材しました。

飯田)当時は中選挙区制。

鈴木)すごかったですよ。「どちらが1位になるか」という闘いです。絶対に2人とも通るのです。どちらが1位になるかということで、財界から何からすべてを二分して激しい選挙を行っていた。そんな安倍家、林家が「1つになるからこうしよう」と簡単にはいかないですよね。ある種の自民党地盤の内輪喧嘩と言ってもいいと思います。そういうもので揉めているところもある。

ポイントは東京 ~他の党がどう絡んでくるか

鈴木)でも、俯瞰してみると東京がポイントだと思います。東京はこの形でいくと、いまの25議席から5議席増えるのです。

飯田)25議席から30議席になる。「10増10減」の10増の部分、半分は東京なのですね。

鈴木)そうなのです。しかし、それだけで「5議席増えるのだからチャンスが」ということにはなりません。例えば公明党は、東京12区はこれまでは太田さん、岡本さんが出ていました。それから、菅原一秀さんがいます。

飯田)経産大臣も務めていた。

鈴木)彼などが復活を狙って、そういうところに入り込みたいという可能性もある。共産党も東京は力を入れているところです。

飯田)共産党も。

鈴木)自公の間でもいろいろ揉めるだろうし、野党もどういう形で絡んでくるかわからない。そういうこともあって、東京も大変なことになると思います。

難しい候補者調整

鈴木)自民党は、少し前まで国葬儀や旧統一教会の問題が大変で、支持率も下がっている。そのなかで自民党の選対委員長である森山さんに「大変ですね」と言ったら、「いやいや、それどころではない」と。「10増10減で大変だ」と言われました。選対委員長からすると、これを受け入れたあとにどう候補者調整をしていくかは、相当大変だと思います。

2025年の参院選の前に解散し、「選挙後に総裁選再選」という岸田総理のシナリオ

飯田)少し前までは、10増10減が適用される選挙がいつ行われるのかということで、解散は先なのではないかという予想でした。「黄金の3年間があるだろう」と言われていたのですが、鈴木さんは前々から「そうではない」と。もっと前に解散があるのではないかということですが。

鈴木)何のために解散するのかということです。解散権を持っているのは岸田さんですが、2年後(2024年)には自民党の総裁選挙があるのです。

飯田)2025年の参院選より先に、総裁任期がくるのですね。

鈴木)3年後に参議院選挙があります。衆議院の任期は、そのままいくと3年後になります。2年後の秋に総裁任期がきて、総裁選があるわけです。岸田さんがそこで再選するためにどうするかという話です。いちばん使えるカードが解散ですよ。

支持率低下の岸田総理が狙う「2023年5月以降に解散」の根拠

2022年10月11日、会議のまとめを行う岸田総理~出典:首相官邸HP(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202210/11kankourikkoku.html)

解散すれば岸田総理を降ろそうという人も自民党のために一生懸命選挙せざるを得ない ~選挙に勝てば信任したということで総裁選でも岸田氏再選に

鈴木)解散すれば岸田さんを降ろそうという人たちがいても、自民党のために一生懸命選挙をやらざるを得ないでしょう。

飯田)党内で揉めていても、まずは選挙だという。

鈴木)例えば、河野さんが次の総裁を狙っていても、解散されたら河野さんは一生懸命自民党のために選挙を行うわけです。結果、自民党が勝ったら皮肉にも岸田さんが信任されたことになるわけです。だから総裁選でも岸田さんが再選するという、こんなに使えるカードはありません。

飯田)岸田さんにとって。

鈴木)岸田さんは再選するために2年後の総裁選に向けて、いいタイミングで解散し、そこそこに勝って、そして信任という流れをつくるでしょう。そうなると、解散は2年後の年明けから秋の総裁選までの間、どこで打ってもおかしくない。

飯田)2024年になってから。

ここまで支持率が低迷する岸田総理に「岸田降ろし」の流れが

鈴木)そういうシナリオだったのですが、ここまで支持率が下がってしまいました。

飯田)調査によっては3割を切っています。

鈴木)国葬にしても、旧統一教会問題にしても、「時間が経てば少し落ち着くだろう」と岸田派の議員も言っていたのです。しかし国葬が終わっても全然収まらない。世論は厳しく、支持率が下がっていく。こうなると、自民党内政局で「岸田降ろし」が始まります。つまり、岸田さんの顔では選挙ができないわけです。国会運営もうまくいかず、岸田降ろしという流れになっていきますよね。

岸田降ろしの流れのなか、支持率を上げるタイミングは2023年の「G7広島サミット」 ~このあと、最短で2023年5月以降に解散の可能性が

鈴木)そうすると、岸田さんには解散させないという動きが出てくる。岸田さんとしても、支持率低迷のなかでもう1回再選するためには、解散カードで勝負するしかない。

飯田)総裁選で再選するためには。

鈴木)岸田さんがそこそこに勝つには、いまの低い支持率が少しでも上向きになったら、そこで解散し、そこそこに勝てば信任ということになりますよね。

飯田)そこで勝てば。

鈴木)自公で過半数を獲れば、降ろす理由はなくなるわけです。少しでも岸田さんの支持率が上がるタイミングをみる。そうすると、いつだと思いますか?

飯田)ここ最近だと、なかなかチャンスがなさそうですよね。

鈴木)しばらくはありません。大きなポイントは来年(2023年)5月の広島サミットだと思います。

飯田)G7サミット。

鈴木)まさに広島で行われます。世界に対して岸田さんは「核なき世界」のため、最大のアピールができるのです。そうすると、少し支持率が……。

飯田)上がって。

鈴木)そうなれば、解散の可能性があるということです。

飯田)G7でアピールして。

鈴木)最短で2023年5月以降という話が、いま永田町で出始めています。

飯田)5月というのは、4月前に予算が上がるから。

鈴木)統一地方選挙もあります。一連の流れのなかで解散する。しかし、「岸田さんには解散させない」という動きも出てくるでしょう。そういう意味でも、来年は自民党内政局が予想できます。

飯田)いつ通常国会を召集して、どこまでが会期で、延長をどうするかという日程の話なども具体的に出てくる。

鈴木)広島サミットのあとに大きく動く可能性があります。岸田さんが総裁選再選を狙うためには、その辺りで解散カードを切る可能性がいま出てきているということです。この支持率低迷のなかで。そう見ていいと思います。

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