東京大学公共政策大学院教授・政治学者の鈴木一人が10月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。電話による初の米英首脳会談について解説した。
米英首脳が初の電話会談
飯田)バイデン米大統領とスナク英首相の電話会談が10月25日に行われました。首相就任への祝意を伝え、まずはウクライナに侵攻するロシアや、台湾への軍事的圧力を強める中国に対抗するための連携強化を確認したということです。イギリスの新政権ついては、どうご覧になりますか?
鈴木)前政権であるトラス政権が極めて短かったので、イギリスの政治は不安定な状態にあります。特に保守党の人気が下がっていて、いま総選挙をやったら大変なことになるでしょう。今後のスナク新首相の対応がどうなるかは、みどころだと思います。
まずは探りを入れたバイデン大統領
鈴木)イギリス自体が不安定になると、欧米関係全体の調子がおかしくなっていきます。また、これまではボリス・ジョンソン元首相の大きな存在感があり、ウクライナに対しても積極的に関与していましたし、中国に対してもアグレッシブな体制を取ってきました。おそらくバイデン大統領は、ソフトなスナクさんが「どういう立場になるのか」ということを、まずは確認したのだと思います。
飯田)どういう立場を取るのか。
鈴木)彼はこれまで財務大臣であり、もともと投資銀行に務めていた経済通ではあるのですが、外交分野では実績もなく、どういう方針なのかは明らかになっていません。これからイギリスが安定した米英関係を築くためにも、まずは探りを入れるという感じだったのだと思います。
基本的にはジョンソン元首相時代の路線を継承 ~中東との関係は軌道修正する可能性も
飯田)スナクさんの外交姿勢は、まだ明らかになっていないところが多いですよね。
鈴木)初のインド系イギリス人の首相ということで、いろいろな外国からの期待、特に旧植民地からの期待もあるのですが、おそらく彼自身は非常にコンサバティブ的、伝統的なイギリスの保守系であり、エリートですよね。
飯田)そのようですね。
鈴木)突拍子もないことをやる人ではありません。トラス前首相もスナク首相も選挙を経ていない首相なので、基本的にはジョンソン元首相時代に行った選挙のマニフェストに縛られる恰好になります。
飯田)ジョンソン元首相時代の。
鈴木)そういう意味では、これまでの強硬な対中路線やウクライナ支援などは、基本的に継承していくのだと思います。
飯田)継承する。
鈴木)これから問題になってくるのは経済面です。イギリスは「生活費危機」と言われている物価高、燃料高などにどう折り合いをつけていくのか。その辺りで、これまでとは違う外交政策を行う可能性があります。特に中東との関係は、軌道修正していく可能性もあるのではないでしょうか。
アジア太平洋地域におけるコミットメントは継続
飯田)イギリスは特に最近、アジアに対するコミットメントを強めてきました。その辺りも基本的には変わらないということですか?
鈴木)イギリスがEUから離脱したことによって、ヨーロッパ大陸との距離を置く。同時に「グローバルブリテン」と言いますが、イギリスが世界における存在感を高めていく。そのなかの1つの焦点は、インド太平洋なのです。
飯田)存在感を高めるためにも。
鈴木)インド太平洋路線には、これまで以上にコミットメントすると思います。先ほど言ったように、スナク首相は経済問題に関心が強いので、イギリスのCPTPPへの申請など、アジア諸国との自由貿易を進めることをまずは考えるのだと思います。アジア太平洋地域におけるコミットメントは、継続して行われるのではないでしょうか。
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