あけの語りびと

「まさか日の丸を背負うとは」 事故から初めてアンプティサッカーに触れた際の「ある驚き」

By -  公開:  更新:

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

「まさか日の丸を背負うとは」 事故から初めてアンプティサッカーに触れた際の「ある驚き」

ゴールを目指し攻め上がる高橋良和さん(写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会)

11月に入ると盛り上がるのが、サッカーワールドカップ・カタール大会です。1次リーグE組の日本は、ドイツ、コスタリカ、スペインと対戦。ドイツ、スペインは優勝経験国ですから、初戦となるドイツ戦をどう戦うかがカギになるでしょう。

さて、同じサッカーで今年(2022年)ワールドカップが開かれていたことをご存知でしょうか?

「まさか日の丸を背負うとは」 事故から初めてアンプティサッカーに触れた際の「ある驚き」

コロンビアの選手を相手にゴールを守る高橋さん(写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会)

9月30日に開幕した「アンプティサッカーワールドカップ2022トルコ大会」。各大陸の予選を勝ち抜いた24ヵ国が参加し、熱戦が繰り広げられました。日本はBグループで、何とドイツ、コロンビア、メキシコと対戦。結果の前に、アンプティサッカーについてご紹介します。

アンプティとは、「手足の切断手術を受けた人」という意味があります。事故や病気などで腕や脚の「切断障がい」を負った人のサッカーです。1980年代にアメリカで生まれたアンプティサッカーは、負傷兵のリハビリに採用されたことから、世界に普及していきました。

「まさか日の丸を背負うとは」 事故から初めてアンプティサッカーに触れた際の「ある驚き」

コロンビア戦に勝利し喜びの声を上げる日本代表(写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会)

7人制で、片脚を失った6人がフィールドプレーヤー、片腕を失った1人がゴールキーパーを務めます。フィールドプレーヤーは両腕に「クラッチ」と呼ばれる杖を固定します。

クラッチでボールに触れるとハンドになり、転倒したままボールを蹴るとファール。オフサイドはありません。25分ハーフで、選手交代は何回でも可能です。ピッチは60m×40m、8人制の少年サッカーよりやや小さめで、ゴールは少年サッカー用のものを使います。

現在国内に11のクラブチームがあり、100名ほどの登録選手がいます。今回は、40歳を越えても頑張り続ける注目の選手をご紹介します。

「まさか日の丸を背負うとは」 事故から初めてアンプティサッカーに触れた際の「ある驚き」

コロンビア戦に挑む日本代表スターティングメンバー(右から4人目が高橋さん) 写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

東京・福生市に住む高橋良和さんは、43歳。食品を配送するトラックドライバーだった6年前の2016年、配送を終えた帰りの国道で、自損事故を起こしてしまいます。気がつくと運転席はめちゃくちゃで、足が挟まって抜け出せません。

朦朧とする意識のなか、遠くから救急車のサイレンが聞こえてきました。運ばれた病院で緊急手術を受けますが、左脚は異様に黒ずんだまま……。担当医からこう言われます。

「脚を残しても普通の生活は無理です。ふくらはぎから下を切断して義足をつける方がいいと思います。不便はありますが、スポーツもできますし……」

「まさか日の丸を背負うとは」 事故から初めてアンプティサッカーに触れた際の「ある驚き」

ジャンピングボレーシュートを狙う高橋さん(写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会)

切断手術を受けたものの、「左脚を失い、これからどうなるんだろう。2人の子どももまだ小さいし……」という不安を抱く高橋さんを、妻の知恵さんが励ましたそうです。

「あなた、ネットでこんなサッカーを見つけたのよ。どう? 退院したらやってみなさいよ。あなたサッカー好きでしょう?」

高橋さんは『キャプテン翼』世代で、サッカーが大好きな少年でした。中学のころにJリーグが開幕し、Jリーガーに憧れたこともありました。

「アンプティサッカー? しょせん障害者スポーツだろう」と、あまり気乗りしなかった高橋さん。退院後、軽い気持ちでクラブチームを訪ね、リハビリのつもりで練習に参加してみました。

「まさか日の丸を背負うとは」 事故から初めてアンプティサッカーに触れた際の「ある驚き」

試合後の日本選手団 応援団が一緒に(写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会)

「驚きましたね。クラッチをうまく使って、芝生の上を激走しているんです。私も一緒に走ってみたら、ふかふかの芝生の上を走るのが気持ちよくて……パスを受けたボールを蹴ったつもりが、軸になる左足がないので空振りして派手に転ぶんですが、それでも青空の下、汗をかくのが最高の気分でした」

脚を切断した2016年に、東京のクラブチーム「FCアウボラーダ」に入団。2年後にワールドカップがメキシコで開かれることを知った高橋さんは、これを目標に練習に励みますが、日本代表には選ばれませんでした。

「年齢的にこれが最後かなと思っていたので、ショックは大きかったですね。でも、妻や息子、娘の応援があって、まだ諦めてはいけないと思ったんです」

「まさか日の丸を背負うとは」 事故から初めてアンプティサッカーに触れた際の「ある驚き」

順位決定戦のアメリカ戦でボールを蹴る高橋さん(写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会)

その後、国内大会での活躍が認められ、2022年の今年、ワールドカップの代表選手に選ばれました。「アンプティサッカーワールドカップ2022」で、日本は初戦のドイツに3-0で勝利! 続くコロンビアにも3-1で勝ち、波に乗った日本は、メキシコにも2-0で勝って3連勝します。

日本はグループステージを1位で通過。決勝トーナメントではタンザニアに敗れてしまいましたが、順位決定トーナメントに臨み、日本は11位で終えました。

「キャプテン翼に憧れた自分が、まさか日の丸を背負うとは思いませんでした。4年後のワールドカップですか? もちろん、このままで終わるつもりはありません!」

「まさか日の丸を背負うとは」 事故から初めてアンプティサッカーに触れた際の「ある驚き」

第11回 日本アンプティサッカー選手権大会2022(写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会)

■『第11回 日本アンプティサッカー選手権大会2022』
※高橋さんも出場

大会日程:11月19日~20日
会場:富士通スタジアム川崎

■日本アンプティサッカー協会
http://j-afa.jp

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

Page top