米中間選挙「民主党がどのくらい負けるか」がポイント

By -  公開:  更新:

外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が11月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。11月8日に行われる米連邦議会の中間選挙について解説した。

米中間選挙「民主党がどのくらい負けるか」がポイント

共同宣言に署名するバイデン米大統領(左)とイスラエルのラピド首相(イスラエル・エルサレム) AFP=時事 写真提供:時事通信

バイデン大統領がワシントンで演説

11月8日に行われる米連邦議会の中間選挙を前に、バイデン大統領は2日夜にワシントンで演説し、選挙での敗北を受け入れようとしない候補によってアメリカが「カオスへの道」を進みかねないと警告した。これに対して野党・共和党は大統領が「世論を分断し、批判を避けようとしている」と反論した。

飯田)中間選挙は、大統領選と大統領選の真ん中の時期に行われます。

宮家)英語では「ミッドターム」と言いますけれど、中間選挙では必ず現職の大統領が負けるのです。

飯田)負けるのですね。

中間選挙で民主党が「どのくらい負けるか」 ~地方を含めてよく見なければならない

宮家)新しく当選した大統領が中間選挙を行うと、だいたい(議席が)減るのですよね。それから、当たり前ですが外交などはイシューではない。

飯田)外交は違いますか。

宮家)基本的には国内経済です。そういうこともあって、今回は民主党が負けることがわかっていても、「どれくらい負けるか」がポイントなのです。もちろん下院議員や、連邦上院議員の知事選があるのだけれども、それ以外の地方議会も含めて、地方で仮に共和党が知事も議会も全部獲ってしまうとするではないですか。そうすると、共和党に有利な州法をつくれるわけです。

飯田)共和党に有利な。

宮家)問題は共和党の劣化が起きていて、先ほど話があった通り、選挙結果に文句をつけるではないですか。連邦の選挙結果について州レベルで「最終的に判断するのは自分たちだ」などと言う人もアメリカにはいるわけです。それを言い出したら連邦も何もなくなってしまうので、これはいずれ大問題になると思います。そういう意味でも、ただ単に連邦の上院、下院だけでなく、地方も含めて選挙の結果をよく見なければならないというのが、まず第一点だと思います。

飯田)かつて、それこそアル・ゴアさんとジョージ・W・ブッシュさんの時代のフロリダ戦では、最終的に票の数え直しがありました。

宮家)あれほど僅差でしたからね。でも、確かに今のアメリカには「投票が盗まれた」とか「詐欺だ」など、いろいろ言う人もいるわけです。

飯田)この間の大統領選でもありました。

宮家)日本の選挙であれば、選挙管理委員会があって、きちんと住民票に基づいて何ヵ月住んでいるかどうか調べた上で、投票所入場券を送ってくるわけではないですか。

選挙結果に文句を言う共和党 ~日本に比べると大雑把なアメリカの選挙

宮家)アメリカにはそんなものはありません。まず誰でも投票できるわけではないのです。投票する権利はあるけれど、有権者として登録しないと投票できないわけです。

飯田)自分で登録しに行かなければならないのですね。

宮家)そうです。この点で既に一定の人たちが不利になる、もしくは有利になるわけです。日本の選挙に比べたら実に大雑把なものですよ。でも、アメリカって国はそれを乗り越えて連邦をつくってきたはずなのですけれど、最近のように共和党が劣化してしまって、選挙の結果自体に文句を言い始めたら、それは持ちませんよね。その意味では、非常に嫌な予感がしています。

飯田)あれだけ社会保障番号が普及しているのですから、それを基に連絡できないものなのですかね。

宮家)日本より難しいのではないでしょうか。私もソーシャル・セキュリティ・ナンバーをアメリカの大学の学生のときに持っていましたが、なくても生きていけるでしょう。住民票がないわけだから、本籍も何も、そうした制度がありませんからね。

飯田)本籍もない。

宮家)そういう意味ではね。

飯田)各州によって選挙制度がありますからね。

宮家)各州で生活に密着する法律があります。勿論、ろ連邦法との並列ですけれども。要するに、アメリカって大雑把な国なのですよ。

飯田)番号があるといっても、おいそれと選挙に使えるわけではないのですね。

宮家)ソーシャル・セキュリティ・ナンバーで投票したという話は聞かないですね。あるのかも知れませんが、私は記憶にないです。それでいて、結果がどうなるかはだいたい見えてしまっているのですよ。

上院も下院も厳しいバイデン政権

宮家)先ほども言った通り、新たな大統領は中間選挙で必ず負けるのです。一時はバイデンさんの支持率が上がって「うまくいくかな」とも思ったのですが、最近はまた下がってきています。やはり問題は経済ですよね。

飯田)経済。

宮家)そういう意味では、彼のいまの状況は少し悪い。下手をすると下院も上院もみんな負けてしまうかも知れません。下院はもちろん負けるのだけれど、上院はギリギリいくかなと思ったのですが、難しそうですね。

飯田)現状、上院は50対50で。

宮家)副大統領の一票でやっていますからね。これがなくなったら大変ですよ。

宮家)先ほども言った通り、新たな大統領は中間選挙で必ず負けるのです。一時はバイデンさんの支持率が上がって「うまくいくかな」とも思ったのですが、最近はまた下がってきています。やはり問題は経済ですよね。

飯田)経済。

宮家)そういう意味では、彼のいまの状況は少し悪い。下手をすると下院も上院もみんな負けてしまうかも知れません。下院はもちろん負けるのだけれど、上院はギリギリいくかなと思ったのですが、難しそうですね。

飯田)現状、上院は50対50で。

宮家)副大統領の一票でやっていますからね。これがなくなったら大変ですよ。

米中間選挙「民主党がどのくらい負けるか」がポイント

米連邦議会議事堂前に集結したドナルド・トランプ大統領支持者=2021年1月6日、アメリカ・ワシントン 写真提供:時事通信

国民を理解した経済政策を行っていないバイデン大統領 ~インフレ問題をどうするのか

宮家)バイデン大統領が争点にしようとしているのは、まず中絶の問題です。

飯田)人工妊娠中絶の問題。

宮家)最高裁が昔の判決をひっくり返したわけですから、バイデンさんは民主党支持者にアピールできるのではないかと思っています。それから次が移民の問題です。

飯田)移民の問題。

宮家)移民に優しくしたり厳しくしたり、バイデン政権はいろいろ上手くやろうとしている。そして最後がガソリン価格です。バイデンさんは「値段が下がった」などと言っているのですが、これが決定打になるかどうかは疑問です。それよりも、もう少し大きい争点があるのですからね。

飯田)大きな争点。

宮家)それはインフレです。生活費全般が値上がりしているのです。そもそも、ひと昔前ガソリンは1ガロンあたり5ドルを超えてしまったわけですから。アメリカには大金持ちもいますが、貧困層だっています。貧困層の人からすると、1ガロン=5ドルになったら生活はたまらないでしょう。

飯田)そうですよね。

宮家)そんな状況で、どうもバイデンさんには危機感が足りないのではないかと思います。国民は「インフレをどうしてくれるのだ」「この経済的な苦しみをどうしてくれるのだ」と言っているのに、バイデンさんは「いや、値段はきちんと下がった。私はうまくやっている」などと言っているわけです。選挙戦術としては定石通りなのですけれど、こういうことをやっていると、「経済的に国民生活のことをわかってくれていない」という形で人心が離れていってしまう。結局、民主党の票が伸びないことにもなりかねないだろうなと思います。

サウジへの増産交渉もうまくいかず、シェールオイルの増産もできず、袋小路に

飯田)ガソリン価格やエネルギー価格を下げるために、サウジアラビアに圧力をかけて「増産しろ」と言ったら、逆に減産してきて怒り心頭というような……。

宮家)あれだけサウジアラビアに厳しい態度を取ったから、サウジも切れたわけですよ。サウジに「増産してくれ」と言ったところで、簡単に「はい」などという状況ではもちろんない。

飯田)だからと言って、シェールオイルの増産もしない。

宮家)シェールオイル生産もやりたくないと。増産すればある程度は値段が下がるはずなのですが、環境問題があるから、それができない。

飯田)党内左派に対して。

宮家)党内に関係者がいるでしょうからね。そうなると袋小路ではないですか。

飯田)本当にそんな感じになってしまいますよね。

共和党がまともな政党ならばいいのだけれど

宮家)共和党がまともな政党で、まともな外交を行い、経済もしっかりやるのであればいいのだけれど、いまは違うでしょう。「選挙制度は信用できない。投票は盗まれた。本当は自分たちが勝ったんだ」などと訳のわからないことを言う人が増えてしまって、共和党の中道の人たちは黙っているか、ワシントンからいなくなっているかのどちらかです。「これでいいのだろうか」とつくづく思います。

アメリカの民主主義がさらに先へ進んで行くのか

飯田)中間選挙で注目すべき州はどこでしょうか?

宮家)ジョージア州、オハイオ州、アリゾナ州、ペンシルベニア州など、いくつかの州が話題になっていますが、どこも接戦です。

飯田)いずれも大統領選では注目州だと言われたところですね。

宮家)どうも最近、民主党の元気がないようですね。民主主義だから、政権交代が起きるのはいいのだけれども、いまのような形でやっていて、本当にアメリカの民主主義がその先へ進んでいくのかと。どんどん壊れていくのではないかと、すごく心配ですね。

ペロシ下院議長への襲撃事件

宮家)さらに私が気になるのは、ペロシさんの自宅への襲撃事件です。

飯田)下院議長への。

宮家)襲撃は、確信犯でしょう。嫌な予感がしますよね。こうした暴力はどこかで止めないといけないのだけれど、止めるだけの政治家がいないのではないでしょうか。

飯田)暴力によって口を塞ごうとする動きは、民主主義にあってはならないですよね。

宮家)一部のアメリカ人はそういう暴力が得意だから、心配なのです。

番組情報

飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

番組HP

忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。

Page top