元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が11月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。都立大学教授で社会学者の宮台真司氏が男に襲われた事件について解説した。
宮台真司さん、首など切られ重傷 ~動機等は不明
東京都立大学の南大沢キャンパスで11月29日午後、都立大学教授で社会学者の宮台真司さん(63歳)が男に後ろから頭を殴られた上、首付近を刃物のようなもので数ヵ所切りつけられた。捜査関係者によると宮台さんは病院へ運ばれ、命に別条はないが、重傷だという。
飯田)男は20~30代とみられ、身長は約180センチ。短髪のガッチリした体型で、黒っぽいジャンパーとズボン姿だったそうです。逃走中なので動機等々はまだわからない(※編集部注:2022年11月30日午前7時30分時点の報道)ということですが、衝撃的な事件ですね。
大学の自治を侵害することになるので警察は入れない
松井)宮台さんの言論については、いろいろな評価があると思います。私も意見は一致しませんが、私も大学の教員です。大学はそもそも警察を入れないわけです。
飯田)自治というものがあるから。
松井)大学の自治ということで。例外的に昔、東大紛争のときに機動隊の突入を要請したことがありますが、大学の歴史では黒歴史と言われているような状態です。
飯田)東大紛争のとき。
松井)そういう意味では、セキュリティはせいぜい警備職員の方が門番のようにいらっしゃるだけですし、これは国際的なスタンダードだと思います。
飯田)国際的な。
授業の時間割から教員のスケジュールは明らかに ~背景や動機を究明して対応するべき
松井)宮台さんに限らず、大学教員の授業の時間割は明らかになっているわけです。何曜日の何限に行けば、どこの教室に誰が来るということが全部わかる。
飯田)そうですよね。
松井)宮台さんの言論に対して、もし何らかの不満を抱いて襲ったのだとしたら、それは言論や大学教育に対する挑戦です。きちんと捜査し、背景や動機を究明して、社会が対応しなければいけないと思います。
飯田)対応するべきです。
松井)だからと言って、大学に警官を常駐させるというのも不健全ですし、そうではない方法を考えつつ、「こういうことがあってはいけない」と社会全体が受け止めなければならないと思います。宮台さんの早期のご回復を願いますし、意見は違っても、引き続き言論活動にもう一度力を入れていただきたいと思います。
背景にある社会問題を捉え直す必要がある
飯田)言論の自由について、今年(2022年)の1年間は意識させられました。これがテロ行為かはまだわかりませんが、そういうものを社会としてきちんと批判しなければいけないと、改めて思います。
松井)テロという言葉は簡単に使うべきではないのでしょうけれども、宮台さんは後ろから頭部を殴られたということです。また、安倍元首相は政治家として、民主主義の根幹である選挙の途中に後方から撃たれました。
飯田)あってはならないことです。
松井)宮台さんの場合は、大学教員としてキャンパスで授業を行い、授業のあとに歩いておられたところを襲われたようです。大学教員としての本務を果たしているときに、後ろから殴られて刺されるという。命に別条はないということですが、それでも重傷ですし、刺しどころが悪かったら命を落としていた危険もあるわけです。
飯田)少し違えば。
松井)こういう凶悪犯罪を未然に防止するためには、社会に何が必要かを考えなければいけない。同時に、何らかの背景があるなら、その背景にある社会問題を我々がどう捉え直していくのかが重要でしょう。
飯田)背景にある社会問題を。
松井)全体的に日本経済は停滞していて、アジアの途上国も含め、1人あたりの所得が日本を追い抜いている。韓国ですら日本より高くなりました。そういう状況のなかで、社会全体にストレスが溜まっているかも知れない。今回の問題の背景がそうであるかはわかりません。しかし、安倍元首相の襲撃事件もそうですが、社会全体に何らかの歪みのようなものがあるとしたら、それを取り除いて未来の展望を築き上げなければいけません。
飯田)何らかの歪みがあるのならば。
松井)戦前の暗い時代があり、テロがたくさん起こった時代もありましたが、そこには背景があるのです。宮台さんは社会学者であり、そういうことを分析する方々であったわけですが、それを我々社会がもう一度受け止めて、根本に遡る必要があるのではないでしょうか。
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