経済アナリストのジョセフ・クラフトが12月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。12月13日、14日に発表されるFOMCメンバーによる「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」について解説した。
株価が小幅な値動き、今週発表されるアメリカの経済指標が影響か
12月12日の東京株式市場で日経平均株価は値を下げ、先週末と比べ、58円68銭安い27842円33銭だった。日経平均の下げ幅は一時160円を超えたが、その後縮小する展開となった。今週はアメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)、さらに日本時間13日夜には、アメリカの消費者物価指数(CPI)の発表もある。経済の重要な指標の発表を次々に控えているため、その内容を見極めようと売買を控えるムードもあった。
どこまで政策金利を上げていくのか、どれぐらい長く引き締めを維持するのか ~この高さと長さの2つの指標が発表される
飯田)この物価が出てくると、米連邦準備制度理事会(FRB)がどう動くかも、また少し見えてくる感じでしょうか?
クラフト)ある程度参考になって動くと思いますが、概ねFOMCの方向は決まっていると思います。FOMCに関して、ポイントは3つあります。
飯田)3つ。
クラフト)まず、利上げ幅です。おそらくいままで0.75%引き上げていたのを、0.5%に減速させる。これは概ね市場が織り込んでいます。
飯田)利上げは減速。
クラフト)それよりも大事なのは今回、3ヵ月おきに発表される「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」が出ます。FOMCの構成メンバーが2023年、2024年、2025年と予想する政策金利……つまり「どこまで政策金利を上げていくのか、どれぐらい長く引き締めを維持するのか」。この「高さ」と「長さ」の2つを示す注目指標が13日、14日ごろに出るのです。
FOMCは利下げをするつもりなのか、そうではないのか ~利上げ幅は5.25%、インフレ圧力が強ければ5.5%までいくことも
飯田)FOMCに参加しているメンバーが各々出す。
クラフト)金利がどこまで上がるのか予想するのです。市場の織り込みとFEDメンバーの予想を照らし合わせ、どこまでズレがあるのかということが見受けられる。
飯田)ズレがどこまであるのか。
クラフト)FOMCが市場の感触よりもタカ派なのか、ハト派なのか。2023年秋には利下げを予想していますが、FOMCは利下げするつもりなのか、そうではないのか。このような重要な指標です。おそらく0.5%よりも注目されると思います。
飯田)ピークがどのぐらいになるのか。6%までいくのか、あるいはもっと上でピークを折り返すのかという。
クラフト)私個人は5.25%、もしインフレ圧力が強ければ、最大5.5%までいくのではないかと思いますし、2023年度は利下げはないと予想しています。
飯田)その辺り、週末にイエレン財務長官がCBSの番組「60ミニッツ」のインタビューに答えて、「2023年末までにインフレ率はかなり低くなるだろう」と語っていました。イエレン氏はかなりハト派的な発言なのでしょうか?
クラフト)彼女はもともとハト派なのですが、コンセンサスは「インフレは落ち着いてくる」ということです。問題は、2%にならないとFEDは政策を変えていけないので、果たして2%まで下がるかどうかが疑問です。
飯田)2%にならないと政策を変えられない。
クラフト)おそらく4%台は大いにあり得る。下手をしたら3%かも知れません。ただ、ターゲットの2%にいくかどうかはわかりません。
利上げ幅を緩めるタイミング ~どこまで政策金利を上げるのか、いつまで引き締め期間を維持するか
クラフト)3つ目のポイントは、パウエル議長の記者会見です。パウエル議長が11月30日に講演し、「12月には0.5%まで下げる可能性がある」というところに着目したのですが、その後、パウエル議長はもっと大事なことを言っています。「利上げ幅を緩めるタイミングは、どこまで政策金利を上げるのか(高さ)、いつまで引き締め期間を維持するのか(長さ)に比べると、はるかに重要でない」と発言しているのです。
飯田)はるかに重要でない?
クラフト)市場がいま注目している0.5%ではなく、いわゆるドットチャート、どこまで上げるか、いつまで続けるか、ということの方が重要だと言っているのです。
飯田)高さと長さが重要。
クラフト)果たしてパウエル議長は市場に対し、「君たちは違うぞ」と言うのか、それともあまり混乱をきたしたくないので黙っているのか。その辺りのコメントや姿勢にも注目です。
引き締めている割には株価が高い
飯田)株価の水準などを見ながら、どこまで加熱しているのかを見極めていく感じなのでしょうか?
クラフト)私が聞いている限りでは、FOMCに近いワシントンの知人によると、FOMCは引き締めている割には株価が非常に高い。思っているより落ちていないことに少し違和感があるようです。もう少し資産が下がっていかないとインフレも下がらない。賃金も高いので、「その辺りの感触をどこまでパウエル議長が市場に伝えるのか」ということも1つの焦点だと思います。
需要が冷えない限り、インフレのペースも緩やかで長く維持しなければならない
飯田)ここまで経済や株式が強いのは、アメリカは需要の部分がまだまだ冷やされていないということですか?
クラフト)おっしゃる通りです。需要が冷えない限り、インフレの減速ペースも緩やかになります。そうすると、より長く維持しなければいけないというジレンマがあります。ただ、株価が大きく下落するのは問題なので、バランスが難しい。どこまで踏み込むのかが注目ポイントです。
飯田)アメリカ経済全体で考えたら、景気の冷やし玉として、税金を少し上げるのは政治的に難しいのでしょうか?
クラフト)難しいですね。ですので、財政的にはあまり動いていません。どちらかと言えば金融で何とかしようという。どこの国も同じですよね。
飯田)なるほど。確かにそうですね。
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