一般社団法人・日本視覚障がい者美容協会(JBB)代表の佐藤優子氏が12月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。視覚障害者へ向けたおしゃれのサポート活動について語った。
目の不自由な方の「身だしなみやおしゃれ全般」を美容面からサポート
新行市佳アナウンサー)「一般社団法人・日本視覚障がい者美容協会(JBB)」は、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?
佐藤)私はもともとネイリストだったのですが、視覚障害者の方にネイルをしていくにあたり、ネイルの施術時間はデザインによっては2時間~3時間と長いので、いろいろなお話やニーズを聞くのです。
新行)その施術時間に。
佐藤)「ネイルもありがたいのだけれど、実はメイクや服の組み合わせなど、そもそもの部分が不便」という声をたくさん聞きます。会社に行くときに、女性であれば朝、メイクをして行きたいと思いますよね。
新行)女性であればどなたでも。
佐藤)全盲の方などは鏡を見ることができないので、「きょうは口紅がはみ出していないかな」ということなどを、自分で確認できないのです。
新行)全盲の方は。
佐藤)メイクをはじめ、「必要な部分をサポートして欲しい」という声が多くあります。あとは、洋服を買いに行ったときに組み合わせが難しいので、マネキンのコーディネートを一式買ってしまうとか。
新行)なるほど。
佐藤)「自分で見て確認できないのですよ」という声を聞いて、目の不自由な方の身だしなみや、おしゃれ全般を美容の部分でサポートする活動をしています。
音声プラットフォーム「Voicy」で「音で読めるファッション雑誌」という番組を配信
新行)メイクや服の組み合わせ、また洋服を買いに行くときなどは、どのようなサポートをされているのですか?
佐藤)まず1つが情報発信の部分です。
新行)情報発信。
佐藤)「音で読めるファッション雑誌」という番組を、「Voicy(ボイシー)」というラジオのような音声だけのメディアで配信しています。ファッション雑誌は画像で説明している部分が多いので。
新行)そうですよね。
佐藤)視覚障害者の方に向けた、音訳ボランティアの方がいらっしゃって、小説などを読んでもらうことができるのですが、ファッション雑誌などを読むことはなかったのです。
洋服の素材や形、色などの基礎知識を伝える
佐藤)「音で読めるファッション雑誌」により、基礎知識になる部分を伝えることで、「いまはこういうトレンドが流行っているんだな」とか、「こういう組み合わせや素材感がトレンドなんだな」ということがわかるのです。
新行)基礎知識の部分を伝えることで。
佐藤)「赤と緑の服」と聞くと、少し奇抜だなと思うかも知れませんが、そこに「クリスマス」というコンセプトが乗った途端に……。
新行)どういう素材のどういう形で、どういう感じの色なのかを、店員さんにも伝えられるということですね。
佐藤)そうなのです。そういうベースの知識を伝えるような活動をしています。
テレビ電話でメイクの仕方を教える ~眉毛の左右のバランスを見るなど
佐藤)メイクの部分では、テレビ電話でメイクの仕方を教えたりします。朝の出勤前に「眉毛の左右のバランスを見てもらえますか?」というように。
新行)JBBのスタッフの方が電話でつないで見るのですか?
佐藤)人数がいないので、予約を取らせていただいています。
「Voicy」で聴く「音で読めるファッション雑誌」の内容
新行)実際にVoicyで配信されている「音で読めるファッション雑誌」を私も聴いてみました。頻繁に更新されるのですが、宝島社から出版されている『素敵なあの人』1月号の内容を伝えている回を聴いてみました。
飯田)『素敵なあの人』。
新行)表紙について解説しているパートでは、「トップスは冬にしては明るい色、パステルパープルでクルーネックの長袖。柔らかそうな薄手のニットで、丈はお尻が隠れるくらい。胸には明るい黄緑色でロゴがプリントされています。パンツは白で、ストレートな形のコーデュロイ素材なので、真っ白なのだけれどもあたたかみのある印象です」と説明していました。
飯田)「NHK紅白歌合戦」をラジオで聴いているみたいですね。
新行)確かに、そうですよね。実際に聴いてみることで、どういう色合わせがおしゃれなのか、流行っているのか、また、どんな素材がこの季節に合っているのかという情報を知ることができる。その情報を持っていれば、お店へ行ったときに店員さんに自分が本当に欲しいものや、求めていることをより具体的に伝えられるのです。
飯田)なるほど。
新行)買い物の選択肢も広がってきます。
お店の方からは「点字メニューがない」「段差がある」という相談をされる ~声をかけて誘導できれば問題ない
新行)ネイルサロンを経営している方や美容師さんから、「視覚に障害のある方が来店されたとき、どう説明したらいいですか?」というような相談を受けることはないのですか?
佐藤)たくさんあります。
新行)たくさんあるのですね。
佐藤)健常者の方が疑問に思っていることと、視覚障害を持った当事者の方が疑問に思っていることには、かなりズレがあります。
新行)どういうズレがありますか?
佐藤)サービスをする側の方が不安に思っていることは、例えば「点字のメニューがないのですけれど、大丈夫ですか?」とか、「うちは点字のメニューがないので受け入れができないと思うのですよね」などということを心配している方が多いのです。
新行)点字のメニューですか。
佐藤)「そこじゃないんだけれどな!」という感じです。
新行)「点字がなければ、視覚障害のある方への対応はしてはいけない」くらいに思っていますよね。
佐藤)「大変失礼なことにあたってしまう」と思われているのですね。または、「うちのお店は段差があるので無理です」など。
新行)危ないから。
佐藤)視覚障害者の方は、見えないだけで身体は元気な方が多いのです。「お声がけして正しい誘導ができれば、段差やスロープがあっても大丈夫ですよ」とお伝えしています。
目が不自由な方の全員が点字を読めるわけではない
飯田)弱視の方や、後天的に視覚障害を持った方に話を聞くと、「自分たちも点字はわからないですよ」と言う人もいますね。
新行)点字というのは、先天的に目が不自由な方は読める方も多いのですけれど、全員が点字を読めるかと言うと、必ずしもそうではありません。佐藤さんは点字のメニューや段差のような設備を変えることではなく、「どうしたらいいですか?」と相談を寄せられたときは、言葉で伝える「表現の仕方について」レクチャーすることの方が多いということです。色や形やシチュエーション、例えば「会社につけていっても大丈夫なデザインですよ」と言うなど、どういう説明をしたらより伝わるかといった部分をお伝えするとおっしゃっていました。
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