日本が「反撃能力」を持つことは「アメリカと一緒に戦う」ということ

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が1月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米ワシントンで行われたオースティン国防長官と浜田防衛大臣の会談について解説した。

日本が「反撃能力」を持つことは「アメリカと一緒に戦う」ということ

2022年5月24日、バイデン大統領との写真撮影~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202205/24quad.html)

日米防衛相が会談

浜田防衛大臣は日本時間1月13日未明、米ワシントン郊外の国防総省でオースティン国防長官と会談した。そのなかで反撃能力(敵基地攻撃能力)を含む日本の防衛力強化に関し「日米同盟の役割、任務、能力に関する集中的な議論を速やかに開始したい」と述べた。

宮家)これは短いコメントですが、反撃能力を含む議論ができるようになったのですから、とても重要なコメントだと思います。これまでは2プラス2においても、役割、任務、能力の議論はしていたのです。Roles and Missions、役割と任務ですよね。この議論は一昔前だと専守防衛や、日本は矛ではなく盾になるのだ、防衛に徹するのだとされていました。でもそうすると、日米の役割・任務は別であって、一緒ではなくなるわけです。

日本が反撃能力を持つということはアメリカと一緒に戦うということ

宮家)しかし、ここで考えなければいけないのは、反撃能力を持てば当然、役割や任務も変わってくることです。そして日米は一緒に戦うようになるのです。みんな「ゾッ」とするかも知れませんが。

飯田)一緒に戦うことになる。

宮家)その能力を高めない限り、周辺の変な国は現状を変えようとして武力を使うのです。そうなったときに、日米が共同で動き、しかも反撃能力を共同で拡大するとなれば、(相手の国は)「では、やっぱり、やめておこうか」という気になる。これが抑止なのです。

日米が共同で反撃能力を拡大すれば、それが抑止力になる ~大きな意味があった「安全保障3文書」の改定

飯田)日米が共同で反撃能力を拡大すれば。

宮家)だからこんなに短いコメントで「役割、任務に関する集中的な議論を速やかに開始する」とさらっと言いましたが、要するにやるということですよ。意識が変わりました。

飯田)変わった。

宮家)どこの国でもやっていることですが、それができなかったのが、いままでの日米同盟関係だったわけです。その意味では最近、国家安全保障の3文書が改定されましたが、本当に大きな意味があったと思います。

ワシントンで流行るウォーゲーム

飯田)最近、いろいろなところでシンクタンクによるシミュレーションが行われています。この間も「戦略国際問題研究所(CSIS)」というアメリカのシンクタンクが、中国は失敗するかも知れないけれど、アメリカや日本にも多大なる犠牲が出るかも知れない。その覚悟も必要だという提言がありました。

宮家)彼らが初めて行ったわけではありません。私の知る限り、日本でも少し増えてきましたが、ワシントンではこの種のウォーゲームが昨年あたりから流行しています。

飯田)ウォーゲームが。

宮家)大小のシンクタンク、もちろんアメリカ国防総省では、毎年のように行っているわけです。CSISがすごいのではなく、アメリカのワシントンの人たちが、台湾問題も含めて、インド太平洋地域に本当に関心を持つようになったなとつくづく思いました。

飯田)インド太平洋地域に。

宮家)新アメリカ安全保障センター(CNAS)が以前、詳細なウォーゲームを公開していました。日本ではほとんど報じられなかったのですが、NBCのMeet the Pressという番組と一緒に実施し、テレビでも紹介されました。面白いのは、そのゲームの関係者としてアジア関係者がほとんどいなかったことです。

飯田)いないのですか。

宮家)ゲームコントローラーやゲームをつくっている人たちは、すべて軍事の専門家で、しかもグローバルな専門家ばかり。もしくはヨーロッパの専門家です。

飯田)なるほど。

宮家)アメリカの国防関係、安全保障関係の主流は必ずしもアジアではありませんが、その主流の人たちが今や台湾や中国に関心を持つようになり、本格的なウォーゲームがつくられるようになったということです。

アメリカのアジア太平洋地域に対する関心が高まっている

宮家)それまではアジア関係者だけのこじんまりとしたものだったけれど、いまは流行りになっている。アメリカのアジア太平洋地域に対する関心が、どれだけ高まっているかを証明する1つの事象だと思います。時代が変わってしまったのです。CSISがやったことは、その流れの1つであって、今や目新しいものではありません。日本でももっとやらなければいけないと思います。

日本では事態認定に時間が掛かってしまう

飯田)夏くらいに大規模なものが行われ、日本の政治家の方々も大統領役や総理大臣役を担っていました。あのときの報道をみると、「この事態をどう認定するか」というようなところでスタックしてしまったと。

宮家)日本の議論は、事態認定で半分以上の時間が掛かってしまうのです。アメリカではそこを考えなくていいから、もっと自由なウォーゲームになります。この違いはある程度仕方がないでしょう。

飯田)ある程度は。

宮家)しかし、下手をすると事態認定しているうちに戦争が終わってしまいますよね。

飯田)ウクライナの例を見ても、電撃的に動いていますものね。

宮家)サイバーで始まるわけですから、そんなことをやっている暇はないのです。

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