東京オートサロン ここにも環境対応の波が
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「報道部畑中デスクの独り言」(第315回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、東京オートサロンについて---
今月(1月)13日~15日に千葉県の幕張メッセで東京オートサロンが開かれ、私も足を運びました。主催者発表では3日間で17万9434人が来場し、一般公開の日は人でごった返していました。
東京オートサロンはチューニングカー、カスタムカーの祭典と言われますが、そのルーツは1983年の「東京エキサイティングカーショー」にさかのぼります。今年(2023年)で40年の歴史を持ちますが、当初は改造車=暴走族のイメージから、アングラな扱い。1月中旬という寒いなかでの開催となっているのも、比較的、会場の確保が容易な時期だったからと言われています。
しかし、奇想天外なアイデアと過激さが注目され、2年に一度開かれる秋の東京モーターショーとともに、日本国内での自動車の祭典として、認知度が年々高まっていきました。
当初、参加を見合わせていた完成車メーカーも、昨今は新型車やコンセプトモデル、レース車両のお披露目が定着しています。
会場に入ると、響く重低音のBGMが高揚感を誘います。エンジンを改造した旧車、車中泊もできるよう豪華な内装が設えられたワンボックスカー、軽自動車のキャンパー、キラキラの輝く外装にドレスアップされたクルマ……クルマでここまでやるのかと毎回驚かされます。これがこのイベントの真骨頂と言えるでしょう。
日産自動車のブースでは、2024年版のGT-Rがお披露目。騒音規制をクリアし、まだまだ日産はGT-Rをあきらめないという気概を感じました。また、いわゆる「ストリートチューナー」のブースではスカイライン、フェアレディZの新旧モデルをベースにしたチューニングカーが目立ちます。「ハコスカ」と呼ばれた3代目スカイラインのボディを、カーボン素材で再現したものも展示されていました。
さらに、日産京都自動車大学校のブースでは、現行のフェアレディZをSUVに改造した車両が試作されていました。背が高いオレンジのZにびっくりしましたが、正式には「フェアレディX」、ベースはかつて日本でも販売されていた「ムラーノ」です。やはり日産というメーカーにはクルマ好きを熱くさせる何かがあるようです。
一方、最も印象的だったのは、カスタムカーの祭典にもカーボン・ニュートラル、環境対応の波が押し寄せているということでした。会場にはアメリカのEV=電気自動車、テスラのロードスターレース仕様の姿が。
また、中国のEV大手、BYDの車両も展示されていました。日本での販売も今年始まるそうです。最新のトレンドをまとったデザインで専門家の評価も高く、日本のメーカーにとっては大きな脅威となる可能性があります。
トヨタ自動車「GAZOO Racing」のブースでは、往年の名車「AE86(車種名はカローラ・レビン、スプリンター・トレノ)」の水素エンジン化、EV化された車両が展示されていました。ボンネットが開けられ、その「心臓部」がお目見えすると、たちまち黒山の人だかりに。
関係者によれば、まずは客の反応をみながら、今後の展開を考えていくとのこと。旧車が現代の技術でよみがえる……これは歴史ある自動車メーカーにしかできないことだと思います。
新型コロナウイルス感染症の影響で、2年前はオンラインのみの開催。昨年(2022年)は来場者制限で再開。そして、今年は約18万人の来場者を集めました。クルマ好きの他、子どもを連れた家族の姿もありました。
若干気になったのは、以前に比べて雰囲気がお行儀よくなっていたということ。新型コロナの影響もあるでしょうし、昨今の電動化や環境対応で、「走り」を追い求めるクルマの肩身が狭くなったこともあるでしょう。また、完成車メーカーの出展が定着したことは、決して悪いことではないのですが、これもお行儀よくなった一因ではないかと感じます。
今年は東京モーターショーが異業種、スタートアップ企業も巻き込んだ「ジャパン・モビリティショー」と大きく衣替えします。モーターショーとの差がなくなっていけば、その存在意義を問われることになります。すみ分けも重要になってくるでしょう。
メーカーの考えるカスタマイズと、サードパーティ、ストリートチューナーといった「街のクルマ屋さん」が織りなすドレスアップには明確な違いがあります。オートサロンは、なかでも後者の破天荒で自由闊達なアイデアの競演が醍醐味だと思います。
そして、カーボン・ニュートラルがどんなに進もうとも、「クルマを愛でる」「クルマを楽しむ」という気持ちが、このイベントの原点であって欲しいと願っています。(了)
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