あけの語りびと

「俺、本当に腹を切ったの?」 宇崎竜童が「入院したからこそ」気付けた発見

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

「俺、本当に腹を切ったの?」 宇崎竜童が「入院したからこそ」気付けた発見

写真/金井尭子

宇崎竜童さん、1946年生まれの77歳。1973年にダウン・タウン・ブギウギ・バンドを結成してデビューし、「スモーキン・ブギ」「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」などのヒットに恵まれます。

奥様の作詞家・阿木燿子さんとのコンビで、山口百恵さんに「横須賀ストーリー」をはじめ、数々の楽曲を提供したことでもおなじみです。

「俺、本当に腹を切ったの?」 宇崎竜童が「入院したからこそ」気付けた発見

松田優作さん(似顔絵)

もちろん、阿木さん・宇崎さんが曲を提供したのは山口百恵さんだけではありません。松田優作さん、原田芳雄さん、桑名正博さんをはじめとした俳優やミュージシャンの方にも楽曲を提供されてきました。しかし、残念ながら若くして黄泉路へと旅立ってしまった方も多くいらっしゃいます。

そんなある日、宇崎さんは奥様の阿木燿子さんから、1つの提案を受けました。

「思えばいままで私たちは、親しい方やリスペクトしているアーチストの方々が亡くなられたとき、その死を悼んでレクイエムを書いてきたよね。それに、楽曲を提供させていただいた方が旅立たれたケースもそれなりの数になるし。それらの曲を思い出として、私たちの心のなかに秘めておくだけではなく、もう一度、たくさんの方に聴いていただくのはどうかしら。音楽でしか結べない絆があると思うの。『届け』と熱く心に念じて演奏すれば、天国にだって、宇宙にだって届くと思うの。要は音楽の可能性を信じるということよね」

「俺、本当に腹を切ったの?」 宇崎竜童が「入院したからこそ」気付けた発見

桑名正博さん(似顔絵)

時は2020年、コロナの嵐が吹き荒れ、コンサートをはじめ、さまざまなイベントが中止に追い込まれていました。長年、宇崎さんを支えているスタッフのなかにも、仕事が大きく減ってしまった方がいたり、宇崎さんなじみの飲食店も閉店を余儀なくされた場所が多くありました。

「音楽家なら、いまこそ歌をライブで届けよう!」

そう思った宇崎さんは立ち上がります。コンサートのサブタイトルとして銘打ったのは、「風のオマージュ」。いまは亡き音楽仲間への思いとともに、コロナ禍で様変わりしてしまった日本のエンターテインメント界に風穴を開けよう……そんな決意も込めました。

「俺、本当に腹を切ったの?」 宇崎竜童が「入院したからこそ」気付けた発見

原田芳雄さん(似顔絵)

最初は2021年4月の公演を目指しましたが、緊急事態宣言が出されて延期。仕切り直して1年後の開催が決まり、入念な準備が進められていきました。ところが、念願の公演があと2週間あまりに迫った2022年3月下旬、宇崎竜童さんは突然の腹痛に襲われました。

病院を訪ねた宇崎さんは、お医者さんから「入院」を告げられます。何と、「腸に穴が開いている」とのこと。宇崎さんは、思わず「何を言ってるの!?」と声を上げました。

「俺、本当に腹を切ったの?」 宇崎竜童が「入院したからこそ」気付けた発見

根津甚八さん(似顔絵)

このとき宇崎さんは、お腹は痛いものの、話すことも歩くことも問題なくできました。でも、お医者さんは「一刻も早く手術しないと明日はどうなるかわからない」と言います。「2週間後に歌を歌う仕事があるんです」と話しても、治療方針は覆りませんでした。宇崎さんは意を決して、小腸をおよそ40センチ切る手術を受けました。

術後3日間は何も食べられず、点滴のみの入院生活。しかし、宇崎さんはここから驚異的な回復力を見せます。早くも1週間後には、お医者さんも退院を認めてくれました。宇崎さんもできるだけ体を安静にして体力回復に努めます。そんな宇崎さんのライブへの情熱を感じ、スタッフの皆さんも奇跡を信じて待ちました。

「俺、本当に腹を切ったの?」 宇崎竜童が「入院したからこそ」気付けた発見

写真/金井尭子

公演2日前、宇崎さんはようやくリハーサルに臨むことが叶いました。

「ああ、声が出る。『俺、ホントに腹を切ったの?』ってくらい、声が出る!」

2022年4月7日、東京国際フォーラム・ホールC。宇崎竜童さんは約2時間半の公演を無事に成し遂げます。公演後は、お客様からも「またやって!」という声が続々と寄せられました。宇崎さんも、次こそ体調を万全にして歌を届けたいという気持ちが膨らんでいきました。

「俺、本当に腹を切ったの?」 宇崎竜童が「入院したからこそ」気付けた発見

写真/金井尭子

そして4月14日(金)には、今年(2023年)も東京国際フォーラム・ホールCで「阿木燿子プロデュース 宇崎竜童コンサート・風のオマージュ2023」が開催されます。もちろん体調はバッチリ! ただ、宇崎さんは去年のライブを振り返って、思わぬ発見があったと言います。

「去年は4キロ体重が落ちて、お腹に力が入りにくい状態でした。でもそのおかげで、いい意味で力が抜け、心地よく歌が聴こえていたんです。逆に『いままでこんなに力を入れて歌っていたのか』と反省させられました」

先日からバンドのメンバーと一緒にリハーサルも始まりました。たくさん歌い込んで、歌を体に沁み込ませたら、コンサートでは「頑張りすぎずに肩の力を抜いて歌いたい」と話す宇崎竜童さん。この春も東京・丸の内に、風のように心地いい歌声が響きわたります。

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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