安全保障アナリストで慶應義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮が3月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。戦争に活用される民生品について解説した。
先祖返りして戦場でも民生品が活用されている
飯田)3Dプリンターなども含めて、戦場では民生品が活用されているのですか?
部谷)ある意味では先祖返りしています。昔の中世のように「民生品か軍事か」、また「新しいものか古いものか」という垣根を超え、AIやスマートフォンなどをいろいろと組み合わせて戦争の道具に使われている感じです。
飯田)先祖返りなのですね。あるものを使うということですか?
部谷)戦国時代、鉄砲鍛冶には「軍用火縄銃」という認識などなかったではないですか。
飯田)確かに。
部谷)鉄砲鍛冶は鉄砲もつくるし、鍋ややかん、鋤や鍬もつくります。いまは「デュアルユース」と言われますが、軍事技術ができたのは最近の話なのです。
飯田)特化するものができたのは。
部谷)19世紀になってできたのですが、またもとに戻ろうとしているのです。
昔のように少量生産で多種多様な軍事品をつくるようになった
飯田)当時、大規模・大量生産で専門的なものが一気につくれたから、そうなったのですか?
部谷)それがまた昔のように、ある意味で家内制手工業、少量生産で多種多様なものをつくる方向に変わってきました。ウクライナの戦場を見ても、みんな違う装備を持っているではないですか。
飯田)確かにそうですね。しかも外国から入ってきた人も含めて、かなり混成部隊的になっています。
部谷)まるで中世ですよね。
飯田)傭兵の世界ということですか?
部谷)「新しい中世」という言葉がありますけれども。
戦場で銃のパーツや止血帯などを3Dプリンターでつくる ~つくるためのデータをみんなでアップデートして共有する
飯田)3Dプリンターなども現場で使うのですか?
部谷)アフガニスタン戦争でも、アメリカ軍は現場で銃のパーツをつくっていました。ウクライナの場合、チェコやポーランドなどの前線近くを含め、みんながネットワークにつながり、「こういう部品をつくろう」とSlackなどでデータを共有するのです。止血帯、それにドローンや爆弾の部品などが多いですね。
飯田)止血帯。
部谷)負傷したときに血を止めるバンドのプラスチック部分など、データをチャットツールのSlackで共有する。
飯田)設計図だけをやり取りして。
部谷)設計図を東欧とウクライナ全体でやり取りし、絶えずアップデートしていくのです。
飯田)戦場で必要なものを現場からフィードアップして、直接アップデートできる。いままでならレビューを書き、設計図をやり直すような段階を踏んでいましたが。
部谷)軍事産業の人が「修正してあげましょう」というようなことをやっていました。
世界中からソフトウェアの共有サービスに、ドローンで大砲を観測するようなアプリなどの情報をあげる
部谷)ドローンも一緒です。プログラマーやエンジニアの方々がソフトウェアを上げるような、ソフト開発者向けの「GitHub」という共有サービスがあります。そこで「こんなアプリをつくったよ」などと情報をあげるのです。
飯田)アプリの設計図が不法にあげられたという報道があります。ツイッターの設計図もありましたね。
部谷)よく#Stand with Ukraineというようなハッシュタグをつけて、ドローンで大砲を観測するようなアプリや、それを自動的に修正するアプリをつくった。またはサイバーアタックするアプリをつくるなど、みんなが腕試しに来ているのです。
飯田)プログラマーの卵のような人が。
「あの人がつくったアプリがウクライナのドローンで活躍している」などという宣伝になる
部谷)いちばんの宣伝文句ではないですか。「あの人がつくったアプリがウクライナのドローンで活躍している」などというのは。日本では「戦争のアプリをつくって仕事が舞い込む」という状況は理解しづらいかも知れませんが、世界中の人がやっているのです。
飯田)それで報酬を得られるのですか?
部谷)宣伝になりますよね。うまくいけば仕事が入ります。そのために戦争の支援をするのです。「趣味でやっているのだろうな」というような人もいますが。
日本人も支援するなど、ウクライナでの戦争に直接参加している ~SNSによって海外の戦争に参加できる時代に
飯田)それだけ直接、戦場とつながることができる。
部谷)サイバーアタックもそうですけれど、世界中の人が戦争に参加できる時代になった。我々もそうですよね。SNSを通じて。
飯田)支援をしたり。
部谷)逆にそうすることで参加してしまっているわけです。日本がこれだけ海外の戦争に参加したことはなかったと思います。
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