キャスターの辛坊治郎が4月17日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。岸田文雄首相の演説直前に爆発物が投げ込まれた事件で、威力業務妨害の疑いで現行犯逮捕された木村隆二容疑者(24)が今後、殺人未遂罪に問われる可能性の有無について解説した。
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和歌山岸田首相襲撃事件 威力業務妨害容疑で現行犯逮捕 県警和歌山西署から送検される木村隆二容疑者(左央)=2023年4月17日午前8時41分、和歌山市 写真提供:産経新聞社
和歌山市で岸田文雄首相の演説直前に爆発物が投げ込まれた事件で、威力業務妨害の疑いで現行犯逮捕された木村隆二容疑者の身柄が17日、検察庁に送られた。木村容疑者は、これまでの取り調べに対し黙秘を続けているという。
辛坊)威力業務妨害罪は最高で懲役3年です。今回の事件を巡っては、「殺人未遂罪ではないのか」と考える人もいるでしょう。しかし、殺人未遂罪に問うためには、必要な要件が2つあります。木村隆二容疑者は黙秘を続けていますが、1つには木村容疑者が殺思を認めなければなりません。もう1つには、爆発物に殺傷能力がなければなりません。これまでのところ、爆発物の殺傷能力は相当低かったとみられているようです。
今回の事件で使用された爆発物は「パイプ爆弾」である可能性が浮上しています。パイプ爆弾は、中が高圧になって破裂する際に周りの金属をバラバラに飛ばすことによって大きな殺傷力を生み出します。ところが、現場に残された爆発物は本体が破壊されていません。そのため、殺傷能力が相当低かったのではないかとみられています。
刑法学の概念の1つに「不能犯」という言葉があります。犯罪を意図した行為にもかかわらず、その行為の性質から犯罪の結果を生じさせることが不可能であり、処罰されないことを意味します。このため、今回の事件で使用された爆発物に殺傷能力がなければ、木村容疑者に殺意があったとしても、殺人未遂罪に問われない可能性があります。ですから、検察は今後、爆発物の殺傷能力を調べることになるでしょう。
仮に私が木村容疑者に弁護士としてつくならば、「爆発物を爆破させ、大きな音を出して選挙演説を妨害したかっただけだ」と主張するでしょう。そうすれば、爆発物や火薬に関連した法律には触れるかもしれませんが、少なくとも殺人未遂罪ではなく威力業務妨害罪に該当させることができる可能性があるからです。