今後、ChatGPTを「使いこなす」か「使いこなさないか」で出てくる「差」

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ジャーナリストの佐々木俊尚と慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が4月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ChatGPTについて解説した。

今後、ChatGPTを「使いこなす」か「使いこなさないか」で出てくる「差」

※画像はイメージです

横須賀市が全国初「ChatGPT」を試験導入

横須賀市は4月18日、人工知能を使った対話型ソフト「ChatGPT」を20日から市の日常業務に試験導入すると発表した。正規職員全員と非常勤職員の一部、合計約4000人分のアカウントを用意し、文書作成などの業務に役立てる。全庁を対象とした試験導入は全国の自治体で初めて。

飯田)私は横須賀出身ですので、地元がこんなことをしているのかと驚きました。

佐々木)横須賀は先進的ですね。

考えを整理して、思考をクリアにするために便利なツール

飯田)「ChatGPT」について、テクノロジーを見ている人間としてはいかがでしょうか?

佐々木)私はかなり使っています。

飯田)使っていますか。

佐々木)何か聞くと、たまに嘘を言いますね。「ハルシネーション(幻覚)」と言われるものですが、インターネットのデータをもとにしているので、どうしても嘘が混ざりやすいのです。

新聞記事をつくるには適している

佐々木)ですから、百科事典的には使わない方がいいでしょう。自分が考えていることをChatGPTに話し、返事が返ってくると、考えを上手く整理することができます。

飯田)考えを整理できる。

佐々木)「過去の原稿をまとめてみて」と言うと、要点をまとめてくれます。いろいろなものを整理し、思考をクリアにしたい場合に便利なツールだと思います。

飯田)なるほど。

佐々木)文書をつくるのも非常に得意なので、「公開しているデータをもとに、1つの原稿にしてみて」と言うと、できてしまいます。新聞記事なども、もはやChatGPTでつくれるのではないでしょうか。

飯田)事実を放り込んであげると、「いつ、どこで」と書いてくれる。

ChatGPTを「使いこなす」か「使いこなさないか」でタイムパフォーマンスに差が出てくる時代

佐々木)これから仕事をする人にとっては、ChatGPTを使いこなすのが必須になってくるのではないかと思います。先日、記事を読んでいたら、会議の議事録を音声書き起こしツールを使って文字にし、それをChatGPTに要約してもらい、社内のイントラネットなどに流すような試みがありました。全部自動化してしまうのです。

飯田)なるほど。

佐々木)会議をしただけで、要点をまとめた文章がみんなのイントラネットに流れてくるような仕組みを使っている会社もあるくらいです。使いこなすか使いこなさないかで、タイムパフォーマンスに差が出てくる時代だと思います。

飯田)ノートテイカーの若手がいらなくなってしまうかも知れませんね。

佐々木)そうですね。

ChatGPTは確実に社会を変えていく ~どううまく付き合うか

飯田)大学でも影響があるのではないですか?

細谷)学生に聞くと、だいたい3~4割がChatGPTを日常的にレポートなどに使っていると言います。

飯田)既に使っているのですか。

細谷)1995年に「Windows95」ができましたが、当時はWindowsがいいか悪いかは関係なく、みんなが使い始めました。

飯田)そうでしたね。

細谷)それと似ていて、ChatGPTも社会を革命的に変えていくと思います。議事録の話がありましたが、数日前に私のシンクタンクでも、これからはインターンの議事録をなくして、議事録作成については大部分をコンピューターに任せるというような流れが起きています。

飯田)議事録の作成については。

細谷)いろいろな大学のガイドラインで「ChatGPTのレポート対策をどうするか」という話も出ています。いいか悪いかではなく、導入を前提に「どううまく付き合うか」ということです。まだ使いこなしていないと思うので、本気で使いこなしたときに、社会が一変するのだと思います。

今後、ChatGPTを「使いこなす」か「使いこなさないか」で出てくる「差」

March 19, 2023, India: In this photo illustration, an OPEN AI logo is displayed on a smartphone with a Chat GPT logo in the background. (c) Avishek Das/SOPA Images via ZUMA Press Wire 共同通信イメージズ

「ChatGPT相手に飲んで癒される」世界がやってくる

細谷)これから独身の人が増えていくではないですか。寂しいときに、家に帰ってから1時間くらい、ずっと「きょうはこういう辛いことがあった」と愚痴を言うとします。いままではスマホのSiriに声をかけても、充分にいい答えが返ってこないことがあったと思いますが、これからはChatGPTによって、心に刺さる言葉が返ってくると思うのです。そうすると、人間のChatGPTに対する心理的な依存も高まると思います。

飯田)なるほど。

細谷)辛くて愚痴を言う相手もいないとき、ChatGPTに聞いてもらうと、的確な答えが返ってくるかも知れないですよね。

飯田)ChatGPT相手に飲む、というようなことでしょうか?

細谷)そうです。友達は話を聞いてくれないし、余計なことばかり言って気分が悪くなるから、友達と飲むならChatGPTと飲んだ方が癒される、という時代になってくるかも知れませんね。

佐々木)男女間の問題でも、男性はすぐにソリューションを言いたがるけれど、女性はただ単に寄り添って欲しいだけの場合があります。「ChatGPTの方が寄り添ってくれるではないか」という話になるかも知れませんよね。

飯田)男の立場が。

佐々木)もう亭主はいらないと言われてしまうかも知れない。

飯田)「どう答えたらいいかな」というとき、ChatGPTが最適解を教えてくれるかも知れませんね。

国会の答弁は「ChatGPT」に

佐々木)国会でも、質問通告が遅れて官僚が深夜残業をするなどの問題があります。答弁はChatGPTにつくらせればいいのですよ。

飯田)1行で質問がきて、後追いの質問は受け付けませんというような議員がいますが、「ツイッターでこの人はこういうことを言っているから、こんな質問ではないか?」と出てくるかも知れませんね。

佐々木)過去の膨大な答弁データを放り込んでおけば、完璧な答弁書ができます。

飯田)この人が意図しているのはこういう質問で、それにはこう返せばいいというように。

佐々木)そうです。

ルーティンワークの多くは「ChatGPT」に任せる

飯田)さまざまな仕事がなくなってしまいそうですね。

細谷)日本はルーティンワークが多い国ですよね。形式的な作業が多いので、妙にフィットしてしまうのではないでしょうか。その手の作業は大部分をChatGPTに任せることになるかも知れません。

佐々木)やたらと清書したがるのは日本人だけですから、ChatGPTに任せればいいのではないかと思います。

これからはAIに「できること」と「できないこと」という新たな境界線が引かれる ~マッサージなど、AIにできない分野に価値が出てくる

飯田)リアルに生きる人間の価値はどうなるのでしょうか?

細谷)ChatGPTにできない領域は膨大にあります。いままでの仕事は人間同士の分業体制だったけれど、今後は人工知能(AI)と人間の分業になり、AIにできない分野に価値が出てくると思います。

飯田)AIにできない分野が。

細谷)マニュアルワーカー、例えばマッサージなどは、機械には限界があると思います。さまざまなマニュアルワーカーが逆に再評価される部分もあると思います。

飯田)マニュアルワーカーというのは、「手に職」という人たちですね。

細谷)これからはAIに「できること、できないこと」という新しい境界線が引かれると思います。

佐々木)必ずしも知的な仕事だけではなく、おもてなしの分野、ファストフードの接客などはAIやロボットでいいではないかと。でも、カフェにいる感じのいいスタッフや、大衆食堂のおばちゃんがいい、などという感覚は、やはり人間でなければダメだと思います。「人の心が見える部分かどうか」というところが、重要な仕事になっていくのではないでしょうか。

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