経済アナリストのジョセフ・クラフトが5月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の米経済の見通しについて解説した。
引き締めと利上げのバランスをどう取るか ~難しいかじ取りを求められるFRB
飯田)アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)、その金融政策決定会合である連邦公開市場委員会(FOMC)が5月2日から行われます。この先、どんなことがリスクとして考えられますか?
クラフト)中央銀行が悩んでいるのは、インフレが非常に根強く、粘着性があるということです。引き締めを続けなければならない一方で、今回のシリコンバレーバンク(SVB)やファースト・リパブリック・バンク(FRC)のように、引き上げ・利上げをし続けると破綻が起きやすくなります。
飯田)利上げを続けると。
クラフト)2つのバランスを取りながら、どう動いたらいいのか。あまり早く利上げを止めるとインフレが収まらない。逆に、利上げを進めると銀行破綻が続きます。いい塩梅を見つけなければならない。今回は利上げしますが、6月はどうするのか。市場が何らかのメッセージを求めているのがいまの状況です。
飯田)アメリカはいままで相当利上げしてきましたよね。
クラフト)してきました。
飯田)しかし、利上げだけだとインフレを収められずにつらい。ところが、財政の方はなかなか難しいですよね。
米財務長官が債務上限の引き上げを要求
クラフト)もう1つの大問題が、アメリカの債務上限問題です。
飯田)債務上限問題。
クラフト)イエレン米財務長官が昨日(5月1日)、「債務上限」を速やかに引き上げなければ、6月1日にも財政資金が枯渇すると警告しました。つまり、負債についての利金が払えなくなり、事実上の破綻になると。あり得ない事態なのですが、それが近いと思います。「だから早く債務上限を上げてください」と議会に言っているのです。
飯田)債務上限を上げて欲しいと。
クラフト)FRBは今回は上げるけれども、6月に関しては債務上限問題を抱え、金融・銀行の問題も抱え、「積極的に引き締めをやりたくない」というのが正直なところだと思います。しかし先日の消費支出を見ても、4%台と鈍化しているけれど、依然として2%目標よりもかなり高い。この狭間で悩んでいると思います。
5月中旬以降、米金融市場は地銀問題から債務上限問題に移る可能性が
飯田)債務上限問題ですが、アメリカの場合は追加の公債を出す水準が決まっていて、法律を通さないと上限を上げられない。毎年、揉めているような気がするのですが。
クラフト)毎年揉めても結局は上げるので、「大丈夫だ」という雰囲気があるのですが、今回は違います。共和党の下院は、過半数(ライン)をわずか4議席(超える形)で獲っています。ただ、債務上限の引き上げに対して、共和党内でも反対している議員が10~20人ぐらいいると言われています。
飯田)共和党内にも。
クラフト)国会はねじれていますから、下院で可決された共和党案は民主党が反対するので、上院・下院でねじれている。だから今回はなかなか決まらない、ギリギリまで収まらない可能性が高く、混乱すると思います。5月中旬以降、金融市場は地銀問題から債務上限問題に移っていく可能性があると思います。
飯田)そちらがメインのリスクシナリオ。
クラフト)5月中旬から月末までは、むしろ債務上限の方が市場の懸念材料になってくると思います。
飯田)市場の格言に「セル・イン・メイ(株は5月に売れ)」という言葉がありますよね。そういうめぐり合わせになってしまう。
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