新型コロナ患者を受け入れた病院は「補助金」で儲かったのか?
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東京都医師会副会長で「平成立石病院」理事長の猪口正孝氏が5月4日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。コロナ禍を振り返り、当時の医療体制の状況について語った。
病床確保料は5月8日以降、半額に ~9月末まで継続
飯田浩司アナウンサー)新型コロナの患者さんを受け入れるということで、病院は補助金を貰っていました。こういった経済面での支援も縮小されていくのでしょうか?
猪口)10月に完全移行するまでの間は経過措置がありますが、病床確保料などは5月8日以降、すべてのものが半額になります。そして10月以降はなくなっていく方向ですが、半額という額は医療機関からすると微妙なのですね。
飯田)微妙。
猪口)病床を確保せずに通常医療を行っている方が経済的にはいいかなという、それぐらいの数字なので、微妙なところだと思います。国からすれば、「早く通常医療に戻って欲しい」というメッセージだと思いますので、それに合わせながら、徐々に通常体制に戻っていくのではないでしょうか。
補助金で新型コロナ患者を受け入れた病院は儲かったのか?
飯田)ネット上などで流布されている一部の情報によれば、「補助金で病院はものすごく儲かった」という話もあります。一方で猪口さんなどにお話を伺うと、「病院のなかにもう1つの病院をつくるようなもので、人もものもたくさん必要になって経営は苦しい」とおっしゃっていました。補助金でどこまで補えたのでしょうか?
猪口)コロナを積極的に診ていた病院は、収支的には黒字になっているところが確かに多いと思います。一方で、コロナを診ることができない病院を守る……病院を守るというのは、経営を守るということではなく、病院に入院している患者さんたちを守るということです。そのようなところは、厳しい赤字経営の病院が多かったのではないかと思います。
飯田)なるほど。
猪口)もともと東京の医療は、全国一律の診療報酬で、二次救急レベルの急性期を扱っている。要するにコロナを診た病院は、もともと赤字が多かったのです。
飯田)もともと赤字の医療機関が多かった。
猪口)急性期は全国一律の診療報酬で、人手をたくさんかけますから、人件費等で苦しい病院が多かった。そこがたまたま黒字に転換しているだけです。今後、5類になって急性期病院に補助金がなくなると、また赤字に転落していきますので、コロナを診ている病院にも非常に厳しい時代がやってくると思います。
決死の覚悟で仕事をしていた医療従事者たち
飯田)いままで2類相当だったときに少し伺ったのですが、ベッドメイキングやシーツの取り替えなどの際、一般的な入院患者であれば、それを専門にしている清掃業の方などが入れたけれど、コロナ病棟だとそれも難しかったと聞きました。
猪口)特別な訓練を受けた清掃業者の方々に、高額の費用を払ってお願いするシーンも多かったです。
飯田)また、ご高齢の方だと介護も必要になってきます。しかし、介護専門の方に入ってもらうわけにもいかず、看護師の方々が対応しなければならない。
猪口)本当に大変でした。看護師さんたちは前から天使だと思っていましたが、本当に素晴らしい方たちだと思います。
飯田)その意味ではみんなギリギリのところで働いていた。金額だけで考えられるものではないかも知れませんね。
猪口)特に1~2年目、デルタ株の終わりを告げるワクチンが出てくるまでは、医療機関は決死の覚悟で動いていました。本当に辛かったですね。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます