ジャーナリストの須田慎一郎が5月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。5月19日に開幕するG7広島サミットについて解説した。
G7広島サミット、ウクライナに関する声明の原案が判明
5月19日に開幕するG7広島サミットで発表する予定の、ウクライナに関する声明の原案が明らかになった。ロシアによる侵略を、国連憲章を無視した侵略戦争だと強く非難し、ウクライナにできるだけ早く恒久的な平和をもたらすためのあらゆる努力を払うとしている。
飯田)5月19日に開幕予定のG7広島サミットですが、いろいろな声明が出るということです。ウクライナに関しては議題の中心の1つになりますよね。
須田)直接的にはウクライナですが、間接的にはロシアや中国、あるいは北朝鮮などの権威主義国家、専制主義国家に対するメッセージになります。G7としてどう向き合っていくのかという姿勢が、ウクライナ問題への対応から見えてくるのかなと思います。
飯田)大型連休中にも、岸田総理大臣はアフリカ4ヵ国を歴訪しましたが、それに向けていろいろな国々を巻き込んでいくことになりますか?
須田)サミットをめぐっては、「グローバルサウス」というキーワードが数多く取り上げられています。グローバルサウスとは何なのかと言うと、狭義では、南半球の途上国という意味です。現実問題として考えれば、今後の10年~20年というスパンのなかで、最も経済成長性の高い地域というイメージです。
グローバルサウスのリーダー国・インド ~G7広島サミットにグローバルサウスのキー・カントリーを招待
須田)そのリーダー国がインドです。今後、中露の専制主義陣営と、西側を中心とする民主主義陣営との間で綱引きが行われます。どちらの方がグローバルサウスを数多く巻き込めるのか、陣営に組み入れることができるのか、という大競争時代に突入していく。そのなかで、G7サミットにもグローバルサウスのキー・カントリーがいくつも招待されているという状況だと思います。
テーマやタイミングによって重心が変わる「グローバルサウス」の国 ~西側か中露に寄るか
飯田)インド、あるいはブラジルのルーラ大統領や、アフリカの人々も招待されています。この辺りがそうなるのでしょうか?
須田)太平洋島嶼国なども招待されていました。そのようなところに対して、経済的な、あるいは安全保障上の支援をどのような形で進めるのかというところだと思います。
飯田)インドを例に取ると、クアッドの一員です。アメリカ、オーストラリア、日本と一緒に動くところもありますが、ウクライナ問題に関しては、それほど旗幟鮮明にはしていません。やはり案件ごとに対応が異なってくるのですか?
須田)そうですね。一方でインドは、上海協力機構(SCO)のメンバーにも名前を連ねています。インド、あるいはグローバルサウス自体がどちらかの陣営に旗幟鮮明になるというより、テーマごと、あるいはタイミングごとに重心が変わってくるのだと思います。かつて第三世界という言葉がありましたが、第三世界的な行動パターンになってくるのではないかと思います。
経済発展するために資源開発に集中せざるを得ないグローバルサウスの国々 ~中露に寄りがち
飯田)その都度、「こっちに来てくれ」ときめ細かく対応しなければならない。
須田)今後、そのような国々は経済発展していかなければなりません。一定程度の人権は制約しておいて、資源開発の方に集中させるという方法を、どうしても取らざるを得ない。そうなると、西側の要望や価値観とは必ずしも一致するわけではありません。どちらかと言うと、中露の方に寄りがちなのです。
生活や経済の根幹を握ることになる通信ネットワーク ~中国側・西側どちらのネットワークを選ぶのか
飯田)そこでどのように巻き込んでいくかという話ですね。アメリカがやろうとすると、「民主主義でなければダメだ」という方向になるのでしょうか?
須田)鍵を握るのはネットだと思います。グローバルサウスの国々では、有線の通信網が存在しなかったので、いきなり携帯電話が発達しました。
飯田)そうでした。
須田)ですので、社会的・経済的なインフラとしてオンライン上のものは非常に重要になってきます。これが6Gになったとき、その部分が生活や経済の根幹を握ることになります。
通信が経済を制約する
須田)だからこそ、中国とアメリカ・西側仕様が分かれてきている。半導体に対してもさまざまな制裁を加え、技術供与をしないなど、完全にデカップリングの状況が進んでいるのは、グローバルサウスを巻き込むことを意識しているのも1つの理由です。
飯田)昔であれば、政治形態などがないと支援できないという話がありましたが、別のところで6Gを握ってしまえば、どちらかに付かざるを得なくなる。
須田)アメリカはよく水面下で、「進んだアメリカの通信ネットワークを選ぶのか、ローカルで遅れた技術の中国のネットワークを選ぶのか。どちらなのか」と言っています。根幹を握ることが非常に重要になってくるし、4Gの時代からその傾向を強めています。通信が経済を制約するということです。
DFFT……信頼性のある自由なデータ流通
飯田)いまG7サミットに向けて各大臣会合も行われていますが、データをどのように流通させるのか。G20大阪サミットでは、「DFFT(Data Free Flow with Trust)」……「信頼性のある自由なデータ流通」という概念が出されました。この辺りも議論されるのでしょうか?
須田)そこでルールづくりに入っていくのだと思います。人工知能(AI)の問題もそこに含まれてくるので、ありとあらゆる問題が入るのではないでしょうか。
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