製造業は改善基調な一方で先行き不安な「サービス業」 6月日銀短観

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経済アナリストのジョセフ・クラフトが7月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。7月3日に発表された6月の日銀短観について解説した。

製造業は改善基調な一方で先行き不安な「サービス業」 6月日銀短観

【経済】スーパー店頭に並ぶ飲料、調味料や缶詰など=2023年5月1日午前、東京都練馬区関町北の「アキダイ 関町本店」 写真提供:産経新聞社

日銀短観、大企業・製造業の景気判断が7四半期ぶりに改善

日銀が7月3日に発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数は、前回3月調査から4ポイント改善のプラス5と、7四半期ぶりに改善に転じた。また、大企業・非製造業はコロナ禍から経済回復が進み、前回から3ポイント改善してプラス23となった。

仕入れ価格判断指数が改善 ~輸入物価が改善し、製造業の見通しがプラスに

飯田)「いい」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数字ですので、ゼロが中間となります。プラスということは、よくなってきているのでしょうか?

クラフト)6月の短観は、まず脱コロナの影響があります。あとは販売価格指数と仕入れ価格判断指数があるのですが、これも改善されています。3月の販売価格が37で、今回は34と少し鈍化しているのですが、仕入れ価格の方は60から52と、かなり改善しています。

飯田)仕入れ価格判断指数が改善。

クラフト)輸入物価が改善しているということです。これが製造業の見通しについてプラスになっているのではないかと思います。

飯田)ひところは海外から入ってくる原材料などの価格高騰が苦しくさせていると言われていましたね。

クラフト)販売価格指数と仕入れ価格指数の差が大きくなればなるほど、企業収益が圧迫されます。これが縮小傾向になれば、企業収益は改善されます。

サービス業が人手不足で賃金が上昇し、アメリカ経済と同じ道を辿る日本 ~アメリカからヒントが得られるのでは

クラフト)そういう意味では見通しがいいのですが、不安材料もあります。非製造業の先行きを見ると今回、大企業では非製造業の判断指数が23なのですが、先行き、つまり9月は20と3ポイント減っています。

飯田)前回調査から3ポイント減ですか。

クラフト)中堅企業がマイナス5で、中小企業がマイナス4です。ですので、サービス業の先行き不安が少し表れています。なぜこれに注目するかと言うと、アメリカと同じ道筋を辿っているからです。度合いに違いはありますが、アメリカも最初は製造業が圧迫されて、それが改善に向かったとき、今度はサービス業が賃金の圧迫などで……。

飯田)人手不足ですね。

クラフト)いま、日本でも人手は不足しています。そのため、賃金の上昇でサービス業者の収益が圧迫され始めています。あるいは、人手不足で事業が成り立たないような不安が出てきています。これから日銀も金融政策の運営がかなり難しいと思うのですが、アメリカと似た道を辿っているということは、ある程度アメリカからヒントが得られるのではないかと思います。

アメリカのインフレ率に近付いている日本 ~インフレ率2%は難しい

飯田)アメリカの場合はインフレ率がもっと伸びましたよね。この辺りはいかがでしょうか?

クラフト)アメリカは最大9%までいきましたが、現在は4%です。実は日本はいま、ヘッドラインはアメリカよりもインフレ率が高いのです。

飯田)アメリカより。

クラフト)皆さん、3.5%として見ているように思いますが、あれは1%以上の政府の補助金がありますので。

飯田)ガソリンなどのエネルギー補助金ですね。

クラフト)そうです。実際は4%以上なのです。

飯田)なるほど。

クラフト)いまやアメリカのインフレに近いくらいです。コアインフレと言って、食品とエネルギーを除いたインフレはまだアメリカよりも若干下ですが、ほぼアメリカのインフレ率に近付いています。日本もデフレという環境ではないということです。

飯田)日本も。

クラフト)7月も3500品目くらいが値上がりします。年内はインフレ圧力が続いて、植田総裁が予想している2%割れのインフレ率というのは、個人的には見通せません。

製造業は改善基調 ~一方、人手不足から先行き不安なサービス業

飯田)アメリカは物価上昇の要因として賃金が上がり、コストが高くなった分がすぐに転嫁されるなど、イタチごっこになったようなところがありましたよね。日本もそうなる可能性はあるのでしょうか?

クラフト)日本も最近言われているのが、企業が価格転嫁していることです。確かにアメリカほどではないかも知れませんが、少しずつ転嫁できるような雰囲気になっていますので、企業から見ると見通しは改善されてきています。サービス業については、人手不足などの影響で不安材料が多いという状況が今回の短観に表れているのではないでしょうか。製造業の先行きは9月も改善基調なのです。

飯田)製造業は。

クラフト)製造業は比較的明るい見通しで、悪い時期からは脱出しています。逆にサービス業は先行き不安である。これが今回の短観のメッセージではないでしょうか。

飯田)製造業の先行きがよいというのは、内需が少しずつ伸びてきているのでしょうか?

クラフト)内需もありますし、ポストコロナで溜まっていた消費需要がいま出てきているのでしょう。それと仕入れ価格の判断指数が改善しているので、相対的に改善されているのだと思います。

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