外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が7月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。7月13日にベルギーで発表された日本とEUの共同声明について解説した。
日本とEUが共同声明、日本産食品の輸入規制を8月にも撤廃へ
岸田総理大臣は7月13日、訪問先のベルギーの首都ブリュッセルで欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォン・デア・ライエン欧州委員長と会談した。日本とEUは共同声明を発表し、EU側は東京電力福島第一原発事故を受けた日本産食品の輸入規制の撤廃を表明。規制は早ければ8月にも撤廃される見通し。また外交・安全保障分野では、新たに外相クラスが定期協議する戦略対話の創設などを盛り込んだ。
飯田)ようやく日本産食品の輸入規制が撤廃されそうです。
宮家)「よくやったな」と思いますが、10年以上前の話をこれだけ引きずるということは、もはや科学の話ではないということです。この問題は残念ながら政治問題化していた。いまも政治問題化しようとしている国が一部だけありますが。
飯田)処理水の放出に関して。
政治問題化された1つの要因はEU内の対中政策についての足並みの乱れ ~多くの国が対中政策に厳しい一方、中国寄りの発言をするフランスなども
宮家)なぜ政治問題なのかと言うと、なかには違う国もあるかも知れませんが、EU全部が日本を非難しているわけではないのです。先日も中国がASEANで……。
飯田)処理水を「汚染水」と表現した。
宮家)そう呼んでいるらしいですね。そのように中国は政治的な目的で動いている。すべてではないけれど、この問題の本質の一部は、EU内の対中政策についての足並みの乱れ、もしくはいろいろな意見があるということです。
飯田)中国に対して。
宮家)7月14日の新聞を読んでいたら、ドイツが対中政策について、新たな方針をまとめたものを60ページもつくったらしいです。経済関係は維持するけれど、ドイツとしては中国との関係を「考え直さなければいけない」と言っているわけです。一方では、フランスのように「インド太平洋は北大西洋ではない」と言う国もある。
EUが日本産食品の輸入規制を8月にも撤廃することで、中国が孤立化する方向へ
宮家)Eu内で微妙な温度差があり、それが政治問題化してしまった1つの理由だと思います。そういう意味では、どこの国とは言えないけれど、日本の近くの国が変なことを言っていますが、そろそろ孤立していくでしょう。韓国も今は、そんなことは言っていません。
飯田)そうですね。野党は言っているけれども、尹政権は。
宮家)韓国政府は前向きに動いていますよね。そういう意味では「ようやくきたな、よかったな」と思うのですが、同時に、この政治問題を引き続き取り上げ続ける国はあるだろうという嫌な予感はしています。
ウクライナに前のめりでコミットする日本 ~そこからEUやNATOの日本との付き合い方が変化 ~そこにIAEAの報告書も重なり、今回の結論に
飯田)今回、福島第一原発のトリチウム水に関して、国際原子力機関(IAEA)が入って調査し、報告書を出した。また、事務局長も来日して説明が行われました。このように国際機関も巻き込んだことは、EUの意思決定に影響しますか?
宮家)もちろん影響すると思います。それ以上に影響しているのは、ウクライナ戦争の問題です。通常であれば、日本がこれほど前のめりにはならないですよね。
飯田)通常であれば。
宮家)東アジアの例の問題、あの国の問題があるから、ここまでコミットしているわけです。EUあるいはNATOからすると、これまでの日本との付き合い方が変わってくるわけです。
飯田)これまでの付き合い方とは。
宮家)日本の政治問題でのNATOとの連携が強まったことと、IAEAのお墨付きもあった。また、福島原発の事故から10年以上が経ち、「潮時だ」と。いろいろなことが総合的に重なって、今回の決断に至ったのだと思います。
この結果は日本外交の進展の第一歩
宮家)これは日本外交の進展の一歩だと思います。
飯田)NATOやヨーロッパからしても、日本がウクライナの話にこれだけコミットしてくるのだから、「我々もアジアに関して、しっかりコミットしなければ」となる。
宮家)NATO首脳会議の前にG7がありましたよね。
飯田)ありましたね。
宮家)あそこに日本の首相が並んでいるわけですよ。こんな光景はいままで考えもつかなかった。日本も、やるべきことをきちんとやっているのだという気がします。
飯田)今年(2023年)は日本が議長国なこともあり、「ウクライナをG7が支援する」という岸田さんの説明から始まった。
宮家)バイデンさんも原稿にないけれど発言の冒頭で、「岸田さんは立ち上がった。日本は立ち上がった」と言っているわけです。それ自体大きな変化だと思います。
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