外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が7月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナのNATO加盟について解説した。
岸田総理がNATO首脳会議に出席 ~ウクライナの加盟招待は行われず
飯田)岸田総理はリトアニアで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席しました。
宮家)争点の1つは、スウェーデンの加盟です。当然ですが、トルコがついにOKを出した。もう1つは、ゼレンスキーさんは来る前に、NATO加盟についてのプロセス、もしくは道順等々が明確になっていないとして、非常に強い不満を表明していました。「今回も期待する結果は得られなかった」と悲観的な書きぶりをする報道もあります。でもそもそも今の時点では、加盟なんて無理ですよ。
飯田)無理。
宮家)戦争しているのですからね。戦争している国を加盟させたらNATO化してしまうわけだから、NATOとロシアが戦わなければいけなくなります。
飯田)集団的自衛権の行使ですね。
宮家)それはあり得ない話です。具体的な見通しをいつごろまでに出してもらえるのか、どういう条件があれば加盟できるのか。「もう少し詳しく教えて欲しい」と言いたい気持ちがゼレンスキーさんにはあるのだろうし、それは正当な主張でしょう。
「慎重に対応するのは当然」だということを承知の上であえて発言したゼレンスキー大統領 ~本当に欲しいのは「武器と弾薬」
宮家)ウクライナ戦争の本質は、核兵器を持つロシアが相手だということです。いろいろな議論がありますが、NATO側が慎重に対応するのは当然の話です。ゼレンスキーさんは、それをわかって行動しているのだと思います。
飯田)承知の上で。
宮家)わかっているし、本当に欲しいのは他のことかも知れない。加盟交渉の開始条件はないけれど、それに匹敵するような支援が欲しいということです。「今後も支援する」というリップサービスは、アメリカも含めてNATO側は表明しています。もう1つ欲しいのは武器ですよね。
飯田)武器。
宮家)いつも言うことですけれど、戦争は戦場で決まるのです。どんなに「支援する」と言われても、「弾」がなければ始まりません。
飯田)武器と弾薬がなければ。
宮家)引き続き武器が欲しいということを、水面下では議論しているのだと思います。
攻める側は守る側の3倍の兵力が必要 ~反転攻勢を成功させるためにもさらなる武器が欲しいウクライナ
宮家)実際にNATO軍が入っていくわけにはいかないので、支援は武器だけになるわけですが、「反転攻勢はどうなったのか。全然動かないではないか」と言う人もいるかも知れない。
飯田)ウクライナの反転攻勢が。
宮家)昔、先輩に言われたことがあるのですが、陸上戦闘は特にそうですけれど、守る側と攻める側があった場合、攻める側は基本的に守る側の3倍の兵力が必要なのだそうです。
飯田)3倍。
宮家)1対1ではダメなのです。2倍でもダメで、通常は3倍だと言われている。数十年も前の話ですから、少し状況は変わっていると思いますが、変わっていない部分があるとすれば、いまウクライナ軍が3倍の兵力を持っているとは思えませんよね。
飯田)ロシア側の3倍。
宮家)ロシアは攻撃が下手かも知れませんが、地雷を埋め、塹壕を掘って防御することは得意なのです。つまり、ウクライナの反転攻勢はそれほど簡単ではありません。そこはウクライナもよく理解した上で、「引き続き武器と弾薬をください」と言っているのだと思います。
飯田)実際に首脳の発言や文書を見ても、長射程ミサイル「ATACMS」やF16戦闘機などを出すのだと……。
宮家)クラスター爆弾もそうですね。
飯田)クラスター爆弾は人道的にどうかという話もありましたが、アメリカは決断しました。
宮家)ロシア側も使っているのでしょう?
飯田)そうでしょうね。
宮家)「戦場で結果を出さなければいけない」という苦渋の選択だと思いますけれど。
G7がウクライナ支援で共同宣言 ~存在感を増す議長国・日本
飯田)地上戦が膠着する形になると、長引くことを覚悟しなければなりませんか?
宮家)そうですね。今回の声明全体から見えることは、ウクライナのNATO加盟は戦争が終わらなければできない。でも戦争は終わりそうもない。「では、どこまで続けるか我慢比べするしかない」という方向に動いているのだと思います。
飯田)NATOもそうですけれど、G7がウクライナ支援の声明を出し、あとは2国間で行う方針になりました。ある意味でG7が表に立ち、支援をアピールしている。
宮家)これだけG7が明確な姿勢を示したのは初めてだと思います。すごいことです。
飯田)その議長国は日本である。
宮家)そういうことです。
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