ジャーナリストの佐々木俊尚が8月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「光復節」の式典で行われた韓国・尹錫悦大統領の演説について解説した。
韓国・尹大統領、「光復節」で日韓安保協力を強調
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、朝鮮半島が日本の植民地支配から解放されたことを記念する「光復節」の式典で演説した。日本は普遍的価値を共有するパートナーだとして、安全保障や経済分野で協力を強化していく考えを強調した。
飯田)北朝鮮の韓国への侵攻を抑止するための日本の役割について、(朝鮮戦争の休戦後に)国連軍が日本に後方司令部を置き、在日米軍基地を使用できることが「最大の抑止要因だ」と強調しました。
佐々木)毎日新聞は尹大統領の日本批判をしない演説について、「日本への批判がまったくない異例の演説となった」と悔しまぎれに書いていたのが面白かったですね。
飯田)「異例の演説」と。日本の総理大臣の演説を批判するときのようなトーンですね。
対日感情がよくなっている韓国世論 ~「日韓関係を改善すべき」と思う人が過半数
佐々木)安全保障の観点から言うと、日米と韓国が仲よくするのは当然の流れです。しかし、いままでは国内世論が許さないところがあった。
飯田)韓国の国内世論ですね。
佐々木)「日本、何者だ」というような感じで猛批判していたわけです。今回も左派系メディアや「共に民主党」など、左派系の野党は批判しているのだけれど、世論はそれほど騒いでいる様子がないという話があります。
飯田)韓国世論は。
佐々木)その背景として、韓国で世論調査を行うと、日本に対するイメージがここ数年急上昇しているのです。日本に悪い印象を持つ人の割合が、去年(2022年)は52.8%でした。過半数なのだけれど、その前の年(2021年)と比べて約10ポイント減っているのです。徐々に減っている。
飯田)そうなのですね。
佐々木)対日関係についても、「日本との関係を改善すべきか」という質問に、「そう思う」という回答が約81%。過半数の人が日韓関係をよくしようと思っているのです。
その背景にある「韓国が1人当たりのGDPや平均賃金で日本を抜いた」という余裕
佐々木)背景にはもちろん、中国や北朝鮮の脅威があるのですが、韓国が1人当たりのGDPや平均賃金で日本を抜いていますよね。「それで精神的に余裕ができたのではないか」という指摘があるのですよ。
飯田)なるほど。
佐々木)日本も終戦後にアメリカに占領されて、アメリカに対するコンプレックスが酷かったのだけれど、そのあと高度経済成長があり、80年代に入ると『「NO」と言える日本』という本も出てきた。
飯田)『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という本とか。
佐々木)そのなかで徐々にアメリカに対するコンプレックスがなくなっていきました。それと同じことが韓国で起きているのではないかと思うのです。
飯田)1人当たりのGDPや平均賃金で日本を抜いたことで。
佐々木)日本人としては、韓国が日米に寄ってきてくれるのは嬉しいけれど、その根拠が「日本を抜いたから」というのはなかなか。
飯田)複雑な気持ちがある。
佐々木)喜んでいいのか悲しんでいいのか、わからないところがありますね。
揺れやすい韓国世論 ~今後、政権が左派系に代われば元に戻る可能性も
飯田)8月18日には日米韓首脳会談が行われます。このタイミングの演説で尹大統領がここまで踏み込むというのは、何か一連の流れを感じますね。
佐々木)そうは言っても、韓国世論は感情的に揺れやすいところがあります。今後、大統領が変わって左派系の政権になることがあれば、また「コロッ」と入れ替わるのではないかという心配もあります。
飯田)そうですね。
佐々木)そう思うと、今回の尹大統領の演説を「よかった」と手放しで喜べないところもある。一抹の不安はやはり残りますね。
日米韓で「クアッド」のような枠組みをつくる方法もある ~固定すれば韓国の世論が揺れても影響されない
飯田)アメリカは仕組みとして、日米韓の首脳会談を定例化する。あるいは首脳や大臣級だけでなく、国家安全保障会議(NSC)など、戦略を司る高官たちの会議も定例化しようと言っているようです。
佐々木)「クアッド」のような枠組みをつくるという方法は確かにあるでしょうね。それなら韓国世論が揺れても、そこは固定しているから「NO」と言えなくなるのではないでしょうか。アメリカのリーダーシップに期待したいところです。
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