日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が8月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。新体制を決めた安倍派について解説した。
安倍派が「常任幹事会」を新設
自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)は8月17日に党本部で総会を開き、新たな意思決定機関として「常任幹事会」を設け、会長代理を務める塩谷立・元文部科学大臣が取りまとめ役となる新体制を決めた。派閥トップの会長は引き続き空席とし、当面は集団指導体制とする。
経営に君臨してきたオーナーが亡くなり、後継者が決まっていない企業のよう ~続けられるかどうかの危険リスクを抱えている
飯田)安倍派は100人の大所帯です。安倍さんが亡くなったあと、会長は空席のままでした。
秋田)安倍派で起きていることを企業に例えるなら、君臨してきたオーナー企業のオーナーが亡くなってしまい、その下にはどんぐりの背比べの重役しかいないので、後継者が決まっていない。そのような状況に近いですよね。
飯田)なるほど。
秋田)そうなると、だいたいは内紛が起きるか、派閥に分かれて派閥争いになる。それを乗り切った企業は2代目、3代目という形で続いていくわけですが、内紛の結果、バラバラになってしまうケースも少なくありません。
飯田)続けられなくなってしまうケースもある。
秋田)安倍派の場合は、そういう危機リスクをいま抱えているのだと思います。
「常任幹事会」を設け、塩谷立氏がまとめ役の「座長」に就任 ~全会一致で了承
飯田)今回、ここに至るまでに、会長代理は塩谷立さん・下村博文さんの2人の存在があり、また既に議員は引退されていますが、森喜朗さんも発言力があります。森さんは、「安倍さんの一周忌までには会長を決めなければならない」と発言していました。
秋田)新聞にも出ていますけれど、今回は森元首相の意向を受けた形で事実上、決着した。座長には塩谷さんが就任し、その下に常任幹事会を設けています。
飯田)常任幹事会のメンバーには、松野官房長官、萩生田政調会長、西村経産相、高木国対委員長、世耕参院幹事長ら「5人衆」も選ばれる見通しです。
外された下村博文氏が火種にならないか
秋田)そうなると下村博文会長代理は外されてしまいます。周囲に不満を漏らしているという報道もあり、火種にならないか気になります。
飯田)この体制で落ち着くかと言うと、やはり不満が残る人もいる。
会合や食事会を絶えず開いて大派閥の結束を維持していた「旧小渕派」
秋田)私はかつて、政治部の記者として現場を取材していた時期があります。当時は橋本政権、小渕政権、森政権、小泉政権の時代だったのです。
飯田)記者時代に。
秋田)私が自民党を担当していたとき、まさに安倍派と同じような最大派閥がありました。小渕派と呼ばれていましたが、田中角栄氏のつくった経世会の系譜を踏む最大派閥でした。
飯田)小渕派。
秋田)当時、「大派閥の結束維持はこんなに大変なのか」と思うくらい、「結束」と言っては会合や食事会を開いて、絶えずケアしていましたね。
飯田)経世会というと、「一致団結・箱弁当」というようなイメージです。
安倍派同様、小渕氏の急逝で集団指導体制が組まれたが分裂した「旧小渕派」 ~ここを安倍派は乗り越えられるか
秋田)ところが、残念なことに小渕さんが急逝されて、いなくなってしまった。今回の安倍さんと同じように、トップが急に不在になりました。
飯田)そうでしたね。
秋田)そのあとどうなったかと言うと、内部で野中元幹事長を中心とするグループと、それ以外の青木元官房長官のグループなどに分かれた。
飯田)参議院のドンと言われた青木幹雄さん。
秋田)それまでは本当に緊密な関係でしたが、そこにヒビが入り、求心力が落ちていってしまった。かつての安倍派の前身であるグループでも、似たようなことがありましたね。三塚派から、そういうパターンなのです。それを乗り切れるかどうかですね。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。