数量政策学者の高橋洋一が8月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。アメリカで破産申請した中国の不動産大手・恒大集団について解説した。
恒大集団の破産申請
中国の不動産大手・恒大集団は8月17日、ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条の適用を申請したが、恒大集団は「破産申請ではない」と強調する声明を発表。裁判所への申請は「海外の債務再編を正常に推進するためのものだ」としている。
飯田)先週末にこのニュースが入ってきたときは、ここからさまざまな不景気が起こるのではないかとも言われましたが、いかがでしょうか?
高橋)もっと不透明になったという感じだと思います。
なぜアメリカの裁判所に破産を申請したのか
高橋)これはとても闇が深いのです。まず「どうして中国ではないのか?」ということです。
飯田)どうして中国の裁判所ではないのか。
高橋)なぜアメリカなのか。これは「連邦破産法15条(チャプター15)」が関係しているでしょうね。アメリカでは外国企業も申請できるのですが、基本的にはアメリカ国内の資産保全なのです。だから、少し変な申請だなと思いました。もともと恒大集団は中国企業ですが、形はケイマン島法人で香港に上場していますので、実はバランスシートが出ているのです。
2021年12月で10兆円、2022年には12兆円の債務超過 ~債務超過なのに「破産申請ではない」と言うのは理解不能
高橋)それを見ると、2021年12月には、資産が42兆円で負債が52兆円ですから、10兆円の債務超過になっています。
飯田)10兆円の債務超過。
高橋)2022年12月に発表されたものだと、資産が36兆円、負債が48兆円です。日本のマスコミは負債だけしか書きませんが、両方書かないとわかりません。両方書いて、マイナス12兆円の債務超過なのです。
飯田)2兆円増えてしまいましたね。
高橋)公表数字で債務超過になるなら、通常は債権者が裁判所に申し立てをして破産申請するのです。でも今回、債務超過なのに「破産申請ではない」と言っているでしょう。理解不能ですね。
飯田)その時点で、ですか?
債権者による資産の差し押さえなどを回避し、再建するために破産手続きを申請 ~破産法が機能していない
高橋)それはそうでしょう。債務超過にどういう意味があるかと言うと、資産を全部清算して会社を解体しても、借金が返ってこないという意味です。そんなことをしていると、早いもの勝ちだから債権者がどんどん取っていってしまい、会社は潰れます。
飯田)潰れる。
高橋)それを止めて、どのように再建するかということで破産法があるのですが、破産法がそもそも機能していないのです。
飯田)それでよく資金繰りが持ちますよね。
高橋)国営企業ですからね。国営の銀行があるから持ちます。
いつかは誰かが負担しなければならない ~いつ潰れてもおかしくない
高橋)でも、いつかは誰かが負担しなくてはならない。それは間違いありません。「いつ潰れてもおかしくない」という状況ですから、まず不動産取り引きなどはできないですね。
飯田)取り引きはできない。
高橋)だから中国の不動産関連の売り上げが大きく減っています。下手に取り引きできないですよ。売り掛け金にしても全部なくなってしまうし、そうなると現金でしか商売できなくなりますから、ビジネスを収縮させます。
飯田)現金でしか取り引きできないとなると。
高橋)中国の国内総生産(GDP)の3割くらいは不動産関連ですから、激しく落ちます。
飯田)資産価値が落ちるだけでも、資産の目減りで信用できなくなってしまうと……。
高橋)似たような不動産会社がたくさんあるではないですか。不動産関係で資金調達し、不動産売買しているのは、日本で言う地方の第3セクターのような関連子会社として、地方融資平台があります。
飯田)地方融資平台。
高橋)債務額は1300兆円以上なのですが、わからないというレベルです。国際通貨基金(IMF)の4条協議でも全然わからなくて、お手上げ状態です。
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