加盟国が拡大するBRICSの動きは大事だが「政治的に一枚岩になる」ことは考えられない 6カ国新規参加

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2024年から6ヵ国が加盟するBRICSについて解説した。

加盟国が拡大するBRICSの動きは大事だが「政治的に一枚岩になる」ことは考えられない 6カ国新規参加

22.08.2023 Brazilian President Luiz Inacio Lula da Silva, Chinese President Xi Jinping, South African President Cyril Ramaphosa, Indian Prime Minister Narendra Modi and Russian Foreign Minister Sergey Lavrov attend a photographing ceremony at the15th BRICS Summit in Johannesburg, South Africa. Russian Foreign Ministry SPUTNIK/時事通信フォト

BRICSに2024年から6ヵ国が加盟へ

ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5ヵ国で構成されるBRICSは8月24日、2024年から新たに6ヵ国を加えることを決めた。新たに加盟するのは、イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、UAE、エチオピアの6ヵ国。2024年1月に正式なメンバーになる見通しで、新規加盟は2010年の南アフリカ以来となる。

飯田)もともとは頭文字を取って「BRICs」とされ、「S」は小文字でした。

宮家)「新興5ヵ国で構成される」と言われていますが、ロシアも中国もインドも古い帝国で、新興国とは違うし、ブラジルもあの地域では大きな国です。南アフリカもそうなので、新興国という表現はよくわかりません。

飯田)そうですね。

宮家)イランもエジプトも大帝国ですし。

冷戦後に欧米の力が衰え、多極化の方向に動いてきた ~その動きを見越してBRICSに集まってきた

宮家)要するに欧米的な経済支配、もしくは影響力が大きかった冷戦時代以降、相対的に欧米、特にアメリカの力が衰えてきた。ヨーロッパが先に衰えましたけれど。

飯田)ここへ来てアメリカの力も落ちてきました。

宮家)そうすると、国際政治的には多極化の方向に動きます。それを見越してこれらの国々が集まってきたこと自体は、当然の流れだと思います。

BRICSに加盟する国々が政治的に一枚岩になることは考えられない

宮家)他方、彼らは強くなったのかと言えば、そうではありません。「BRICs」ができた当初、「これからは我々先進国も危ないかも知れない」と思ったことはあるかも知れませんが、例えばロシアはいま、ご覧の通りですよね。インドはこれから伸びると思いますが、独立独歩の国だから、残りの4ヵ国と連携して何かを行うことは考えられない。

飯田)インドは。

宮家)中国経済だって今後どうなるかわかりません。だから、BRICsがそれほど強くなったわけではないのです。そのなかに新たにイラン、サウジアラビア、エジプト等を入れても、政治的に一枚岩になるとは、とても思えません。イランとサウジアラビアが一緒になるわけがありませんからね。

飯田)確かに。

宮家)では、経済的に何かできるのか。拡大BRICsが集まることはいいのですが、それがどれだけのマーケットになるのか。この人たちは自由貿易などしないのですからね。規制しているところばかりではないですか。

飯田)中国のように、いきなり海産物を禁輸したり。

実態とイメージを混同してはいけない

宮家)集まればいいわけではないのです。弱者同盟という言葉がありますが、BRICsが弱者同盟かどうかはわからないけれど、必ずしも「寄らば大樹」ではないということは考えなければいけない。その意味でも、「BRICsにも新しい時代が来たな」という気はします。

飯田)最近はグローバルサウスという言葉が使われますが。

宮家)グローバルサウスとは一体何なのでしょう。グローバルサウスの実態はこれなのでしょうか? 実際にはバラバラではないですか。「グローバルサウス」という団体ができて、条約をつくり、一致団結して何かをやる、ということでは全くないのですよ。実態とイメージを混同してはいけません。冷静に見なければいけない。もちろん、大事な動きではありますがね。

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