外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2024年から6ヵ国が加盟するBRICSについて解説した。
BRICSに2024年から6ヵ国が加盟へ
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5ヵ国で構成されるBRICSは8月24日、2024年から新たに6ヵ国を加えることを決めた。新たに加盟するのは、イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、UAE、エチオピアの6ヵ国。2024年1月に正式なメンバーになる見通しで、新規加盟は2010年の南アフリカ以来となる。
飯田)もともとは頭文字を取って「BRICs」とされ、「S」は小文字でした。
宮家)「新興5ヵ国で構成される」と言われていますが、ロシアも中国もインドも古い帝国で、新興国とは違うし、ブラジルもあの地域では大きな国です。南アフリカもそうなので、新興国という表現はよくわかりません。
飯田)そうですね。
宮家)イランもエジプトも大帝国ですし。
冷戦後に欧米の力が衰え、多極化の方向に動いてきた ~その動きを見越してBRICSに集まってきた
宮家)要するに欧米的な経済支配、もしくは影響力が大きかった冷戦時代以降、相対的に欧米、特にアメリカの力が衰えてきた。ヨーロッパが先に衰えましたけれど。
飯田)ここへ来てアメリカの力も落ちてきました。
宮家)そうすると、国際政治的には多極化の方向に動きます。それを見越してこれらの国々が集まってきたこと自体は、当然の流れだと思います。
BRICSに加盟する国々が政治的に一枚岩になることは考えられない
宮家)他方、彼らは強くなったのかと言えば、そうではありません。「BRICs」ができた当初、「これからは我々先進国も危ないかも知れない」と思ったことはあるかも知れませんが、例えばロシアはいま、ご覧の通りですよね。インドはこれから伸びると思いますが、独立独歩の国だから、残りの4ヵ国と連携して何かを行うことは考えられない。
飯田)インドは。
宮家)中国経済だって今後どうなるかわかりません。だから、BRICsがそれほど強くなったわけではないのです。そのなかに新たにイラン、サウジアラビア、エジプト等を入れても、政治的に一枚岩になるとは、とても思えません。イランとサウジアラビアが一緒になるわけがありませんからね。
飯田)確かに。
宮家)では、経済的に何かできるのか。拡大BRICsが集まることはいいのですが、それがどれだけのマーケットになるのか。この人たちは自由貿易などしないのですからね。規制しているところばかりではないですか。
飯田)中国のように、いきなり海産物を禁輸したり。
実態とイメージを混同してはいけない
宮家)集まればいいわけではないのです。弱者同盟という言葉がありますが、BRICsが弱者同盟かどうかはわからないけれど、必ずしも「寄らば大樹」ではないということは考えなければいけない。その意味でも、「BRICsにも新しい時代が来たな」という気はします。
飯田)最近はグローバルサウスという言葉が使われますが。
宮家)グローバルサウスとは一体何なのでしょう。グローバルサウスの実態はこれなのでしょうか? 実際にはバラバラではないですか。「グローバルサウス」という団体ができて、条約をつくり、一致団結して何かをやる、ということでは全くないのですよ。実態とイメージを混同してはいけません。冷静に見なければいけない。もちろん、大事な動きではありますがね。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。